ブロックチェーンとトークンで誰でも稼げるメディアプラットフォーム「SteemIt」の蹉跌

ブロックチェーンとトークンを活用したメディアプラットフォームのSteemItが苦境に立っているようです。同サービスを運営するSteem Inc.はスタッフの7割をレイオフし、様々なコストカットを実施すると表明。ユーザーからは体制への不満も噴出。背景には、2018年の仮想通…

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ブロックチェーンとトークンを活用したメディアプラットフォームのSteemItが苦境に立っているようです。同サービスを運営するSteem Inc.はスタッフの7割をレイオフし、様々なコストカットを実施すると表明。ユーザーからは体制への不満も噴出。背景には、2018年の仮想通貨市場の低迷がありそうです。

SteemItは、独自の仮想通貨「STEEM」を軸にしたプラットフォームで、ユーザーが記事を投稿したり、その記事に他のユーザーからコメントが付いたり、評価を受ける事で、仮想通貨が得られるという稼げるプラットフォームです。「STEEM」は複数の取引所に上場しており、ユーザーは自由に換金する事が出来ます。広告に依存せず、ユーザーのコミュニティによって機能する新しいメディアの形として注目が集まっていました。

SteemItでは、様々な記事だけでなく、画像や動画なども活発に投稿され、プロジェクト自体への注目も集まっていたため、次世代のTumblr、Reddit、Instagram、あるいはMediumやnoteのような存在をトークンエコノミーで構築できるのではないかと期待が高まっていました。「STEEM」をコンテンツ制作者のためのトークンと捉えた、動画プラットフォームとしてDTubeなどサードパーティ開発者によるアプリ(DApps)も複数生まれていました。

苦境が表面化したのは11月末。共同創業者のNed Scott氏が突然、ブログにて、従業員の7割をレイオフするほか、サーバーコストの削減などの徹底したコストカットを実施する方針を明らかにしました。

同氏が挙げた要因は、仮想通貨市場の低迷と、ブロックチェーンのノード運用コストの増加です。

SteemItは広告が掲載されていません。しかしこのウェブサイトや、ブロックチェーンの運用はSteem Inc.がその大部分を追っています。同社の収入源は「STEEM」をユーザーが交換する際に入る手数料ですが、相場が低迷すると、法定通貨に換算した価値が減少し、会社の運営コストを賄えなくなります。

CoinMarketCapによれば、「STEEM」の取引価格は0.27ドル(12月30日現在)。最高値は6.5ドル(2018年1月)を付けていましたので、実に200分の1以下に減少したことになります。

「STEEM」の価格低迷はユーザーにとってもマイナスです。記事を投稿する際に貰える仮想通貨の価値が(法定通貨に換算すると)減少することになるからです。価格が上昇する局面では、プラスに働きますが、2018年のような相場では継続的なマイナスに働いていくことになります。ブロックチェーンを使ったプロジェクトはどれも多かれ少なかれ、この影響を受けたと考えられます。

一方、SteemItの蹉跌は単に相場の影響だけでも言い切れなさそうです。Ned氏のブログにはユーザーからのコメントが殺到しており、大半が運営に対する批判で占められていました。曰く、コミュニケーションが不足している、開発が遅々として進まない、マーケティングが上手く行っていない等、辛辣な言葉が並びます。誰もが参加でき、収益を受け取ることのできるメディアは何より大事なコミュニティで躓いてしまったようです。

Ned氏は「私達は依然としてSTEEMを信じており、継続した改善によって遥かに優れたものを生み出せると確信しています。まず生き残るために全ての施策を実施し、SteemItを運営し続け、素晴らしいコミュニティを作り、そしてミッションを実行し続けます」と述べています。苦境にありますが、ブロックチェーンを使ったメディアの新しいあり方を模索する意欲的なプロジェクト。進展がある事を期待したいと思います。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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