生成AIが報道の現場を揺るがすなか、日本を代表する新聞社のトップはどのような未来像を描いているのでしょうか。2026年3月18日に開催するMedia Innovation Conference 2026のキーノートに、朝日新聞社の角田克(つのだ かつ)代表取締役社長CEOが登壇することが決まりました。講演タイトルは「AI時代の新聞社経営 ~朝日新聞社が全振りするAI利活用の最前線」です。
角田社長は「AIに全振り」を宣言し、社内のAI活用を急速に推進してきた人物として知られます。昨年10月には「スーパージャーナリスト構想」にも言及し、業界内で話題を呼びました。講演では、同社が掲げる「トラストアンカー(信頼の錨)」の考え方を軸に、ジャーナリズムの現場におけるAI利活用の実践例が語られる見通しです。
新聞業界が構造的な変革を迫られるなか、朝日新聞社のAI戦略はどこまで進んでいるのか。その具体像に迫ります。
角田社長は1965年生まれ、群馬県出身。早稲田大学法学部を卒業後、1989年に朝日新聞社に入社しました。東京本社社会部長、人材戦略本部長、編集局長などを歴任し、編集・人事・経営の中枢を幅広く経験しています。2024年6月に代表取締役社長に就任し、2025年6月からはCEOを兼務しています。
同社のAI活用は組織的かつ実践的です。朝日新聞社は昨年9月に「AIに関する考え方」を公表し、社内ガイドラインも整備しました。「AI時代のジャーナリズム」をめぐる社内議論も本格化しています。角田社長の号令のもと、部署ごとのAI説明会が実施されたほか、AIによる業務効率化や新規事業のアイデアを社員が競い合う社内イベント「AIチャレンジ2025」も開催されました。トップダウンの方針表明にとどまらず、現場起点の取り組みを同時に走らせている点が特徴的です。
講演で注目されるのは、角田社長が提唱する「トラストアンカー」の概念です。生成AIの普及によって情報流通が加速し、情報過多がさらに進むなかで、「何が正しいのか」を示す報道機関の役割が改めて問われています。朝日新聞社はこの信頼の担保を経営戦略の中核に据え、AI活用とガバナンス構築の両立を目指す姿勢を打ち出しています。
また、昨年10月に角田社長が言及した「スーパージャーナリスト構想」についても、講演で踏み込んだ説明が期待されます。AIを活用することで記者一人ひとりの能力を拡張し、未来の記者像を再定義するというこの構想は、新聞社のビジネスモデルそのものに関わるテーマです。
Media Innovation Conference 2026は「メディアを楽しむ一日」をテーマに、赤坂インターシティコンファレンス(東京都港区)で開催されます。20以上のセッションや展示、ネットワーキングの場が設けられます。角田社長の講演は11時05分から11時55分の枠で予定されており、リアル会場とオンラインの両方で視聴可能です。参加費は無料で、事前登録制となっています。

