BtoB向けマーケティングツール「ferret One」やフォーム作成管理ツール「formrun」を手がける株式会社ベーシックが、東京証券取引所に新規上場を申請した事が明らかになりました。想定時価総額は約58億円。
2004年の創業から約22年、50を超える事業を展開してきた「問題解決の集団」を自任する同社が、いよいよ資本市場の舞台に立つ事になります。
赤字4期から一転、2025年に営業黒字を達成
ベーシックの業績推移を振り返ると、2021年12月期から2024年12月期まで4期連続で営業赤字が続いていました。2024年12月期の売上高は18億2,152万円で前期比16.8%増と伸長したものの、営業損失は1億8,436万円。先行投資としての人件費や広告宣伝費の回収が追いついていない状態が続いていたという事です。
ただし、損失の幅は着実に縮小しています。2022年12月期に8億2,349万円あった経常損失は、2023年12月期に4億4,043万円、2024年12月期には1億9,609万円まで圧縮されました。
転機となったのが2025年12月期です。中間期の段階で売上高10億9,452万円に対し、営業利益1億269万円を計上。さらに第3四半期累計では売上高16億7,823万円、営業利益1億8,400万円と利益を積み増しています。有価証券報告書の記載によれば、人件費を中心に費用の積み上がりを抑制した事が黒字転換の大きな要因だったようです。同社は自らのパーパスとして掲げる「事業の成長を人の数で解決しない」を自社経営でも実践し、従業員一人当たり売上高を直近1年間で約20%改善させたと述べています。
一方で、純資産面には課題も残ります。2024年12月期末時点の純資産は3億7,674万円、自己資本比率は36.29%でした。第3四半期末には純資産が6億4,209万円まで回復していますが、繰越欠損金が依然として存在しており、現時点では配当実施の予定はないとの事です。
サブスクリプション比率約8割、MRR拡大を経営指標に
収益構造の柱はサブスクリプション型サービスで、2024年12月期の売上高に占める比率は77.68%でした。同社が経営上の最重要指標として掲げるのはMRRで、有料顧客数と顧客単価、解約率をモニタリングしながらストック収益の積み上げを図る方針です。
主力プロダクトは二つあります。BtoB向けマーケティングワークフローツール「ferret One」は、ノーコードCMSとMA機能を統合したオールインワン型ツールで、2025年12月末時点で500社以上が利用しているとの事です。毎月10件前後のBtoB新規顧客を安定的に獲得できる水準に達しており、機能強化によって顧客単価の引き上げも進んでいると記載されています。
もう一つの「formrun」はフォーム作成と業務ワークフロー管理を組み合わせたツールで、累計50万ユーザーを超え、有料顧客は5,000社以上に上ります。カンバン形式の管理画面やSlack連携による通知機能を備え、問い合わせ対応から採用管理まで幅広い領域で使われているようです。
両プロダクトを合わせた有料顧客数は5,500社超。いずれも新規ユーザーの増加が解約による減少を上回っている状態が続いており、顧客基盤は着実に拡大しています。
AI新規プロダクトで「コンパウンド戦略」を推進
今回の上場に際して注目されるのは、同社が2026年1月に正式リリースしたワークフロー構築ツール「workrun」とAIプラットフォーム「AIBOW」です。RAG技術を活用したAIチャットボットツール「askrun」の開発も進めているとの事です。
同社はこれらを既存プロダクトと連携させる「コンパウンド戦略」を掲げ、AIがツール間のデータを接続して部門横断のワークフロー最適化を実現する構想を描いています。
市場環境とVC保有比率
同社が属する国内SaaS市場は、富士キメラ総研の調査によればCAGR10%以上で拡大を続けています。加えて、TechNavio社の調査ではAIワークフローオーケストレーション市場が2024年から2029年にかけて年平均約32%で成長し、約140億米ドルの拡大余地があるとされています。
一方、上場後の株価形成に影響を与え得る要因として、VCの保有比率が挙げられます。提出日現在、ベンチャーキャピタルが保有する株式は公募増資前の発行済株式総数の23.1%に当たり、上場後の売却で需給バランスが崩れる可能性は有価証券報告書に明記されています。
調達資金は人材採用・教育、プロダクト開発、広告宣伝費に充当する予定です。
従業員111名、平均年齢33.5歳、平均年収652万円という規模感の同社が、「事業の成長を人の数で解決しない」という自らの理念を資本市場でどう体現していくのか。「SaaSの死」とも囁かれるAIの影響に焦点が当たる中での上場だけに、今後の利益成長の持続性と新規プロダクトの立ち上がりが焦点になると見られます。

