雑誌の通販は以前より幾つかの成功事例がありました。昨今ではECを取り入れて規模を拡大している雑誌も見られます。雑誌の定期購読を支援するプラットフォームを展開してきた 富士山マガジンサービス は定期購読に留まらず、出版社やメディア企業のビジネス支援、デジタルトランスフォーメーション支援に乗り出していて、中でもコマースの支援が拡大しているようです。
富士山マガジンサービスでデジタル領域を取り仕切る、出版コンサルティンググループ メディアプロデュース・ディビジョン マネージャーの戸谷忠史氏にお話を聞きました。
目次
定期購読者と出版社の取引関係をさらに深く、強いものに
―――戸谷さんのご経歴をお聞かせください。
2004年に富士山マガジンサービスに入社しました。それ以前は電子コミックの会社に勤めており、当社が電子雑誌事業を始めるタイミングでジョインしました。
入社当初は電子雑誌の普及に注力していましたが、事業がある程度立ち上がってからは、さらに出版社支援に繋がる領域があるはずだということで、現在は出版コンサルティンググループのメディアプロデュース・ディビジョンを所管しております。
―――出版社支援の具体的な内容についてお聞かせください。
富士山マガジンサービスは現在300万人強の会員、60万人の定期購読者にご利用いただいています。当社は定期購読者を媒体ブランドのファンと捉え、出版社とさらに深い関係構築や取引が可能な方々だと考えています。そこで出版社に向けて、ファンに向けた物販のご提案やイベント運営、集客のお手伝い、デジタルメディアの立ち上げからコミュニティや会員サービス支援などを行なっています。
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―――雑誌のブランド力を生かしたビジネス全般の支援が可能ということですね。出版社のECに対する関心をどう感じられていますか?
必要性は感じつつも、実現するにはハードルが高いと感じていらっしゃる出版社が多いと思います。どれくらいの勝算があるのか、事業計画として見積もりきれない部分もあるようです。
出版社はリソースが大きく投下できないという課題を抱えているので、当社の支援で参入リスクや投資を極力低くし、レベニューシェアという形で先行投資分を回収させていただくことで、一歩踏み出しやすいご提案にはなっているかと思います。
―――御社と出版社の役割分担はどのようにして決めるのでしょうか。
いろいろなパターンがありますが、編集部の目利き力を活かした仕入れや、読者への訴求という部分を出版社の方に担当いただき、残りは当社で引き受けるというケースが多いと思います。支援の内容に合わせてレベニューシェアのパーセンテージを決定する形になっています。
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―――広い意味ではデジタルトランスフォーメーション(DX)支援というところにも繋がるのでしょうか。
おっしゃる通りです。ブランドのビジネス支援という言い方をしていますが、全体としてはDXが大きなテーマだと考えています。当社は出版社に「攻めのDX」と「守りのDX」という考え方をお伝えしており、守りのDXでコストを削減し、削減したコストを投資に回し、攻めのDXに取り組んでいただけるような支援を展開しています。