英国発のアドテク企業PubXが、AIエージェント同士による広告取引という将来像を提示しました。CEOのAndrew Mole氏と日本担当のタカミ・コアルスキー氏が登壇し、現在のオープンウェブが抱える構造的な課題と、AIエージェントによる解決の道筋を語りました。同社は日本でも展開を進めており、フォーエムやフラックスとの取引が始まっています。
「54円問題」とオープンウェブの構造課題

PubXの出発点は動的フロアプライシングの技術提供でした。約5年前にフロアプライス分析を通じてサプライサイドの知識とデータを蓄積し、ビッドストリームにデータを付与してCPMを高める「ビッドインテリジェンス」へと進化。そして現在、AIエージェントを活用した「エージェンティックデマンド」が主軸になりつつあるということです。


海外では「54セント問題」と呼ばれる中間コストの問題も深刻です。広告主が100円を出稿しても、パブリッシャーの受取額は46円程度にとどまるのが現状だとの事です。PubXのソリューションでは、わずかな手数料でパブリッシャーの受取額を80円以上に引き上げる世界観を掲げています。
エージェント同士が取引する世界

PubXが提唱するのは「エージェンティックダイレクト」という仕組みです。デマンドサイドのAIエージェントとサプライサイドのAIエージェントが対話し、どんなオーディエンスが必要か、どの程度提供できるかを交渉して広告の売買を成立させるという構想です。

具体的なステップは4つに整理されました。まずデマンド側がキャンペーンの条件を入力します。次にサプライ側のエージェントが在庫を探索し、提供可能なセグメントや配信規模を提示します。3番目にエージェント間で条件交渉が行われ、4番目に配信が開始されるという流れです。


サプライサイドのエージェントが各インプレッションの価値を即時判断する仕組みも説明されました。たとえばiOSのSafariプライベートモードかつVPN利用中のユーザーが訪問した場合、通常であればデータが不足して低単価のプログラマティック取引になります。しかし進行中のディールに合致するインプレッションであれば、サプライ側のエージェントがそれをピックアップし、ディールに適用するという判定ができるということです。
セグメント生成から配信までがリアルタイムに
PubXのプラットフォーム内部では、InteniIQなどのIDプロバイダーのデータ、CDPやDMPのファーストパーティデータ、コンテクスチュアルデータ、ビッドストリームのビューアビリティデータといった複数のインプットが処理されます。これらをもとにAIエージェントがカスタムセグメントをその場で生成できるため、年代と性別の掛け合わせのような単純なセグメントだけでなく、購買データや特定の記事執筆者の読者といった細かいセグメントも作成可能だということです。
従来のセグメント運用では、作成から販売交渉、実際の配信まで数日から数週間のリードタイムがかかっていたのに対し、エージェント同士の取引ではセグメント作成と同時に配信に移行できるとの説明でした。

パブリッシャーにとってのメリット

パブリッシャー側のメリットとして、コワルスキー氏はいくつかの点を挙げました。ファーストパーティデータの収益化が容易になる事、純広告の販売部隊がいなくてもAIエージェントが24時間稼働して広告を売ってくれる事、JSタグ1つの実装で参加できる手軽さなどです。
小規模な媒体であっても、特定のディールに対して良いフィットがあればエージェントがそのセグメントを売ってくれるため、これまで規模の問題で広告出稿に参加できなかった媒体も加われるようになるとの見通しでした。広告主にとっても、ウォールドガーデン並みのターゲティングがオープンウェブで実現できるようになるため、オープンウェブへの出稿が増え、CPMの向上とパブリッシャーの参加増加という好循環が生まれるのではないかと述べていました。
コアルスキー氏は、AIエージェントが広告業界に到来する事はアメリカではほぼファクトとして捉えられていると語り、日本でもグローバルと同じタイミングでエージェンティック広告のエコシステムを構築していきたいとセッションを結びました。









