採用時にSNS投稿をチェックする企業が増加、ソーシャル利用はどうあるべきか?

世界中の企業が新型コロナウイルスのパンデミックのために業務停止を余儀なくされましたが、現在ゆっくりと経済が再開し始めています。そんな中、2020年卒の学生たちは社会に出るためにプレゼンのスキルを磨き、履歴書をブラッシュアップしています。しかし、履歴書は他…

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本記事はThe Conversationに掲載された、カナダののRyerson Universityでソーシャルメディアデータ管理を専門とするAnatoliy Gruzd教授とJenna Jacobson教授とカナダのUniversity of Ottawaでコミュニケーション学を専門とするElizabeth Dubois教授による記事「Companies are increasingly turning to social media to screen potentialemployees」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

世界中の企業が新型コロナウイルスのパンデミックのために業務停止を余儀なくされましたが、現在ゆっくりと経済が再開し始めています。そんな中、2020年卒の学生たちは社会に出るためにプレゼンのスキルを磨き、履歴書をブラッシュアップしています。しかし、履歴書は他の求職者との相対的な競争力を高めるのでしょうか?

その答えは意外なものかもしれません。デジタル化された今日の世界では、何百人もの候補者の中で目に止まる存在になるには、履歴書だけでは十分ではないのかもしれないのです。

世界中でソーシャルメディアの使用が増加しているため(特に今は#socialdistancingの時期であるため)、多くのリクルーターや採用担当者は、候補者を見つけ、審査するためのリアルタイムのデータがすぐに入手できるソーシャルメディアに注目しています。

ソーシャルメディアは、雇用主が求職者の資格をチェックしたり、責任感や信頼性を評価したり、ネガティブな属性を明らかにしたり、問題のあるコンテンツを投稿していないかどうかを判断したり、「適合性」を評価したりするために使用されています。

求職者のスクリーニング

私たちは、求職者をスクリーニングするためにソーシャルメディアを利用している雇用主に対するソーシャルメディア利用者の反応を調査しました。主に米国とインドの参加者454人を対象にオンライン調査を実施し、カナダでは青少年482人を対象に追跡調査を実施した。

これらの研究では、誰もがアクセス可能なソーシャルメディアプラットフォームから収集できる様々な種類の情報に関連して、人々のソーシャルメディアを利用している雇用主に対しての抵抗感のレベルを比較しました。様々な情報には、何をいつどのように投稿したかというライブデータやメタデータの情報を用いました。例えば、応募者の投稿のセンチメント分析やトピックモデリングの結果など、処理を必要とする分析情報、そしてソーシャルメディア上で誰が誰をフォローしているかなど、ソーシャルネットワーク分析によく使われるユーザーのオンラインソーシャルネットワークに関連する情報です。

プライバシーへの期待

その結果、ソーシャルメディアユーザーのプライバシーへの期待は、雇用慣行の文脈の中では、雇用主と求職者の間で微妙な違いがあることが明らかになりました。ある人は、文脈かつデータへのプライバシーへの期待を持っていました。ソーシャルメディアプラットフォームが個人情報を収集し、同意なしに共有することを懸念している人は、たとえそれが公開されていたとしても、第三者が求職者を審査するためにソーシャルメディアのデータを使用することに抵抗感を感じているのです。

一方で、このような慣行を肯定的に考えている人は、ソーシャルメディアプラットフォームが自分の情報を正確でない形で認識しているかもしれないことを懸念しています。これは、プライバシーを気にしているにも関わらず、企業がこの慣行に取り組んでいることを認識しているという現象である「デジタル退職」の兆候かもしれません。ソーシャルメディアユーザーは、オンライン情報源から収集した自分の情報が正確であることを確認したいと思っているかもしれません。

抵抗感のレベル

また、求職者が必ずしもソーシャルメディアを用いたスクリーニングを肯定的に捉える訳ではないことも明らかになりました。また、性別と抵抗感のレベルには有意な関係性はありませんでした。今回の調査の結果は、雇用形態や性別に関係なくソーシャルメディアでのスクリーニングに対する期待や懸念が存在することを示しています。

この調査の結果は、求職者のスクリーニングにソーシャルメディアを利用している雇用主や採用担当者が、ソーシャルネットワーク関連情報(友人リストや友人間のつながりなど)など、応募者がより敏感に感じていると思われる情報の種類を認識しておく必要があることを示しています。

また、私たちの調査は、雇用者が採用活動を人々の期待に沿ったものにすることの重要性を示しています。求職者がソーシャルメディアを利用していることに抵抗感を感じる場合、スクリーニングを行なっている企業は能力のある人材の採用機会を失う可能性があります。

また、入社後にソーシャルメディアによるスクリーニングが行われていることを知った場合、信頼を失う可能性もあります。ほとんどの国ではスクリーニングを行なっている会社に対して規制は行われていませんが、会社はスクリーニングを行う場合には積極的にその旨を表明し、どのようなソーシャルメディアを審査するかの概要を説明し、その情報がどのように使用されるかを説明すべきでしょう。

倫理的な雇用慣行は重要であり、このように透明性を保つことは、次の世代の学生や従業員に目標の仕事に就く機会を公正に与えるための第一歩なのです。

《The Conversation》

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