【メディア企業徹底考察 #39】映画御三家の収益構造を解説、松竹はなぜひとり負けしたのか?

国内の映画御三家と呼ばれる東宝株式会社、東映株式会社、松竹株式会社。コロナ禍が松竹の弱点を炙り出しました。 東宝は今期(2022年2月期・3月期)の営業利益を380億円、東映は122億円の営業利益を見込んでいますが、松竹だけが54億円の営業損失を予想しています。東…

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国内の映画御三家と呼ばれる東宝株式会社東映株式会社松竹株式会社。コロナ禍が松竹の弱点を炙り出しました。

東宝は今期(2022年2月期・3月期)の営業利益を380億円、東映は122億円の営業利益を見込んでいますが、松竹だけが54億円の営業損失を予想しています。東宝・東映は前期(2021年2月期・3月期)も営業利益を出していましたが、松竹だけが54億8,300億円の営業損失となりました。

新型コロナウイルス感染拡大が映画館への客入りを制限したのは、3社ともに同じです。なぜ、松竹だけが損失を出しているのでしょうか。この記事は3社の収益構造を解説し、松竹が業績不振に陥った理由を解説する内容です。

※東宝・松竹は2月決算、東映は3月決算です。

「メディア企業徹底考察」シリーズのバックナンバーはこちら

■東宝業績推移(単位:百万円)

決算短信より筆者作成
※営業利益の目盛は右軸

■東映業績推移(単位:百万円)

決算短信より筆者作成
※営業利益の目盛は右軸

■松竹業績推移(単位:百万円)

決算短信より筆者作成
※営業利益の目盛は右軸

御三家傘下の映画館でディズニー映画が上映されなくなった理由

収益構造の前に、各社の特徴と近年の動きについて説明します。

東宝はシネマコンプレックス「TOHOシネマズ(劇場数70、スクリーン数660)」、東映は「ティ・ジョイ(劇場数22、スクリーン数209)」、松竹は「MOVIX(劇場数28、スクリーン数269)」を運営しています。東宝は2003年3月にヴァージン・シネマズ・ジャパン(買収当時8劇場、81スクリーン)を100億円で買収し、イオンシネマに次ぐ国内第2位のスクリーン数を持つ会社へと成長しました。東宝の売上高が他社を大きく引き離している主要因は、劇場・スクリーン数の違いによるものです。

各社が配給した近年の主なヒット作は東宝『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』、東映は東宝との共同配給となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』、松竹『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』です。

東宝といえば、『千と千尋の神隠し』、『君の名は。』など、歴代興行収入トップに名を連ねるヒット作を連発していることでよく知られています。東映は家族向けのキラーコンテンツ「東映まんがまつり」を持っています。松竹は『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』などの根強いファンを持つシリーズ映画がありましたが、近年はアニメーションや舞台作品を映画化した作品に力を入れています。

配給側は利益率を高めるため、直営またはグループ傘下の映画館での上映を望みます。しかし、映画館はヒット作を上映して客数を伸ばす(売上高を大きくする)ことを第一に考えます。特にスクリーン数の多いシネマコンプレックスは家賃や人件費などの固定費が重くのしかかるため、他社の作品でもヒットすれば積極的に上映します。事実、松竹は2021年2月期の業績において、 東宝『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』 によって劇場が高稼働したと発表しています。配給会社との契約にもよりますが、チケット代の半分が映画館の収入になると言われています。


《不破聡》

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