本記事はThe Conversationに掲載された、オーストリアのEdith Cowan Universityでコンピューターセキュリティを専門とするPaul Haskell-Dowland教授とオーストラリアの倫理的ハッキングと防衛を専門とするEdith Cowan UniversityでBrianna O’Shea教授による記事「Microsoft’s takeover would be a win for TikTok and tech giants – notusers」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。
中国の動画共有アプリ「TikTok」が再び頻繁にニュースの見出しに登場しています。
国家安全保障上のリスクやユーザーのデータが中国共産党によって盗み出されているのではないかとの憶測が何ヶ月も続いた後、ドナルド・トランプ米大統領は米国でのTikTokの使用を禁止する計画を発表しました。
これを受けて、TikTokの親会社であるByteDanceと米ソフトウェア大手のマイクロソフトとの間で買収交渉が開始されました。買収が実現すれば、マイクロソフトは米国でのアプリの運営を引き継ぎ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドでの運営も可能になります。
中国系アプリの使用禁止には前例がないわけではありません。例えば、インドは先月、TikTok含む数十個の中国系アプリやウェブサイトの使用を禁止しました。
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マイクロソフトとの交渉
一部の報道によると、ByteDanceはTikTokの事業の一部をマイクロソフトに売却することで合意したとのことです。9月中旬までこの話題が進展する可能性は低いですが、一旦米国の規制当局を落ち着かせ、オーストラリアにおけるTikTokをめぐる議論を一歩前進させました。
マイクロソフトは、買収はセキュリティの完全な見直しと、次の要求を含むことを示唆しました。
…大統領を含む米国政府との対話の継続。
TikTokの所有権を米国企業に移すことは、TikTokに対する中国政府の影響力をめぐる懸念を払拭する上で役立つかもしれません。しかし、既存のユーザーデータがマイクロソフトの管轄下に完全に移行されたことを確認するには、強力な監視が必要になります。
マイクロソフトは、TikTokのデータが同社に「移行された後、国外のサーバーからデータが削除される」ことを保証するとしていますが、管理が引き継がれる前にコピーが作成されていないことを証明するのは非常に困難です。
また、マイクロソフトがTikTokを所有した場合、サービスの魅力が失われるとする人もいます。例えば、マイクロソフトは米国政府と密接に結びついていると考えている人や、PC市場で独占的な地位にあると考えている人などがその例です。
また、外国政府が米国に保存されているユーザーデータに密かにアクセスすることができないという仮定は安易でしょう。