BULK HOMMEやMEDULLAなど、注目を集めるD2Cの化粧品ブランドの製造を一手に引き受け、こうしたブランド躍進の立役者になっているOEMメーカーがあります。それが、1999年創業のサティス製薬です。OEMメーカーとしては後発ながらもその開発力と、独自の戦略で化粧品のOEMメーカーとして急成長しており、業界内でも注目を集めていますが、そのサティス製薬の山崎智士代表取締役社長にインタビューをさせていただきました。

―――サティス製薬のOEMの強みは?

サティス製薬は創業時は研究開発を中心としており、最初に創り上げた技術は皮膚アレルギーやアトピーの方でも使える「低刺激性の皮膚洗浄剤」でした。当時、刺激が少なく機能が高い石鹸は世の中になかったので、大手の製薬メーカーや化粧品メーカーに採用されました。こうした開発力が当社のDNAであり、今も当社の強みになっています。

化粧品のOEMメーカーは日本で300社くらいありますが、当社は後発にもかかわらず15位くらいにきています。OEMでこれまで我々が創り出したブランドは、約600件以上あります。これは業界大手のOEMメーカーでも200種類くらいなのでその3倍あり、ゼロイチで創り上げたブランドの数という観点では日本トップクラスだと自負しています。

こうしたOEMで関わっているブランドの特徴は2軸あり、一つは既存商品の改良ではなく、0→1のブランド・新商品の開発であること、二つ目はD2Cのブランドであることですね。

――― どうしてD2Cに注力するのでしょうか?

D2Cブランドが面白いと思うのは、そのビジネスの選択肢の自由度の多さですね。従来の店舗型で販売する化粧品の場合、そのコスト構造に制限があり、商品設計の段階でできることの限界があります。

例えば、店舗型で販売する化粧品の場合、卸売りなどを経由してユーザーの下に届くので流通コストが高くなってしまいます。そのため化粧品を開発する場合にも、原価(中身+包材)が10%を切ってしまったりもします。

一方、D2Cの場合であれば、コスト構造の自由度が高く、例えば商品原価率もブランドの考え方次第で高くすることもできますし、通常であればビジネス上作ることができない商品も検討することができます。D2Cでは従来のコスト構造などに縛られる必要がないので、事業を行う人の価値観や思想などを反映した商品を作りやすいというのが面白い点ですね。

私たちは、単なる製造メーカーとして受託を行うという形ではビジネスを捉えていません。私たちにとって、ブランドは事業のパートナーなので、よりビジネス全般についても一緒に組み立てていこうという意識が強いですね。

また、D2Cブランドは、直接自らのサイトで販売を行っていきます。そうすると、多くのユーザーのデータが集まってくるので、素早く、そして正確に品質のPDCAを回しやすくなっています。PDCAを回すことで、より最適化された商品開発へと育まれ、ユーザーに優位で感動的な体験を届けることができます。それは私たちのビジョンに適っており、よりユーザーと近い目線で商品開発ができ、ユーザーの声を商品に反映することが出来ます。

通販会社の中にはモールに出店する企業も多いですが、やはり自社サイトを通じた販売を行っているかどうかは大きいですね。D2Cブランドにとっては、ユーザーとの間の関係性作りが重要です。そのブランドを好きになってもらって、リピートする仕組みが必要になるので、ブランディングをしっかりできてるかどうかが必要になってくるのですよね。そのため、D2C=双方向のコミュニケーションが可能、はブランディングを最も行いやすい形態だと思います。

――― OEMメーカーだからこそ可能なD2Cブランドのサポートはどういうものがありますか?

私たちは、単に製品を作るだけではありません。600社のOEM製造を行っているからこそできることもあります。例えば、D2Cブランドが成功するためには、バックエンドの物流コストなどフルフィルメントが重要になります。物流コストを下げるには物流会社との交渉が不可欠です。ブランド一社で物流会社と交渉をするのは難しいですが、600社のブランドを顧客に持つ当社であればそういう交渉もしやすくなります。

また、マーケティング施策についてもうまくいった施策、失敗した施策のKPIデータも集まってきます。ブランドに対して、過去の様々なデータに基づいたアドバイスも可能です。こうしたノウハウはできるだけシェアしていった方が各ブランドが成長しやすくなるので、ビジネスプランやマーケティングの相談も積極的にのっています。

生産管理も重要なサポートの一つです。化粧品のブランドにとって在庫はB/Sを悪化させる要因となります。生産管理はさまざまな変数から成り立っており、未経験でスタートアップしたブランド側でそれを管理するのは難しい、というか不可能に近いです。ここも、様々なブランドの製造をしている当社だからこそ、ジャストインタイムの生産管理ができ、不要な在庫をできるだけ持たないようにブランドをサポートすることができます。

経営者が在庫に悩んでいるのは本当にもったいないと思っていて、経営者はマーケット活動に向き合い続けるべきです。需給予測を失敗したばかりに、在庫を抱え過ぎてしまったり、広告などでコストを懸けて集客したのにも関わらず、欠品で売るものががないというのは耐えがたいことです。そのためにも、私たちが需給予想などの強みとなる部分を担い、心理的サポートもしていきたいと思っています。

一緒にやるかを決めるのに、重要なのは理念。

―――どういったブランドと組んでいくのでしょうか?

数あるブランドの中でも実際に一緒にビジネスをやるブランドは一部です。新規製造の依頼はたくさんくるのですが、現状の生産力は無限ではないので、その中でもどこの仕事をうけるかどうかは選択していかなければなりません。一緒にやるかどうかを決めるポイントは、その起業家のもってる理念ですね。私たちも、女性の美しさをサポートしたい、という想いでこの会社をやっています。

自社ブランドを持たないのも、この想いからです。ブランドシェアには限界があり、一つのブランドに固執するのでは、「一人でも多くの女性に正しい綺麗を届ける」ことはできません。OEM×D2Cという手段を用いることで、多様なブランドが共創でき、多様なマーケットで価値を創造するができると思います。

サティス製薬という会社が、「D2Cに強い」と認知を得るのは嬉しいですが、それがビジネスライクに、儲かりやすい事業をサポートしていると思われるのは心外です。私たちは皮膚を美しくする使命に対して、ひたすらに純粋な会社で、これを何より大切にしていきたいと思っています。

やはり、ビジョンや想いがないプロダクトは今後生き残っていけないと思っています。ブランドを作っていくには、ちゃんとした世界観やストーリーが必要であり、これらを消費者に対して伝えていかなければなりません。その際に経営者のビジョンがブレていると、こうしたストーリーもブレてきて、言行一致ができず、消費者に届かないプロダクトができてしまいます。そのためにも、やはり芯のあるブレない経営者がブランドの成長にはかかせません。

特集: D2Cは消費とコミュニケーションをどう変えるか

  1. 日本のD2Cブランドカオスマップを大公開!アパレル、ファッション、フードなど幅が広がる
  2. メディア運営がD2C事業参入への鍵だった、コスメで世界を目指すDINETTE株式会社 尾崎社長に聞く【化粧品】
  3. ビジネスウェアのD2Cが店舗を融合したOMOに進化していく・・・株式会社FABRIC TOKYO森社長インタビュー【スーツ】
  4. アスリートが集まりメディア運営からD2Cブランド立ち上げへ、スポーツの変革を目指す株式会社TENTIAL中西社長インタビュー【インソール】
  5. D2Cで目指す世界最高級の日本酒作り、株式会社Clear生駒CEOインタビュー【日本酒】
  6. D2Cの本質はお客様のことをいかに考え抜くか…元インスタグラム事業代表責任者、元日本ロレアルCDOの長瀬次英 氏インタビュー
  7. インフルエンサーのファッションブランド立ち上げを・・・picki株式会社 鈴木社長に聞く【プラットフォーム】
  8. D2C化粧品ブランドを裏で支える気鋭のOEMメーカー、サティス製薬の戦略とは?【OEMメーカー】