本記事は株式会社電通が提供している、広告業界の最新動向やトピックス、コミュニケーション領域に関連する電通グループの先進の知見やサービス、ソリューションなどを紹介するニュースサイト「ウェブ電通報」からの転載記事です。
3月17日、D2C、サイバー・コミュニケーションズ(以下CCI)、電通、電通デジタルの4社は共同で「2019年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」(以下、本調査)を発表しました。
電通メディアイノベーションラボの北原利行が、本調査内容に加え、インターネット広告媒体費に含まなかった「物販系ECプラットフォーム広告費」についても解説します。
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目次
インターネット広告費は日本の総広告費の30.3%に到達
2019年の日本の総広告費は、6兆9381億円(※)。そのうちインターネット広告費は前年比119.7%の2兆1048億円で、日本の広告費全体のうち30.3%を占めるまでに伸長しました。
※今回から新たに「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」(※1)と「イベント」(※2)を推定対象に追加した。前年同様の推定方法では前年比101.9%の6兆6514億円。
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インターネット広告費の中身は、大きく二つに分けられます。一つが「インターネット広告媒体費」で、2019年は1兆6630億円。もう一つが「インターネット広告制作費」で、2019年は3354億円です。これらに加え、2019年から新たに推定した「物販系ECプラットフォーム広告費」が1064億円でした。
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今回は上記のうち最も大きな割合を占める「インターネット広告媒体費」についての詳細分析を行いました。
「広告種別」「取引手法別」に見たインターネット広告媒体費
今回の詳細分析では、インターネット広告媒体費1兆6630億円の内訳について、「広告種別」「取引手法別」に分析をしました。
●広告種別ではビデオ(動画)広告が全体のほぼ2割にまで伸長
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広告種別では、インターネット広告媒体費全体の1兆6630億円のうち、「検索連動型広告」が40.2%の6683億円と最も多くの割合を占めます。検索エンジンと連動したタイプの広告です。
続いて、さまざまなウェブサイトに表示されるバナータイプの「ディスプレイ広告」が全体の33.3%、5544億円です。
そして今回特に大きな伸長を見せたのが動画ファイル形式(映像・音声)の広告をカテゴライズした「ビデオ(動画)広告」です。ビデオ(動画)広告は、2017年にはインターネット広告媒体費全体のうち9.5%(1155億円)でしかありませんでしたが、2018年には全体の14.0%(2027億円)、そして2019年には19.1%の3184億円に達しました。
前年比でいうと157.1%で、これはインターネット広告費全体の119.7%を大幅に上回っています。
モバイルデバイスの通信速度が年々向上するのに従い、よりリッチな表現を可能とするビデオ(動画)広告が伸び続けるトレンドは、今後もしばらく続きそうです。
●取引手法別×広告種別構成比でもビデオ(動画)広告が伸長傾向
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取引手法別では、「運用型広告」が79.8%の1兆3267億円と、全体の約8割を占め、前年までと同じくインターネット広告取引の主流を担う状況は変わりません。
そしてこの取引手法別の広告費の内訳を広告種別で見ると(上図)、「運用型の検索連動型広告」が全体の40.2%で最も大きくなっています。
「運用型のディスプレイ広告」が24.2%、「予約型のディスプレイ広告」が9.1%と大きな割合を占めていますが、2018年のディスプレイ広告は運用型が全体の28.0%、予約型で11.0%だったので、いずれも微減しています。
その一方で、ここでも「運用型のビデオ(動画)広告」が15.2%(2018年は12.0%)、「予約型のビデオ(動画)広告」が4.0%(2018年は2.0%)と、いずれも大きく伸長しているのが見て取れます。
●デバイス別広告費(参考値)の推定について
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2018年まではデバイス別(モバイル広告とデスクトップ広告)の調査結果も発表してきましたが、2019年からは参考値として取り扱うことにしました。
理由としては、「デバイスを問わない広告配信」が主流となったことです。従来のような「枠発想」の広告販売から、より個々人の趣味、嗜好や場所、時間によってデバイスを問わずに広告が配信される現状を鑑みるに、今やデバイス別に分けて発表する意義が薄れています。
よって、この数字はあくまでも「参考値」として見ていただきたいのですが、広告費として明確に分けられてはいないとしても、実際に配信される数としてはモバイルデバイスが主となっている現況は把握できるかと思います。
インターネット広告媒体費全体の約30%は「ソーシャル広告」
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ユーザーが投稿した情報をコンテンツとするソーシャルメディア上で展開される広告を、「ソーシャル広告」として推定しています。
さらに「ソーシャル広告」は、「SNS系」「動画共有系」、さらにブログサービスやソーシャルブックマークサービス、電子掲示板サービスなどの「その他」に分類しました。
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ソーシャルメディアの種類別に「SNS系」「動画共有系」「その他」に分類すると、「SNS系」が最も多く2280億円となりました。
ソーシャル広告費は前年比126%と高い成長率で推移し、インターネット広告媒体費全体の29.5%を占める4899億円となりました。今後も高成長が続くのか、注目に値します。
急伸する「物販系ECプラットフォーム広告費」とは何か?
2019年5月、国内電通グループ3社(D2C、CCI、電通)は、急拡大する物販系ECプラットフォームの広告市場に着目し、初の試みとして2018年の国内の物販系ECプラットフォーム広告費を推定・発表しました。
■「2018年 物販系ECプラットフォーム広告費の推計調査」解説―急拡大する物販系ECプラットフォームの広告市場規模は1123億円(https://dentsu-ho.com/articles/6754)
上記の調査では2018年の物販系ECプラットフォーム広告費は推定1123億円でした。しかし、この金額には、従来の「日本の広告費」でもすでに推定していた広告費が一部含まれていることが分かりました。
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今回の「2019年 日本のインターネット広告媒体費」調査では、「日本の広告費」との重複部分を切り出すための定義と設問により、再度推定を試みました。その結果、重複していない部分(従来推定していなかった部分)を1064億円と推定できました(上図赤枠部分)。
なお、あくまで参考値ですが、前述の方法と同様に推計した場合、2019年の「物販系ECプラットフォーム広告費」は参考前年比128.5%の1376億円と推定されます。このことからも、上図のブルーで塗られている部分が伸長していると思われます。
今後も大きく伸長する領域として注目し、調査していく予定です。
2020年のインターネット広告費はどうなる?
「2019年 日本の広告費」では、「インターネット広告費が初めて2兆円超え」「日本の広告費全体の30%にまで伸長」といったインパクトのある数字が推定されました。今回分析したインターネット広告媒体費も、今後も成長基調にあると思います。
しかし、こうした数字をもって「もう従来のマスメディア広告の役割はインターネット広告に置き換わるのではないか」と単純に考えることはできません。デバイス別広告費の項でも述べた通り、今や広告はそうした「枠」単位で考えるものというよりも、あくまでも「人」単位で考え、届けるものになりつつあります。
先日、日本アドバタイザーズ協会常務理事の小出誠さんと、電通メディアイノベーションラボの奥律哉による「日本の広告費 特別対談」をウェブ電通報に掲載しました。この記事の中で小出さんが語っているように、今の時代はオンライン、オフラインを問わない、「メディアニュートラル」な視点での広告プランニングが求められているといえます。
そうした中ではマスメディアかインターネットかといった2項対立にもはや意味はなくなり、それぞれのメディアの長所を組み合わせた、新しい広告コミュニケーションの在り方を考えていく必要があるのではないでしょうか。
なお、インターネット広告の課題として、上記の対談で小出さんが触れていたアドフラウドやブランドリスクといったものがあります。こうした課題はもちろん放置されているわけではなく、日本アドバタイザーズ協会や電通グループ各社も含めた、広告業界全体で解決に取り組んでいます。
私たちの果たすべき役割は、広告主と生活者、双方にとってより良い広告コミュニケーションを実現することです。本調査も、「広告費」という観点から時代の流れを俯瞰できるようにすることで、広告主やメディアの戦略に寄与し、より良い未来をつくっていく一助となることを願っています。