中国で5億人以上のユーザーを抱える音声配信プラットフォーム「Himalaya」。膨大な数の配信者が参加し、様々な収益化手段が提供されており、トップは年間数億円を稼ぐプレイヤーも登場してきているそうです。

その「Himalaya」を日本で展開するのが、中国の喜馬拉雅(シマラヤと発音する)の日本法人であるシマラヤジャパンです。同社はヒマラヤ山脈に由来し、中国語読みのシマラヤから取っていますが、日本向けには日本人が読みやすい「ヒマラヤ」としたそうです。

シマラヤジャパンは2017年3月に設立され、日本でも順調に配信者数、ユーザー数を伸ばしてきているそうです。同社を率いる安陽CEOに日中の音声配信プラットフォームの状況、サービスの現状について聞きました。

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―――最初に自己紹介をお願いします

大学は中国外交部に所属している、外交学院という大学で日本語を勉強しました。卒業後は日本企業でクラウドホスティングを提供しているクララオンラインの北京支社に入社して、当時次々に中国進出を果たしていた日本のソーシャルゲームメーカーに対して営業活動をしていました。その後、Weiboのマンガ事業を行う法人を日本に立ち上げるということで、カントリーマネージャーとして日本に来ました。Weiboではマンガやアニメ、映画などの版権取得や共同制作などに携わりました。シマラヤジャパンには2018年10月に2代目のCEOに就任しました。

―――「Himalaya」はどのようなサービスなのでしょうか?

Himalayaは中国で2012年に立ち上がったサービスで、現在までのダウンロード数は5.3億で、月間のMAUは1.1億人、日間のDAUは2600万人、配信者数も600万人に上ります。アクティブユーザーの平均の視聴時間が124分という長時間というのも特徴です。第三者の調査では中国での音声配信プラットフォームでのシェアは73%だということです。運営会社は中国のユニコーン企業(時価総額が1000億円を超える未上場企業を指す)の一つです。

―――なぜこれほどの成長を遂げたのでしょうか?

音声配信プラットフォームとして先発だったというのと、我々が初期から版権の重要性に気付いていたというのが大きいと思います。というのも、中国では権利侵害の問題が大きいのですが、ユーザーもこれを避けて健全なプラットフォームを利用するようになってきています。我々は初期からきちんと版権を取得して、音声化をした作品を提供し、これが人気を集めてきました。

特に中国で人気を集めている小説投稿サイトと提携し、そこで誕生してくる膨大なライブラリを音声化していきました。

制作は仕組み化されていて、権利を取得した作品リストが常にプラットフォーム上で提示されていて、Himalayaに登録している配信者は、誰でも好きにその作品の音声化にチャレンジできます。その後、集まったサンプルから、ユーザー投票で本格的にその作品に取り組んでいく配信者が決定されます。選ばれた配信者は1時間あたり80-100元(約1300-1500円)程度の制作費が支払われるほか、コンテンツ販売のレベニューシェア(10%程度)を受けることもできます。公募することで、やる気があって優秀な配信者が集まり、貴重な版権を最大限活かすことができる仕組みです。

私も冒険物の小説が好きだったりするのですが、400~600万字くらいの長編も多く、それを文章で読むのはなかなか大変です。でも音声で、ながら時間に聴くととてもフィットするんです。

―――なるほど。レベニューシェアということは、収益化の環境が整っているということですね

中国では音声に限らないのですが、「ナレッジシェア」(知識の共有)という文脈で、きちんとした文章、映像、音声に対してはお金を払うという文化が浸透しています。ですので、Himalayaの中でも、番組視聴に対する課金はもちろんのこと、ユーザーからの投げ銭、ネットワーク広告のシェアというように複数の収益化手段が実現しています。

中国では「オーディオブックの日」(4月23日)、「会員の日」(6月6日)、「知識祭り」(12月3日)などのイベントを行っていて、その日は有料コンテンツを半額にするというキャンペーンを行っていますが、特に一番盛り上がる12月3日には昨年、1日だけで日本円で約70億円の売上がありました。一昨年は32億、その前は8億ほどでしたので、どんどん規模が拡大しています。

―――トップの配信者はどれくらい稼ぐものでしょうか?

いま1位の配信者は大学生の頃から小説を読んでいた紫襟という人がいて、彼は毎月のレベニューシェアが260万元(約4100万円)を超えています。年間の支払額が1000万元(約1.6億円)を超える配信者は20~30人はいると思います。

―――ここからデビューしてアナウンサーになるような人もいるのでしょうか?

逆ですね。テレビなどで活躍していたアナウンサーが辞めてHimalayaなどのインターネットのプラットフォームで活動するようになる、というのが中国では主流です。そもそも、バラエティ番組のような習慣が余りなく、テレビ番組を視聴する人が減っています。家のテレビを点けるとしてもインターネットテレビを観るため、という風になっています。活躍した際に稼げる金額も桁違いですしね。

―――日本での状況はどうでしょうか?

私が2018年10月に就任したのですが、元々日本ではポッドキャストのプレイヤーという立ち位置で活動をしていて、Himalaya上のオリジナル作品はポッドキャストのコンテンツより少なかったです。(※)。ただ、徹底的に調査をしたのですが、日本で配信されているポッドキャストは3300作品ほどありましたが、きちんと運営されていた番組は300作品ほど。好きな人が頑張ってやっているけど、収益化手段もなく、力尽きて辞めてしまうというのが頻発していました。それを考えると、単に公開されているポッドキャストを聴けるだけのプレイヤーでは未来が無いと考えました。

※ポッドキャストの仕様は公開されていて、音声ファイルをサーバーに置き、その情報を記したRSSを公開するというシンプルなもので特定の再生プレイヤーには紐付いていない。Himalayaも当初は、一般的に公開されているポッドキャストを聴けるアプリだった。

そこでフォーカスしたのがクリエイター支援です。全ての配信者にコンタクトを取り、改めてHimalayaというアプリ上でも視聴できるようするという同意を貰い、Himalayaとしてどのような支援ができるかというディスカッションをしていきました。その結果として提供しているのが、以下の3点です。

・フリーホスティング
ポッドキャストで必要になるサーバーをHimalayaが無償で提供する。そこで公開するポッドキャストはHimalaya独占にする必要はなく、アップルの「Podcast」アプリなどでも聴ける状態にすることができる。

・高性能な録音機能
Himalayaのアプリ単体で、高品質な音声を録音し、すぐに配信できる環境を整えている。現在はボイスチェンジャーなどの付加機能を早期に日本市場に投入できるように進めている。

・スタジオ機能
配信している番組のユーザー数、再生回数、地域、再生完了比率など番組改善に必要な情報を提供するダッシュボード。

これらを通じてクリエイターの支援にフォーカスをしていて、素晴らしい番組が増加すれば、視聴者も自然に増えるという風に考えています。実際、現在配信されている約1000の番組のうち8割はHimalayaオリジナル番組になっています。ニッポン放送、吉本興業、ホリプロ、オスカーなど著名なプロダクションや有名人、YouTuberなどにも配信してもらえるようになっています。

20日には絵本ナビの絵本の読み聞かせなどを有料配信することを発表している

―――人気の作品はどのようなものが多いですか?

数字を見ていると、現在のユーザー層は圧倒的に男性のビジネスマンで、ビジネス系の番組の人気が高いです。

ただ中国では男女比率は1:1で、男性はビジネス、IT、ファイナンス、アドベンチャー、ホラーなど、女性は恋愛、自己啓発、教育などが人気になっているので、普及していくと幅広い番組が聴かれるようになっていくと思います。また、中国では子供向けの作品も人気があり、シマラヤ本社は既に12歳以下対象の子供版のサービスを提供しており、Himalayaも今後子供向けのサービスを提供しようとしています。

―――日本でも収益化の手段を提供しているのでしょうか?

夏頃を目処にプレミアム機能の提供を予定しています。まずは投げ銭機能から実装していき、興味を持ってくれる配信者を募っている状況です。中国で実装されている機能に関しては日本でも中国同様に収益化拡大の可能性があると思いますので、順次揃えていきたいと思います。日本でもHimalayaだけで生計を立てられるようにしていきたいですね。

―――今後どのような展開を構想されていますか?

日本のチームはまだ10名をようやく超えたところですが、中国では多くの開発陣が毎月2回のペースでアプリのバージョンアップを投入しています。日本でも積極的な機能追加を予定していますので、どんどん良くなっていくと思います。

それから、いま言ってるのは「新声活」(しんせいかつ)ということで、音声を起点に、自分の価値観を表現するような人がもっともっと増えていって欲しいなと思っています。日本ではまだ音声を聴くという文化を啓蒙している段階ですが、米国で一つの作品の大ヒットがポッドキャストの流れを作ったように、日本でも爆発の起点がどこに埋まっているか分かりません。その時に備えて準備を進めているところです。

(編注)5月20日には絵本ナビと協力して絵本の読み聞かせなどを有料配信することを発表しています

特集: 音声とメディアの未来

5人のキーパーソンが登壇するイベントは5月22日(水)開催

今回の特集に登場する5名から直接話しが聞ける「Media Innovation Meetup #4 音声とメディアの未来」は5月22日(水)の開催です。

終了後には軽食と飲み物を用意した懇親会も実施します。

※Peatixの画面より領収書の発行が可能です
※当日は名刺を1枚お持ちください(ない場合は結構です)

■概要
日時 2019年5月22日(水) 19:00~22:00
会場 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-9 第一光明堂ビル 9F TIME SHARING 四谷 ※四谷三丁目駅から徒歩2分
主催 株式会社イード
入場料 3,000円

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社Voicy 緒方憲太郎 代表取締役CEO
    Radiotalk株式会社 井上佳央里 代表取締役
    シマラヤジャパン株式会社 安陽CEO
    ロボットスタート株式会社 中橋義博 代表取締役社長
    株式会社オトナル 八木太亮 代表取締役社長
20:20 パネルディスカッション
21:00 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
22:00 終了

■チケット
チケットはPeatixで販売中です。

※Media Innovation Salonの会員様には1000円引きとなるクーポンを配布中です。ぜひ参加をご検討ください。

https://media-innovation.jp/2019/04/26/media-innovation-salon-open/