メディア運営やデジタルマーケティング支援などを手がけるINCLUSIVE株式会社の代表取締役社長である藤田誠氏が、第50回衆議院議員総選挙の比例代表選出議員選挙において、自由民主党の公認として東北ブロック候補予定者に選出されたことを発表しました。同社は2025年6月7日付で「当該事実に伴う、当社代表取締役の異動および業績予想の変更はございません」と公表しています。
藤田氏は出馬の背景として健康問題があったと述べています。同氏は昨年末に悪性リンパ腫ステージ4と診断され、本年治療を継続中です。治療過程で「命の尊さや健康の重要性を深く実感し、私がこれまでのビジネス経験を通じて得た知識とスキルを、より多くの人々や社会全体のために役立てたいという思いが一層強まりました」と述べています。
同氏は政策として地方経済の活性化、デジタル経済の推進、中小企業・スタートアップ支援、働き盛り世代の精神的身体的支援の充実を掲げています。特に注目すべきは、自身の経験を踏まえた「働き盛り世代」への支援策です。「団塊ジュニア世代や現役働き盛りのビジネスパーソンの方々は社会的には『強者』と捉えられておりますが、その内実は生活習慣病や更年期障害、子供の教育費、親の介護や終活対応など精神的にも肉体的にも金銭的にも大変な負荷がのしかかっています」と具体的な課題を指摘しています。
企業経営との両立については、「今後も引き続き、経営を強く推進してまいります」としながらも、「衆議院議員に選ばれた際には、企業経営とのバランスを慎重に図りながら進めていく所存です」と述べています。代表取締役としての職務については「柔軟かつ適切な対応を検討」し、「利益相反や公正性に関わる問題が生じる可能性が懸念される際には、然るべき対応を講じる意向」を示しています。
INCLUSIVE株式会社にとって重要なのは、政治的中立性の維持です。同社は「全ての企業活動において、特定の政治的思想および信条に基づいた判断および活動を行うことは一切ございません」と明言しています。これは同社がメディアや企業との協力により「情報の価値を最大化し、健全なデジタル社会の構築、自治体の情報発信推進やブランディング」に取り組んでいることと密接に関連しています。
メディア関連企業の経営者が政治参入する際の課題は複層的です。第一に、顧客である自治体や企業との関係において、政治的な立場が業務に影響を与える可能性があります。第二に、上場企業としてのガバナンス体制の維持が求められます。第三に、株主に対する責任と政治活動のバランスをどう取るかという問題があります。
同社の事業内容を見ると、自治体向けのブランディング支援や衛星データを活用した業務効率化など、公的セクターとの関わりが深い分野が含まれています。代表取締役が特定政党の候補者となることで、これらの事業に影響が出る可能性は否定できません。
今後注目すべきは、実際に当選した場合の具体的な対応策です。代表取締役職の継続、取締役会での意思決定プロセス、利益相反を回避するためのガバナンス体制の構築など、多くの課題が残されています。メディア業界においては、政治的中立性と企業価値の維持を両立させる新たなモデルケースとして、同社の動向が注目されることになるでしょう。