「デジタルメディアに挑戦する人々の学びの場」としてMedia Innovation Academyを開設いたしました。7月18日(木)にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」をテーマとしたイベントを開催いたしました。

登壇登壇者でもある株式会社フジテレビジョン総合事業局コンテンツ事業室副部長 兼報道局 兼広報局の清水 俊宏 氏にメディアの「マネタイズ」「運用」「新規事業」についてお尋ねしました。

清水 俊宏 氏のご経歴は下記の通りです。

株式会社フジテレビジョン総合事業局コンテンツ事業室副部長 兼報道局 兼広報局
2002年入社。政治部記者として小泉首相番などに従事したのち、新報道2001ディレクター、選挙特番の総合演出、ニュースJAPANプロデューサーなどを歴任。現在は『FNN.jpプライムオンライン』(https://www.fnn.jp/)のチーフビジョナリストとしてニュースメディア戦略の責任者を務める。NewsPicksプロピッカーやラジオ出演など社内外で活動する。

―――これまでの経歴と簡単に自己紹介をお願いします

2002年にフジテレビに入社し、報道局に配属されました。政治部記者のほか、番組ディレクターやプロデューサー、総合演出など様々な形でテレビ番組作りを経験してきて、2015年からはデジタル関連の仕事をメインにやっています。趣味は旅で、仕事でもプライベートでも国内外問わず出かけるのが大好きです。

―――現在携わられているお仕事について教えてください

メインでやっているはFNN.jpプライムオンラインというオンラインメディアで、チーフビジョナリストとして携わっています。サービスの方針を作ったり、対外的に発信したりするのが主な役割です。「新しい時代の伝え方を作る」をミッションに掲げているので、VR・ARや脳波に関する企業などと、どういうことが出来るのか議論したりもしています。他にも国内外のカンファレンスに参加したり、様々な方と会ったりして、どういうビジネスが出来るのかを日々ディスカッションしています。

サービス面だけでなく、私自身は、取材に行ったりVTRを作ったりするのがとても好きで、先日はBSフジで30分番組を作りました。自分で企画して、カメラを抱えて取材して、原稿を書いて、映像を編集して、プレスリリースも書いて。プロデューサー兼ディレクター兼ADですね。

政治部の記者をやっていた時に強く感じたのが、テレビは当たり前ですが24時間しかない、ということです。記者は取材をして伝えたい情報や映像をたくさん持っていますが、放送という時間的な枠もあり、出すことができなかったものもかなりあります。オンエアで出せなかっただけで本来価値のある映像もあるし、知りたい視聴者がいただろうなと思う情報もあります。

メディアとしては、テレビはまだまだ強いし、いま起きていることや情報の流れを知るにはテレビが便利だと思います。ただ、デジタルには「枠の制約がない」という強みがあります。

テレビで情報を知って、デジタルでさらに知る。そんな連携が出来ます。また、デジタルで最初に接点を持って、テレビでまとまった情報を見る、という連携も出来るでしょう。それぞれの特性を生かせば、様々な可能性が広がります。

デジタルではテレビの延長線上でやっても仕方がないと思います。これまではテレビコンテンツばかり作ってきた私のような人間は社内に多いですが、デジタルとテレビの両方を知ると、新しい表現が出来ると思って面白がる人も多いです。

これまでにないような新しい伝え方や最高のコンテンツを創るのは、ものすごい情報量や企画力、取材力などが備わったテレビ局こそできるはずだと信じています。テレビの仕事はますます忙しく、面白くなっていきます。

―――何故その仕事に携わることになったのでしょうか?

当時の報道局長が、これから報道もデジタルを本格的にやりたい、との方針を示し、そのリーダーとして私が指名され、コンテンツ事業局(現・総合事業局)に異動しました。

ただ、テレビ報道一筋だった人間が、いきなりデジタルをやれ、と言われても何をしていいのかわからない。そこで、優秀な仲間をたくさんつけてくれました。

今の部署には、デジタルに詳しいメンバーはもちろんですが、ドラマ出身やバラエティ出身、スポーツ出身、アナウンサー出身など同じ会社でも全然育った文化の違う人がたくさんいる。他の会社から転職してきた人もたくさんいて、自分にはない考え方を持っている。本当に話しているだけでワクワク感がいっぱいでしたし、今でも学ぶことだらけです。

―――その仕事の魅力は何ですか

テレビ局の仕事は「映像を作ること」「情報を伝えること」だと思われがちです。もちろん間違ってはいませんが、それは本質ではありません。テレビ局の仕事は、動画をメインとしたコンテンツを通じて、ユーザーの驚きや感動などを呼び起こすこと。そのために、テレビという箱を使って、映像や情報を届けているんです。

私は民放連の委員もやっていて、その活動でイギリス視察に行ったのですが、イギリスのテレビ局の人はみんな明るい。とある調査会社に話を聞いたら「テレビのプラチナ時代(The Platinum Age of Terevision)」なんて言っていました。

イギリスのテレビ局は配信サービスが進んでいて、放送以外のビジネスモデルなどを次々と生み出しています。テレビ局が、テレビ以外の分野に出て行くのだから、プラチナ時代にほかならないわけです。

テレビ単体でやっていても仕事は面白いです。黒船といわれるような動画配信会社もたくさん来ているので危機的な状況なんて言う人もいますが、テレビ局のやれる事はたくさんあります。

インターネット広告費がテレビ広告費を抜くなんてニュースになっていますが、インターネットの世界は広告を無限に出せるので、枠に限りのあるテレビが抜かれるのは仕方ありません。確かに「インターネットVSテレビ」と考えると、危機的に見えるかもしれません。でも、よく考えてみれば、放送局がデジタルにいくことはできますが、デジタルで立ち上がった会社は放送にはいけません。

テレビ局は、テレビの市場を維持しつつ、どんどん大きくなるインターネットの市場にもうまく入れれば、チャンスしかないわけです。

こんなに楽しい時代はありません。少なくともフジテレビという会社は、面白いことをやらせてくれる環境があるので、やらないと損だと思っています。

新しい時代の伝え方を創るためには、このタイミングでやるべき事を考えて、長期的な視野を持たなければいけません。

―――メディアが果たすべき役割についてどう思いますか

今のテレビは「花咲かじいさん」に似ていると思っていて、これからは「進化した花咲かじいさん」にならなければいけないと考えています。

花咲かじいさんが灰をまけば、枯れ木に見事な花が咲きます。本物の美しい桜を咲かせ、見る人たちを感動させます。お殿様からは褒美ももらえました。きちんと正直にいいものを作っていたからです。

枯れ木に花を咲かせるプレイヤーが他にいないときは、灰をまくだけでよかった。

しかし、時代が進み、偽物の造花を大量生産する業者が周囲にたくさん出てきました。「どんちゃん騒ぎをするだけだから、本物の桜ではなくても別に構わない」なんていう若い世代もたくさんいます。

そんな人たちに「花見は本当の桜でやらないとダメだ」「こっちが最高品質だ」と言ったって、来てもらえるはずがありません。

そこで、花咲かじいさんは何をすべきか?本物の桜を作ることをやめて、効率重視で粗悪な造花を作る方向に転換するべきか?そんなはずはありません。考えるべきは、最高の桜を楽しんでもらうためにどうするか、です。「花より団子」という人に来てもらうきっかけを作るために、本物の桜の下で団子や桜餅を販売した方がいいでしょう。来てくれた人の周囲で話題になるよう、お土産用に桜の花びらのしおりを作って、持って帰ってもらうのもいかもしれません。コンサートでも開いて、長時間滞在してもらいましょうか。そうそう、スマホで楽しめるようにライブ配信も忘れちゃいけません。

いろんなところにマネタイズのポイントがあるし、コンテンツとのタッチポイントも増えて「やっぱりサクラって最高だよね」と思ってもらえる可能性が高まる。そういった、これまでのモデルとは違う「花咲かじいさんの進化」が必要なんです。

テレビだって同じです。いろいろな展開をすることで新しいビジネスが生まれる。自分たちの本質を大切にしていれば、新しいことをどんどんやっていけると思います。

私が新入社員のときの研修で、「テレビって、どんなに頑張っても24時間しか売り物がない。だから、それ以外で売れるものを考えなきゃいけない」と言われたのを覚えています。そのときは「そんなものかなぁ」と深く考えてもいなかったのですが、いまはよくわかります。

フジテレビが元気だと、世の中が楽しくなるとさえ思っているんです。

少なくとも、フジテレビの今の部署は出来ることが本当にたくさんあるので、新しいことに挑戦するのをさぼってはいけない、と思っています。