ハイエンドのVRヘッドセット「HTC VIVE」を擁し、世界のVR市場を牽引してきた、HTC。先日バロセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)では次世代高速通信5Gを使った「HTC 5G Hub」を用いたデモも展示。更なる進化を予告しています。

こうしたHTCのVRに対する取り組み、そして日本発のトレンドとして加速しているVTuber(バーチャルユーチューバー、バーチャルタレント)の発展に今後どのようにしてHTCが関わっていくのか。日本法人であるHTC NIPPON株式会社の児島全克社長にお話を伺いました。

―――HTCについて簡単に教えてください

HTCは1997年に台湾で創業したメーカーで、現在では主にスマートフォンやHTC VIVEというVRヘッドセットを展開しています。新しいチャレンジにとにかく積極的で、3Gや4G規格に対応したスマートフォンから、AndroidやGPS を搭載したスマートフォンもいち早く商品化に成功しています。私自身はモトローラという会社で長くエンジニアをやっていましたが、HTCが日本に上陸するタイミングで加わり、当初はWindows Phoneの立ち上げに携わっていました。次々に繰り出す新しい取り組みが面白く、飽きませんね。日本法人という位置付けですが、実は日本向けの製品は日本発の商品が多数あったりします。

VIVEと5Gを全面的にアピールしたMWCのHTCブース

―――世界のVRの現状について教えてください

世界的にもVRはゆっくりと伸び続けている状況ですが、まだコンシューマーに広く普及するという段階には届いていません。一方で、法人向けのソリューションとしてはかなりの事例が出てきていて、一昨年頃から各社が取り組んできた成果がプロダクトとして登場してきています。これを通じて、ユーザーとしてVRに触れる機会が増えていきますので、コンシューマー向けにも良い影響があるのではないかと思っています。

―――法人向けで特に盛り上がっている領域はありますか?

教育や学習、建築のシミュレーション、自動車の開発、トレーニング、災害予防(地震体験など)といった領域は様々な事例が出てきています。HTCとしても、VIVEを活用しようという法人や開発会社に向けては最新のデバイスの貸与や技術的な助言、あるいは「VIVE X」と呼ばれる投資ファンドからの投資も行っており、日本企業でも投資を受けた実績があります。

―――日本と世界での普及に違いはあるのでしょうか?

やはりVTuberというトレンドが日本では際立っています。日本からはじまって、日本の文化に敏感なアジア圏でも広がる兆候があります。アメリカやヨーロッパでも少し異なりますが、リアル志向の「バーチャルユーチューバー」なんかも登場してきていて、VR技術をリッチなコンテンツ視聴手段としてではなく、バーチャルな世界での表現手段として活用するという流れが出てきています。

―――VTuberは何故これだけ盛り上がりを見せたと分析されていますか?

やはり普通のアイドルと違って、会いに行けて、そしてコミュニケーションをダイレクトに取ることができる、これがファンにとって熱中する大きな理由だと思います。

いま、VTuberは日本で7,000人以上が存在していると聞いています。誰もがバーチャルな人格を持って他の人たちと接することができるようになって、それにより本当に多彩なスタイルのアイドルが生まれている。これも大きな理由だと思います。

―――デバイスとしては今後どのような進化を遂げていくのでしょうか?

デバイスは今後も進化を遂げていきます。また、メーカーとしては様々なユースケースに対応できるようラインナップを広げていくつもりです。

年明けのCESで発表した「VIVE Pro Eye」は名称の通り、目のセンサーが搭載されたバージョンです。IPDの自動調整(個人差のある両目の間隔を自動検出し調整)、Foveated Rendering(画面上で注視している場所だけ4Kや8Kの高解像度で描画する=負荷を軽減)、Attention Data Mapping(アイトラッキングのヒートマップをデベロッパーが確認できる)、Gaze Control(視点を使ったUI)などの新機能が搭載されています。

また、「VIVE Focus Plus」ではベースステーションが不要になっていて、トラッキングをカメラのインサイドアウトで行います。ベースステーションが無くなったことで、広い場所でもVRで歩き回る、というような体験が可能になりました。

―――5G(次世代高速通信)が実用化されることで、VIVEにも変化があるでしょうか?

まさに先日のMWCでは、新たな「VIVE Focus Plus」という製品と、「HTC 5G Hub」を組み合わせたデモンストレーションを行いました。

「VIVE Focus Plus」はVIVEとして6DoFコントローラの付いた初となるスタンドアロン型のVRヘッドセットになります。ただ、スタンドアロン型でCPUをヘッドセットに内蔵するスタイルではCPUの能力の限界から、実現できる性能に限界があります。

そこで登場するのが「HTC 5G Hub」です。これは5G回線とのハブとなる端末です。クラウドのエッジでレンダリングされた高品質のVR映像を、5G回線を使って「HTC 5G Hub」が受信、そこから「VIVE Focus Plus」まではWi-Fiで転送され、ワイヤレス、軽量なヘッドセットでも、これまでのようなハイエンドなVR体験が出来るようになります。

5Gの高速大容量、そして低遅延によって、クラウドで描画した映像を、ほぼリアルタイムで「VIVE Focus Plus」まで転送、表示することができるようになりました。MWCでは実際の回線を使ったデモを行いましたが、大変好評でした。

MWC 2019でVIVE Focus Plus+HTC 5G Hubを体験

体験型のUX、VRのソリューションはテクノロジーだけでは完成しない。視覚聴覚、操作、センシングなど複数の要素をアナログ的にすり合わせて組み合わせてはじめてトータルパッケージになるということがHTCの各デバイスを操作してみて理解できた。

VIVE Focus Plusを使ったデモでは5Gで期待される低遅延テクノロジーを随所に盛り込んでいるが、ユーザーにはもっとも手軽に高性能を楽しめるVRソリューションになっていることに感心した。

HTC 5G Hubは手のひらに乗るほど小さなアンドロイド端末だが侮ってはならない。キャリアごとに最適化されており、キャリア基地局に置かれたエッジサーバにホスティングされたVIVEPORTサーバから5G通信の低遅延性能を最大限引き出すことができる。

またHTC 5G HubとVIVE Focus Plusの間は、超低遅延型の次世代WiFiであるIEEE802.11adを利用する。体験してわかったのは低遅延であれば、激しい動きも細かな作業も質量感を持つため違和感がない。今回のVIVE Focus Plusのデモはアクションゲームだったが、VRを知り尽くしたHTCが低遅延にこだわってまとめ上げたソリューションは、ビジネス現場を大きく変えるパワーを持っていると感じた。

(三浦 和也)

―――なるほど。ローカルにハイエンドなPCが不要となることで、大きな変化が生まれそうですね

はい、コンテンツのビジネスモデルも変わるのではないかと思います。

HTCではコンテンツの配信プラットフォームとして「VIVEPORT」というものを運営していますが、これを今後はHTC以外のデバイスにも対応していきます。さらに「VIVEPORT Infinity」という月額のサブスクリプションモデルを導入し、一定の金額を毎月お支払いいただければ、ラインナップの中からコンテンツが遊び放題になります。お客様にとっては沢山のコンテンツに触れる事が容易になり、開発者の皆様にとってもユーザーとの接点を増やす事になると思います。

HTCはこれまではハードウェアベンダーとしての側面が強かったのですが、今後はVRにおけるプラットフォーマーとなっていければと思っています。

―――VTuberについては今後どのような取り組みを考えておられるのでしょうか?

HTCとしてVTuberのサポートは積極的に取り組んでいきたいと思います。例えば、「VIVE Pro Eye」で搭載されるアイトラッキングは、VTuberの表現力を上げるのに一役買うと思いますし、一部のデベロッパーさんにはテストを初めてもらっています。

冒頭にもお話しましたが、HTCでは日本でも製品のプロデュースを行っていますし、台湾の開発チームとも緊密に働いていて、特にVTuber周りでは日本からの要望がかなり製品開発に反映されています。これからも、日本のお客様の耳を傾けながら、日本のVTuberや、VR市場を盛り上げるために努力していきますので、ぜひ注目していただければと思います。

特集 VTuberは次世代のメディアか

  1. 急速に拡大するVTuber業界、投資が進む領域と主要なプレイヤーをカオスマップで紹介
  2. VTuberとは一体何者なのか? そしてリアルとバーチャルが溶ける未来とは?・・・VR専門メディア「Mogura VR」久保田編集長、永井副編集長インタビュー
  3. 「HTC VIVE」とVTuberの良い関係、そして5Gでの進化はどうなる?・・・HTC NIPPON児島全克社長インタビュー
  4. ゲームメディアは何故VTuberを作ったのか、メディアを飛び出して活躍する「インサイドちゃん」運営チームに聞く
  5. VTuberはポストスマホ時代の先駆け?全ての人がアバターを持つ時代を築く・・・Wright Flyer Live Entertainment代表取締役 荒木英士インタビュー
  6. 株式会社ミラティブ 赤川社長インタビュー

※順次公開予定です