TOPPANホールディングスのグループ会社であるTOPPANクロレは、日本語長文AI音声制作システムを開発したと発表しました。この新システムは、オーディオブックなどのAI音声制作において、独自のデータ整形技術でAIの精度を向上させ、日本語に適した間合いやアクセントを踏まえた読み上げ内容をテキスト上で可視化し音声内容を調整するものです。
デジタル化に伴い書籍の売上が減少する中、オーディオブック市場は拡大傾向にあります。2024年には260億円規模に達すると予測されており、2019年の読書バリアフリー法成立により図書館でもオーディオブックの設備対応が進んでいます。
しかし、従来の日本語長文AI音声制作では、文章の区切りによる意味やニュアンスの違いという日本語独自の特徴により、微調整のための人手作業・ノウハウが必要とされ、多大な負荷がかかっていました。
TOPPANクロレの新システムは、これらの課題に対応し、高品質で迅速な日本語長文のAI音声制作を実現するものです。具体的には、文章の区切りごとの余白やアクセント制御などを可視化し、テキストデータ上で調整できるようにしています。
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また、LINE Yahooの音声合成編集ツール「Achoris Editor」と連携し、日本語長文のAI音声制作における自動生成から微調整までをシステム上で一貫して対応することが可能になりました。
TOPPANクロレは、本システムの活用により、2026年度までに出版社や新聞社などのコンテンツホルダー、自治体を含む図書館などの運営事業者から2万件のオーディオブック制作受託を目指しています。
今後、本システムをSaaS型サービスとして販売することを検討しており、多くの企業が手軽に高品質な音声コンテンツを制作・配信できる環境の構築を推進します。これにより、オーディオブック市場の拡大に貢献し、新たな読書体験の実現を支援していく方針です。
オーディオブック市場の拡大は、デジタル化時代における出版業界の新たな可能性を示しています。TOPPANクロレの取り組みは、AI技術を活用して日本語の特性に対応した音声制作を効率化し、コンテンツの多様化と利便性の向上に寄与するものと言えるでしょう。今後、出版業界などに及ぼす影響が注目されます。