「デジタルメディアに挑戦する人々の学びの場」としてMedia Innovation Academyを開設いたしました。7月18日(木)にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」をテーマとしたイベントを開催いたします。

登壇者でもある日刊ゲンダイのデジタル版編集長を経て、日刊ゲンダイ初の女性メディア「コクハク」を立ち上げた大原 将文 氏にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」についてお尋ねしました。

大原 将文  氏のご経歴は下記の通りです。

新卒で日刊現代に入社後、事件や政治記者と してTOP面を担当するなど、エース記者として活躍。日刊ゲンダイのデジタル版編集長に就任後は1億PVまでサイトを成長させる。 2019年2月に日刊ゲンダイ初の女性メディア「コクハク」を立ち上げた大原将文氏が『女性のお悩みを解決するオンラインサロン』を開設。https://a-port.asahi.com/salon/ohara/

―――これまでの経歴と簡単に自己紹介をお願いします

 2002年に株式会社日刊現代に入社し、夕刊紙・日刊ゲンダイの編集記者としてスポーツ編集部、政治・事件などを扱うニュース編集部を経て、デジタルメディア局に配属となりました。2013年6月から約5年半、「日刊ゲンダイDIGITAL」の編集長を任され、当初の月間400万PVから2年ほどで月間約1億PVの大規模ニュースメディアに成長させました。現在、日刊ゲンダイ初の女性メディア「コクハク」を立ち上げ、専任として従事しています。

―――現在、携わられているお仕事について教えてください

日刊ゲンダイ初の女性メディア「コクハク」

 女性メディア「コクハク」では、アラサーからアラフォーのオトナ女子に向けてさまざまな情報を発信しています。社員記者が大半の記事を書く日刊ゲンダイとは違い、コクハクは女性作家陣やライター陣、多くの女性が関心あるテーマに特化した専門家たちによって構成され、ニュースサイトというよりは、ブログを集めたメディアのようなイメージです。

 立ち上げにあたって、さまざまな方にお話をうかがった結果、女性のライフスタイルや恋愛傾向は想像以上に多様化しており、特定の年代や属性では括れないと判断しました。例えば、婚活市場もアラサーからアラフィフまで年齢層は広がっていますし、子育ても環境によって人それぞれ。そして、性に関するテーマもステレオタイプの男性とは違い多種多様で、女性からは切り離せない問題であると考え、多くの著名な女性作家陣に執筆を依頼しています。

―――なぜその仕事に携わることになったのでしょうか

 まず、実利的な面から。日刊ゲンダイは1975年の創刊以来40余年、サラリーマンを読者対象としてきました。しかし、日刊ゲンダイDIGITALを5年半やって分かったのは、広告における機会損失が想像以上に大きかったこと。

 日刊ゲンダイDIGITALでは女性読者が4割に達しているにもかかわらず(紙面は9割男性、女性1割)、女性向け広告がなかなか入らない。これは日刊ゲンダイが創刊以来作り上げた媒体イメージの強みでもあり、弱みでもあると思いました。いくらPVを上げても、男性向け広告は入れど、女性向けは入らない。これは市場の半分を逃しているなと……。

 紙メディア不況の折、既存の広告収益を大きく伸ばすのはかなり大変ですから、現在、全く手つかずの残り半分の市場、女性向けをフロンティアと考えたのが一つです。

 また、女性メディアを研究してみたところ、なんだかどこも似たようなサイトばかりで、あまり面白くない(笑)。日刊ゲンダイならではの切り口と鋭さを女性メディアにも持ち込めたら、面白いサイトになるのではないかと、そんなチャレンジ精神が一つですね。

―――その仕事の魅力はなんですか

 正直、40歳を超えたおじさんである自分に女性メディアをやれるのかという思いはありました(笑)。やってみたところ、女性編集部員4人がバックアップしてくれていることも大きいですが、大変ではあるものの、これが想像以上に面白いんです。男性は恋愛も性もステレオタイプで女性を見がちですが、女性は実に多種多様であることを、この年齢になって学びました。

 例えば、コクハクの連載には、モラハラ男による女性の被害体験談や、80代の老人男性に恋をしてしまった30代女性の話、子宮頸がんの宣告を受けて全摘出手術を受けながらも明るく生きる女性や、ピルの避妊目的以外の有用性を熱心に訴える女性と、さまざまです。間もなく、卵子凍結保存についての連載も始まる予定です。

 日常生活にしても、日焼け対策などの肌対策やコスメなど、男性には考えられないことばかり。女性はこんなにも多くのことを考えながら生活しているのか、と目からウロコと同時に畏敬の念さえ覚えました。実は、「プチプラ」という言葉を知ったのも、コクハクを始めてからです。女性にとっては当たり前のことでも、それくらい、男性は女性のことを何も知らない。それを知るきっかけになったのは、大きな魅力だと思っています。

―――メディアが果たすべき役割についてどう思いますか

 いまや誰もが勝手メディアや勝手ライターを名乗れる時代ですが、やはり本当のメディアはしっかりした取材と経験に基づき、高いクオリティーの記事を送り出さなければならない。

 また、これは日刊ゲンダイで培った精神ですが、常に権力と対峙し、監視し、読者に伝えること。不正を暴くために、時には相手の痛いところも突かなければなりませんから、当然、訴訟のリスクもあります。それでも、堂々と主張できること、それくらいに自信と誇りを持って仕事ができることがメディアの特性であり、役割だと思います。

 ただ、実際は記事にするたびに訴えられてはキリがありませんので、細心の注意を払い、丁寧な仕事をする。そうして、読者に提示し、判断を委ねる。寿司職人が魂を込めて握った寿司を、お客に出すようなイメージでしょうか。そうして、それを美味いと思っていただき、味の先にあるものを感じ取っていただく。これがメディアの役割だと思っています。

―――メディアのマネタイズ方法についてご意見を聞かせてください

 現在、メディアのマネタイズはすごく難しい状況です。とくに、紙メディアは部数減により販売収益モデルと広告収益モデルが完全に崩れてしまっている。必然的に、ネットメディアに進出するしかありませんが、ネットの広告単価はあまりに安く、これまでのように稼げません。

 そのため、PVやインプレッション数などに頼らない新たなマネタイズ方法が必要だと考えています。実際、サイト全体のPVやインプレッション数はクライアント側にとっては広告出稿の費用対効果が見合うのかどうかという疑問も生じています。ならば、例えば、そのサイト特有あるいは、もっと言うと、執筆者それぞれの固定ファンを囲い込み、そこに企業の協賛を入れてもらうなど、新たなマネタイズ戦略が必要になってきている時期なのではないかと思います。

―――メディアの運営のコツについてご意見を聞かせてください

 運営のコツというと難しいですが、まずは日々更新するコンテンツの質と量。これは絶対だと思います。これがないと、メディアとして成り立たないですよね。そして、それを維持するための執筆体制。さらには、それを継続的に円滑に回していくための編集体制でしょうか。

 極論を言ってしまうと資金力、人脈、オペレーション――。これらを用意できるメディア企業および編集者が必要になるかと思います。

 Googleのたび重なるSEOアルゴリズム変更で、個人メディアの運営はますます難しくなっていますから、組織力がメディア運営のコツになっているのではないでしょうか。それでいて、今後のキーとなるのは、インフルエンサーのような個人であったりもするので、うまく取り入れられることが今後のメディアとして生き残るコツなのかなと。

 しかし、実際、コツがあるのなら教えてほしいというのが本音ですけどね(笑)。

―――メディアの新規事業についてご意見を聞かせてください

 メディアの新規事業については、ほとんどの企業やその経営陣が期待をしつつも、マンパワーを割けない、割く余裕がないのが現状だと思っています。いま運営しているコクハクも、信じられない少人数でやっているのが現状で、それは仕方のないことでしょう。マネタイズが上手くいくかどうかは、やってみなければわからないからです。

 メディアの新規事業を任される方は今後ますます、具体的なビジネスモデルと収益化の計画を求められるでしょうが、どんなに可能性のある計画でも、会社のバックアップがなければ成功は不可能です。新規事業、こればかりはやってみないと本当にわからない。収益性が最初からわかるなら、どの会社だってやっています。先行者利益も得られないでしょう。

 企業や経営陣には、可能性を感じたらぜひ資金や戦力の投入を英断してもらいたい。それができるかどうかが社員同様、今後の会社と経営陣の評価につながると思います。

―――メディアの未来はどうなっていくと思いますか

 実は、紙メディアの間では、もうかなり以前から“どこそこがそろそろ危ない”“近く潰れるんじゃないか”などと盛んに言われ続けてきました。メディアの合従連衡が一気に進むのでは、とも……。しかし、実際は一向にそうはならない(笑)。

 疲弊した紙メディアは今、ウェブメディアを雨後の竹の子のように立ち上げ、生き残りを図っています。これは、メディア立ち上げのコストが既存メディアに比べて圧倒的に安いためです。社員の給与カットとウェブメディア乱立で、採算ラインの様子を見ている状況だと思います。

 当面はこの傾向が続くのではないかと思っています。紙メディアはもともと給料がかなり高いため、多少の人件費削減でもまだ踏ん張れるのです。そして、ウェブメディアで収支ラインが合えば、それでしばらくいくのだろうと。

 ただ、メディア乱立によって書き手の需要は増していますが、原稿料はなかなか上がらない傾向にあります。これが続くと記事の品質の低下も招きますし、それは、メディア全体にとって良い結果にはならないと思っています。

―――イベントにいらっしゃる方々へのメッセージをお願いします

女性のお悩み解決!恋と性とキャリアのお悩み解決サロン

 今回のようなメディアの話や編集・記者としてのスキルについてのリアルトーク、また、いま携わっている女性メディア「コクハク」やその個性豊かな執筆陣とのトークイベントを定期的に行いたいと思っています。大原将文オンラインサロンにご入会いただければ、折に触れてこのようのなイベントの機会やコミュニティーと通しての情報交換を取りたいと思っているので、ご興味のある方は、ぜひご加入ください。よろしくお願いいたします。

Media Innovation Academy #1 業界TOPリーダー18名が集結!メディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」研究会

株式会社イードが運営するMedia Innovation が、「デジタルメディアに挑戦する人々の学びの場」としてMedia Innovation Academyを開設いたしました。リアルな交流、協業が生まれることを目的としており、オンライン、オフライン合わせたコミュニティを形成していきます。

今回のイベントは下記18社の方々に5分ほどプレゼンいただき、その後、メディアの「マネタイズ」「新規事業」「運用」をテーマに、座談会を実施いたします。

アドテクノロジー、テレビ・雑誌・新聞のデジタルメディア、メディア業界のオープンイノベーション、メディア担当者が知っておくべきマーケティングのテクノロジー、ブロックチェーンなどの新規ビジネス、メディア起点の横展開、顧客データを活用したメディアビジネス、海外メディアの動向、カテゴリー特化のバーティカルメディア、インフルエンサービジネス、メディアが行うオンラインサロン、メディア業界の再編ファンド、など、盛り沢山の内容でお送りいたします。

■概要
日時 2019年7月18日 (木) 19:00 – 22:00
会場 Speee Lounge:〒106-0032 東京都港区六本木4-1-4 黒崎ビル4階
  (東京メトロ日比谷線、都営大江戸線六本木駅、4a、6番出口から徒歩7分)
主催 株式会社イード/ 株式会社メディアインキュベート

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション(18社)
20:30 パネルディスカッション
21:15 懇親会(軽食とドリンクを用意します)
22:00 終了

チケットはPeatixで販売中です