朝日新聞社は6月24日の株主総会で新体制を承認し、角田克代表取締役社長がCEO(最高経営責任者)として朝日新聞社と朝日新聞グループ全体を統括する体制に移行したと発表しました。同社がCEOの担務を設けるのは今回が初めてです。
中村史郎代表取締役会長は、俯瞰した視点から本社・グループ経営を支えます。中村氏は日本新聞協会会長として2期目に入り、協会の組織・財政改革を進めつつ、プラットフォーマー対応や生成AI対応など業界課題の解決をリードしています。
50代中心の将来を見据えた布陣に
取締役人事では、3人が退任し6人が新任となりました。新任取締役のうち、朝日広告社前社長の藤崎祥二氏と販売担当の石井武志氏が常務取締役に就任します。編集局出身の男性を中心とした構成を見直し、事業・販売分野で実務経験を積んできた人材が就任しました。
他に今回新たに選ばれた取締役は、メディア・ネットワーク政策担当兼社長室長の長谷川玲氏、コーポレート統括/管理・人材/働き方改革/コンプライアンス担当の宮田喜好氏、コンテンツ統括/編集担当兼ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長の坂尻顕吾氏、事業創出統括/アライアンス担当の穂積貴弘氏の4人です。いずれも50代半ばで、将来を見据えた布陣となります。
社外取締役はテレビ朝日ホールディングス代表取締役社長の篠塚浩氏、元Zホールディングス常務執行役員の本間浩輔氏が引き続き務めます。取締役は常勤10人、社外2人となり、これまでの体制より3人増えます。
社外監査役では、金子圭子氏と足立直樹氏が退任し、新たに坂井和則氏(TOPPANホールディングス代表取締役副社長執行役員CHRO)、伊藤麻里氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー弁護士)が就任しました。今回の人事で、取締役と監査役の平均年齢は59.1歳になります。東洋経済役員四季報2025年版によると、上場企業役員の平均年齢は61.0歳です。
また、常務執行役員も50代半ばを中心に構成。新たに常務執行役員になった野村周氏は、コンテンツ政策/デジタル事業担当兼コンテンツ・デジタル戦略室長として、朝日新聞ならではの報道・言論を発信していくため、デジタル版で工夫とチャレンジを重ねます。経営企画/サステナビリティ委員会/ジェンダープロジェクト担当兼コーポレート本部長の寺光太郎氏、不動産担当の田中悦二氏も常務執行役員となりました。
意思決定層の多様性を重視
朝日新聞社は、意思決定層の多様性を重視する方針です。4月の幹部人事で女性の管理職は150人、編集委員など専門職は91人となり、全体に占める割合は昨年4月の15.7%から18.5%まで上昇。女性活躍推進法に基づき、朝日新聞社が行動計画で掲げている「2026年春までに20%」という目標の達成が視野に入ってきました。
外部の知見を積極的に取り入れるため、M&A経験が豊富な執行役員の山川一基氏が事業戦略室長に就任したほか、グーグル合同会社で執行役員を務めた島本久美子氏が4月に本社の執行役員に就き、社長補佐として改革を推進しています。
角田社長CEOは「朝日新聞の存在価値、存在意義は、世のため人のため、平和でより自由でより民主的でより個人が尊重される社会の実現のための報道・言論です。報道への信頼の上に立って多彩な事業を展開する朝日新聞社とグループ各社が、時代の潮流を見極め、寄せてくる荒波を乗り越えていくためには、なによりもスピード、あるいは反射神経が大事で、この先を急ぐための布陣を考えました」と話しています。
50代中心の布陣と女性比率の上昇、外部人材の登用には、朝日新聞社の多様性と変革への意志が明確に表れていると言えるでしょう。新体制移行後の変化が注目されます。