本連載「メディアってオワコンですか?」は、近年高まるメディア不信や厳しいビジネス環境など、メディア人が顔を合わせれば「いやー厳しいですよ」と言う現状に、一石を投じたいシリーズです。多様なメディア業界の中で、「突き詰めている人」や「偏愛」を持つ人々をインタビュー。メディア人が抱える課題へのヒントや、メディアの魅力を再認識できるコンテンツをお届けします。「メディアってやっぱ面白いじゃん」と思ってもらえたら幸甚です。
「データ分析をして、メディアを改善しよう」
メディア界隈にいる人なら、よく聞くフレーズですよね。でも、“本当に”できていますか?
「GAを見て、コンテンツを改善しようとするだけじゃ甘いんですよね」
連載第1回目は、元スマニューで現在データコンサルティングをしている田島将太さんにインタビュー。メディアにおける「データ分析の活かし方」を話してくれました。
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目次
「いい記事を書いていればPVは伸びる」が実現しないワケ
―――「データ分析」してコンテンツをよくしていこう!と言いつつ、なかなか上手くいかない現場も多いのではないかと思います。
田島 うーん、メディアにおいてデータ分析は、「個々のコンテンツをどう変えるか」よりも「チームビルディング」に有用だと思うんです。
メディアの成長に最も大事なのは「良質な独自のコンテンツ」で、それは過去のデータを見ているだけではなかなか生まれてきません。データはコンテンツを考える道具というよりも、むしろ意思決定の共通言語として使う方が、メディアにとっては価値を発揮できるのではないかと思います。
データを活用したチームビルディングが必要になってくるのは、メディアが「第2フェーズ」にいる時です。日本のメディアではほとんどの場合、PVが指標になっていますよね。このPVを「記事数×記事あたりの表示回数×CTR」と“分解”しているのが「第1フェーズ」です。
最初は組織が小さいので、「記事数」は伸ばす余地があるし、「記事あたりの表示回数」もSEOや配信などによって、「CTR」もWeb向けのタイトルをつけることで増やしていけます。
ただこの“分解”はいずれ天井に当たります。組織は無限に大きくならないので、「記事数」は増やしづらくなる。無理に増やそうとすれば、「クオリティと量のトレードオフ」になってしまいます。
「記事あたりの表示回数」も配信先、プラットフォームとの力関係がありメディア側から増やそうとするのは難しい。「CTR」は突き詰めれば突き詰めるほどメディアのポリシーから外れていく。この“分解”は初期には有効ですが、どこかで壁にぶち当たってしまうんです。
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そこで次の段階としてPVをどう“分解”するかというと、「読者数×読者が月あたり何回来てくれるか(訪問頻度)×訪問あたりの回遊率」と、もう少しエンゲージメントに沿った指標に変えるわけです。
この“分解”を使う時に難しいのは、編集部でコントロールしづらいものが増えることです。第1フェーズの記事数や配信先はコントロールできますが、「訪問頻度」や「読者数」はコントロールしづらい。ここで編集部に編集以外の人が必要になってきます。
その際、編集以外の人間、つまりエンジニアやアナリストなどと議論する「共通の土台」がないことが多いんです。編集部の「暗黙知」を編集以外の人間に伝えるのは、なかなか難しいですよね。議論をするための「共通の土台」を作るには、データ分析が一番いいのではないかと思っています。