【メディア企業徹底考察 #54】インドのユニコーン企業をグループ化したグノシーの狙いとは?

ニュース配信アプリの株式会社Gunosy(グノシー)が、2022年4月14日に2022年5月期通期の業績予想を上方修正しました。営業利益ナシとしていた予想から一転して2億円の黒字を見込んでいます。更にインドのユニコーン企業として知られるガレージプレナーズインターネット…

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ニュース配信アプリの株式会社Gunosy(グノシー)が、2022年4月14日に2022年5月期通期の業績予想を上方修正しました。営業利益ナシとしていた予想から一転して2億円の黒字を見込んでいます。更にインドのユニコーン企業として知られるガレージプレナーズインターネットを2022年5月期中に持分法適用会社化するとの計画も発表。株価は急騰して4月15日にストップ高となりました。

グノシーは2019年5月期に売上高・営業利益ともに過去最高を更新したものの、3期連続の減収減益です。営業利益率は2019年5月期の15.3%から2.3%まで13.0ポイントも減少する見込みです。上方修正したとはいえ、業績好調とはとても言える状況ではありません。

■グノシー業績推移(単位:百万円)

決算短信より筆者作成
※営業利益の目盛は右軸

グノシーはニュースアプリとゲームが主力事業ですが、そこからの大改革を進めています。ガレージプレナーズへの出資は本業への相乗効果を狙ったというよりも投資としての性格が強く、事業展開の転換点を迎えたことを示しています。

auサービスTodayの運営を代行するものの利益が圧迫

ガレージプレナーズへの追加出資は久しぶりの好材料でした。グノシーの株価は2018年12月17日に3,550円の高値を付けた後に低迷。1,000円以下で取引される日が続いていました。2022年4月の発表で株価が急騰しているのがわかります。4月18日には1,567円の高値をつけました。グノシーの公募価格は1,520円。ようやくその水準を回復したことになります。

市場の期待は高まりました。

Kabutanより

しかし、 ガレージプレナーズを持分法適用会社化することが、なぜそれほど強いインパクトを与えるのでしょうか?

それはグノシーの業績が低迷して長らく復活する兆しが見えなかったというネガティブ要素と、ユニコーン企業のIPOで莫大な利益が得られる可能性があるというポジティブ要素の2つがあるからです。

グノシーの事業別業績から見てみます。

下のグラフを見ると「ADNW」が2020年5月期第4四半期から急減しているのがわかります。これは広告を配信するアドネットワークのことです。

■事業別売上高の四半期ごとの推移(単位:百万円)

決算説明資料より筆者作成

2020年3月に子会社digwellが誇大広告を制作していることが問題視されました。架空の口コミや写真を使い、ダイエット食品、育毛剤などの広告を制作していると毎日新聞などが報じたのです。グノシーは広告審査を厳格化し、誇大広告を判断されるものを大幅に削減しました。

Web広告に関しては、2020年7月に大阪府警が健康食品を販売するステラ漢方の従業員や広告代理店の関係者などを薬品医療機器等法違反で逮捕するなど、規制を強める動きが活発化していました。

美容や健康食品を中心にWeb広告業界は活況を呈していただけに、冷や水を浴びせられた影響は甚大でした。

しかも同時期に「Gunosy Ads」も売上高が縮小しています。グノシーは主力アプリのアクティブユーザー数が2020年5月期第4四半期から減少に転じました。

そこで、2021年4月からKDDI株式会社のポータルアプリ「auサービスToday」の運営・開発を担当することを決めました。運営受託を含めた総アクティブユーザー数は2021年5月期第4四半期に急増しています。

しかし、グノシーは結果として広告宣伝費が膨らむ結果となりました。2021年5月期第4四半期の広告宣伝費は3億1,800万円。その前の4半期の1億5,200万円の2倍以上に膨らんでいます。

また、レベニューシェアが発生したことで利益を圧迫する結果となりました。2022年5月期から急速に利益率が悪化しているのはこのためです。

■コスト構造の推移(単位:百万円)

この結果を見ると、グノシーは「auサービスToday」の運営を代行したものの、コストに見合う売上高が得られなかったことを示しています。

投資をメディア、ゲームに次ぐ第3の主力事業に

実はグノシーは2020年11月にKDDIグループから外れています。グノシーの役員がストックオプション25,000株を行使。発行済株式総数が増加してKDDIの議決権所有割合が15%を下回ったのです。グループから外れることによって協業体制がいきなり崩れることはありませんが、グノシーはKDDIと距離をとっているようにも見えます。

KDDIの引力圏から離れてグノシーが目下注力しているのが、新興国スタートアップへの投資。グノシーは2022年2月ガレージプレナーズに1,000万ドルを追加出資(累計出資額30億円超)していました。 ガレージプレナーズは評価額が10億ドル以上となり、ユニコーンへと成長しています。

この出資のポイントは、グノシーが”投資”と割り切っていることです。

国内通信大手ソフトバンク株式会社は25%出資していたPayPay株式会社に対して追加出資し、連結子会社化する方針を2021年5月に打ち出しました。この出資は傘下にあるZホールディングス株式会社などとキャッシュレス機能を連携させることによる、事業の強化を狙ったものです。

グノシーにこのような狙いはないに等しいでしょう。

ソフトバンクの親会社であるソフトバンクグループ株式会社は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを立ち上げてアメリカのニューロやインドのオラ・エレクトリック・モビリティなど、スタートアップ企業に出資をしています。

ソフトバンクグループは投資事業へと舵を切っており、出資先の企業価値が向上してIPOやM&Aによって多額の利益を得ることを目的としています。

グノシーのガレージプレナーズへの出資はソフトバンクグループと同じです。ガレージプレナーズはインドでクレジットカードを持てない人々に対して、与信を与えて決算できるサービスを提供しています。2021年2月はデジタルクレジットカードの発行枚数が2万枚でしたが、10月には20万枚と10倍に急増しました。

新興国の決済、金融システムは将来的な期待感の高い領域です。ブラジルのデジタル銀行ヌーバンクが2021年12月にニューヨーク証券所に上場しました。株価は公募価格の9ドルから15%上昇して10.33ドルをつけ、終値の時価総額は500億ドル(5兆6,800億円)に達しています。

ガレージプレナーズがIPOとなれば、グノシーが保有する株式の価値が急騰するのは間違いありません。グノシーが優れている点は、ガレージプレナーズという成長期待の高い会社に出資ができたことです。

《不破聡》

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