企業変革への取り組みを続けている静岡新聞SBS(静岡新聞社と静岡放送のグループ)が11日の朝刊に「静岡新聞SBSはマスコミをやめる。」という見出しの一面広告を掲載し話題になっています。
「静岡新聞」は約55万部を発行する静岡県で最大の地方紙(2020年6月現在)。ただ2006年のピーク時からは20万部も減少。2020年4月の値上げや新型コロナウイルスの感染拡大でも大きく部数を落としたということです。
これに危機感を抱いた同社は、2018年5月からシリコンバレーに駐在員を派遣。以降4度に渡り、全社員の1割に当たる80名を派遣し、シリコンバレーに進出した日本企業から学び、変革の骨子を練ってきました。昨年7月には社内外のインタビューなどで構成される「静岡新聞社イノベーションレポート」を公表。ニューヨーク・タイムズの「イノベーションレポート」に倣ったレポートは社内の状況が赤裸々に綴られ、変革に向けたプランを提示しながら、行動を促すものとなっています。
そこで謳われているのが顧客の目線で考え、顧客の課題を解決しようとする「ユーザーファーストな企業へと生まれ変わる」ということ。そのターゲットとしてブランドビジョン「『やる気』を喚起して人々を動かすメディア企業」という事が述べられています。
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2021年の決意として表明された「静岡新聞SBSはマスコミをやめる。」はこれに通じるもので、マスコミのマスは輪転機や放送技術のような大量に同時に情報を届ける手段が出来たという技術的な発明から生まれたもので、インターネットによって、個人個人に適した情報を届けられる技術が得られた今、マスに固執する必要はあるのか、という問題意識が企業変革に取り組む中で自然と生まれていったということです。
「マス」とはいったい何だったのか? 今も昔も、生活者は一人一人みんな違う。新聞、テレビ、ラジオを成り立たせている技術の性質上、「マス」と捉えざるを得なかっただけで、インターネット登場以前にも実世界に「マス」なんて存在しなかったのではないか。もし、当時今のように一人一人と向き合える技術があったなら、私たちは「マスコミ」になったのだろうか、と。
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指の指紋をモチーフにした、社員の決意のメッセージも全てウェブサイトでは掲載されています。また、年末には決意の結果報告もする予定だということです。