新型コロナウイルスの追跡アプリ、プライバシーと公益をどう両立する?

現在、新型コロナウイルス(Covid-19)がどのように収束するのか未だはっきり分からない状態です。一旦ワクチンが広く普及しなければ正常な世界に戻ることはないでしょう。また、感染者を追跡しさらに個別の検疫を義務付ける手段を講ずる必要さえあることが明らかになって…

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新型コロナウイルスの追跡アプリ、プライバシーと公益をどう両立する?

本記事はThe Conversationに掲載された、カナダのBrock Universityでデジタルメディアを専門とするAaron Mauro教授による記事「Coronavirus contact tracing poses serious threats to ourprivacy」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

現在、新型コロナウイルス(Covid-19)がどのように収束するのか未だはっきり分からない状態です。一旦ワクチンが広く普及しなければ正常な世界に戻ることはないでしょう。また、感染者を追跡しさらに個別の検疫を義務付ける手段を講ずる必要さえあることが明らかになってきています。

私は疫学者ではなく、また公衆衛生担当官でもありません。ブロック大学のデジタル人文科学センターの教員として、新型コロナウイルスの影響を縮小させるために使用されるソフトウェアの潜在的なプライバシーとセキュリティリスクを含む、デジタルメディアの社会的および文化的影響を伝えることが私の役割です。

今後数週間から数か月のうちに、「接触者追跡調査」という言葉を耳にする機会が増えるでしょう。接触者追跡調査とは、患者にインタビューを行って彼らが継続的に接触した人々と彼らが行った場所に関する情報を収集することです。これは人の記憶やインタビュー、探偵の捜査等に依存しているため、手間がかかりさらに間違いが起きやすい調査でもあります。

そのため新型コロナウイルス感染の追跡調査は、必要な接触者追跡データの規模が大きいため携帯電話を使用した接触検出および記録が一見理想的なソリューションに思われます。カナダ政府は接触者追跡調査を検討しており、ジャスティントルドー首相は「すべての選択肢が検討されている。」と述べました。

危機に瀕する市民の自由

カナダ政府が、広範囲のデジタル監視を通じて市民の自由を侵害する決定を下す前に、私たちはその決定に対する譲歩する点または妥協点について考える必要があります。危機は、政府や企業により公共の安全の名の下に市民の自由を侵害する機会として長年利用されてきた背景があるためです。

9/11のテロ攻撃後と同様に立法府の暴走について一考してみるだけでも価値があります。米国では、愛国者法によって付与された並外れた権限は、内部告発者のエドワードスノーデンによりの開示されたNSAおよびCIAによる監視の実態により明らかにされました。開示は諸国に多大な影響を及ぼしました。例えばカナダでは、開示後テロ対策法を含むオムニバス法案C-36が可決されました。

9/11以後カナダは接触者追跡について多くを学びました。2017年、カナダ政府は過去の立法については行き過ぎた立法であったことを認め、初期のテロ対策法を改正しBillC-59を導入しました。

デジタル技術を使用した接触者追跡調査は、新型コロナウイルスと戦い経済を再開する機会の創出に貢献しますが、これまでに前例のない監視インフラを整えることも意味します。

追跡アプリは存在する


《The Conversation》

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