10月14日、オンライン会議システムzoomを運営するZoomビデオコミュニケーションズ社は、新機能を含む大幅なアップデートを発表しました。アップデートの中には、主催者が無料・有料のイベント配信を行うことができる機能や暗号化通信によるセキュリティ強化も含まれているようです。
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利用者を伸ばし続けるZoom
COVID-19の影響により、今年からオンライン会議システムの利用者数が爆発的に増加しており、いまだ増え続けている状況です。そんな中でもZoomの利用者数は頭一つ抜けていて、今回の発表では、毎日3億人を超える人が会議に参加しており、パンデミックにおいて無償でZoomを利用している学校関係者は12万5千を超えているようです。
10月5日にJ.D. パワーが発表した顧客満足度調査では、惜しくも1位をGoogle Meetに譲ってしまいましたが、シスコのWebexやマイクロソフトのTeamsに勝ち、2位の座に輝いています。海外でもマジック・クアドラント(市場調査レポート)において、今年の10月時点で5回連続で会議ソリューションのリーダーの座につくなど快進撃を続けています。
そんなZoomが、自社の年次ユーザー会議であるZoomtopiaで数々の新機能を発表しました。ちなみにこのZoomtopiaは登録さえすれば録画されたセッションを誰でも閲覧できるようです。
数々の新機能
Zoomが発表した新機能の概略は下記になります。
- ユーザーが無料もしくは有料でイベント等を配信することができるOnZoom
- エンドツーエンド暗号化(E2EE)への対応による会議のセキュリティ強化
- さらなるカスタマイズを可能にするSDK(ソフトウェア開発キット)
- Zoom会議内にアプリケーションを組み込み、参加者がスムーズにアクセスすることを可能にするZapps
- 会議背景のカスタマイズやZoomPhoneなどZoom会議機能の向上
- Zoomがサポートする周辺機器の認証範囲を拡張
この中で、注目したい新機能として、OnZoomとZappsがあります。
OnZoomは、会議という枠を超えて有料配信やイベントをZoom上で行えるものです。これは、課金システムが従来のZoomに組み込まれ、主催者側が視聴者から容易に料金徴収を行えるようになったということを意味しています。発表において「唯一無二のオンラインイベントプラットフォーム」と宣言しているだけあって、イベント配信事業に本腰を入れて来たのかもしれません。また、配信のポータルサイトとなるOnZoom.comというサイトも立ち上がり、米国のユーザーは14日からベータ版を使用可能とのことです。
Zappsは、Zoom内でサードパーティーのアプリケーションを実行できる機能です。活用すれば、Zoomで会議をしながらチャットアプリや文書作成アプリをZoom上でアクセスすることが可能となります。会議で文書を共有するために裏でアプリを起動し、それを配信画面で共有する、この一連の動作が不要となるわけで、会議がよりスムーズになりそうです。既にSlackやDropboxなどとのコラボが決まっており、合計25社がこの機能への協力を表明しています。今回の発表では、このZapps向けアプリの開発支援も強調されていて、スマホ向けのアプリストアを目指しているのかもしれません。
セキュリティ面の強化も
Zoomといえばセキュリティに関する脆弱性が当初から指摘されてきており、Web上ではその声は変わらずのようです。それを受けてか、今回の発表で新たな暗号通信機能を発表しています。発表されたエンドツーエンド暗号化(E2EE)は真新しい技術ではありません。内容は、通信の送受信を行っている当事者以外が通信内容を見ることができない、というシンプルかつ重要なもので、企業のオンライン会議では必須とも言えるでしょう。
使用可能となるのは14日の時点から来週ですので、既にこの暗号化機能を使うことはできますが、テクニカルプレビュー版でないと使えないので要注意です。ちなみにWebexやSkypeなど多くのアプリケーションで導入済みとなっていますが、既定では有効になっておらずそのままでは暗号化された会議にはならないようです。
オンライン会議システムの枠を超えて進化するZoomは天下をとることができるのでしょうか。