【メディア企業徹底考察 #92】文教堂の事業再生は計画通りに進んでいるのか?

書店を運営する株式会社文教堂グループホールディングスが、過大な債務で債務超過に陥り、私的整理手続きである事業再生ADRを申請、受理されてからおよそ2年半が経過しました。 文教堂は、6行の金融機関の借入債務41億6,000万円を株式化し、8行の金融機関の借入債務の返…

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書店を運営する株式会社文教堂グループホールディングスが、過大な債務で債務超過に陥り、私的整理手続きである事業再生ADRを申請、受理されてからおよそ2年半が経過しました。

文教堂は、6行の金融機関の借入債務41億6,000万円を株式化し、8行の金融機関の借入債務の返済条件を変更。2025年8月末までの猶予を持たせました。

更に当時主要株主だった日本出版販売株式会社から5億円の出資を受け、競争力の強化を行うとしていました。文教堂の再生計画は順調に進んでいるのでしょうか。

不採算店の徹底的な整理はどれほど業績に影響したか

まずは業績の実績と計画を比較します。文教堂の2022年8月期の売上高は164億8,600万円でした。計画では171億4,200万円。実績値が計画をやや下回っているものの、概ね順調に進んでいます。

■文教堂の売上高(実績と計画の推移)

決算短信より

文教堂の再生計画の一番の柱は、不採算店の徹底的な退店。債務超過に陥る前は撤退が進まず、赤字体質の店舗を多数抱えていました。文教堂は2019年8月期に30店舗、2020年8月期に23店舗、2021年8月期に2店舗、2022年8月期に7店舗を閉店しています。売上高の実績と計画が近い数字で連動していることから、退店はほぼ計画通りに進んでいるのでしょう。

また、2019年9月に不採算だったキャラクターグッズ販売・アニメ専門店運営のアニメガ事業をソフマップに売却しました。主力の書店運営に経営資源を集中するための事業整理で、文教堂の徹底的な閉店と周辺事業の売却は事業再生の王道パターンを踏襲していると言えます。

2022年8月期の営業利益は5,200万円でした。計画の2億6,900万円とは差が開いているものの、再生前は2期連続の赤字。コロナ禍という異常事態の中、3期連続の黒字化を果たした意味は大きいと考えられます。

■文教堂の営業利益(実績と計画の推移)

決算短信より

2020年から2021年にかけて、『鬼滅の刃』が異例のヒットを飛ばしました。その恩恵もあって、2021年8月期の営業利益は計画を上回りました。2022年8月期は反動減が文教堂の業績にどれだけ影響を与えるか注目されました。第1四半期は4,600万円の営業赤字、第2四半期は500万円の営業黒字と、赤字と黒字の一進一退のせめぎ合いでしたが、下半期は黒字が続きました。

2022年8月期の期首予想では3億円の営業黒字でした。再生計画を上回る黒字予想でしたが、大幅な減益となりました。下方修正した理由として、反動減や市場縮小の影響を挙げました。

2023年8月期は1億円の営業利益を見込んでいます。文教堂は不採算店の退店により、確実に利益が出る体質へと変化しています。しかし、2022年8月期の営業利益率は0.3%、2023年8月期が予想通り着地しても0.6%程度。計画していた1.5%には遠く及びません。利益率をどれだけ高められるかが今後のポイントとなるでしょう。

なお、日販は2020年8月末時点で文教堂の株式を24.31%保有していましたが、2022年8月末には9.16%まで低下しています。大日本印刷も2020年8月末の20.52%から7.73%まで下がっています。文教堂は大手企業の引力圏から抜け、再生への道を切り開いているように見えます。


《不破聡》

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