山口県下関市で同地では初となる本格的なベンチャーカンファレンス「SHIMONOSEKI ADD-VENTURE SUMMIT 2023」が開催されました。これは下関に本店を置く山口フィナンシャルグループ(第一地銀の山口銀行を傘下に持つ)や福岡を拠点にしてベンチャー支援を行うドーカンベータなどが主催するもので、中四国のスタートアップエコシステムを支える面々が一堂に集まりました。
イベントの冒頭、山口フィナンシャルグループ(YMFG)代表取締役CEOの椋梨敬介氏は「地域や地方というと経済や未来に限界があると言われる事が多いが、世界やスタートアップと繋がることで無限の可能性がある。日本でも多くのスタートアップが誕生し既存の企業との連携事例が沢山生まれているが、地方ではまだ少ない。イベントを契機に地域とスタートアップの架け橋になっていきたい」と述べました。
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YMFG傘下でスタートアップへの投資や育成に取り組む山口キャピタルの代表取締役 古堂達也氏はイベントの開催意義について「スタートアップへの投資を通じて、地域にスタートアップにきてもらう、その中で、スタートアップと地域の事業者が連携して新しい産業を起こしていく必要があると考えました」と説明。今後も同様のイベントを計画し、「長い時間をかけて取り組んでいく」と強調しました。
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イベントでは「イノベーションのDNA」と題してDeNA創業者で現会長の南場智子氏と、The Breakthrough Company GOの三浦崇宏氏によるキーノートが行われ、南場氏は「この30年でインターネットやスマートフォンなど様々なものが世の中に変えてきたが、それを牽引したのはスタートアップだが、日本ではまだ優秀な人がスタートアップに取り組む割合が少ない」、(起業は)「辛いけど、面白くてたまらない経験で、起業をしたのは人生で二番目に良かった選択肢だった(一番は結婚だそう)。この楽しい経験をもっと多くの人に体験して欲しい」と振り返りました。
南場氏はMITの地元のボストンにはバイオに特化して育成してスタートアップが集積したケンドール・スクエアという場所がありエコシステムの中心になっているとして、「日本の大学を巡ると必ず世界に通用する研究の1つ、2つは必ずあるので驚いている」「そんなに大きくない地域でも、とことん育てる産業テーマを決めて取り組めば大きな可能性があると思う」と話していました。
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イベントではキーノートのほか、脱炭素、観光、DX、Web3など様々なテーマでパネルディスカッションが行われました。また、地元や全国から集ったスタートアップ企業によるピッチイベントや、スタートアップと地元企業の連携を目的としたスタートアップブースが設置され、盛んな交流が行われていました。
会場には下関市の前田晋太郎市長も訪れ、「YMFGとも連携して下関からどんどん新しい芽を生んでいきたい」と話しました。山口県は大都市圏を有する福岡県と広島県に挟まれた本州最西端の県ですが、YMFGはその3県にそれぞれ傘下銀行を有しています。会場は予想以上の熱気があり、スタートアップの創出、スタートアップと地元企業の連携という二軸での地域の活性化が実現されることを願ってやみません。