MIの9月特集は「食とメディアの未来」。メディアやテクノロジーの進化によって変化をしている人と食との繋がりについて掘り下げています。

株式会社GINKANは「シンクロライフ」という食のSNSを展開。トークンエコノミーを使ったインセンティブ設計が注目され、直近では飲食店と連携した施策を次々に打ち出しています。2社目の起業で飲食店の課題解決を目指す同社の神谷知愛 代表取締役CEOにお話を伺いました。

―――これまでの経歴を教えてください

大学時代から色々な事業をやっていて、23歳の時に最初の会社を作りました。その会社では飲食店向けのソリューションを提供していて、フィーチャーフォンに搭載されていたフェリカと連携して、店舗が独自の会員組織、ポイントシステム、クーポン、メルマガなどのCRM施策を打てるというものでした。10年で全国に1400店舗ほどに導入されたのですが、ひたすらシステム開発、ひたすら営業 の労働集約型、資本力の勝負という戦いに限界も感じていて、最終的に他社の傘下に入るという形で、事業から離れました。ただ、会社は手放しましたが、起業家しかやったことのない人生で、サラリーマンができるとも思えなかったので(笑)、2015年にまた起業したのがGINKANという会社です。

―――「シンクロライフ」では再び食の領域に挑戦ということになりますが、飲食店での課題がまだまだあると感じられていたのでしょうか?

そうですね。以前の会社で取り組んでいたのは、CRM施策なので、一度来店していただいたお客さんをどうリピーターにするかという課題でした。しかし、世の中には膨大な店舗があり、開店・閉店も多い世界です。やはり最初にお客さんにどう出会うか、という点に課題を感じている店舗さんが圧倒的でした。さらに、新規獲得の施策は効率の悪い広告に依存していて健全ではありませんでした。この根深いマーケティング全般に資する事業に取り組んでみたかったんです。それからグローバルに展開すること。この2つには人生を賭けるくらいのポテンシャルがあると思っています。

―――「シンクロライフ」はどういったサービスなのでしょうか?

「シンクロライフ」は一言で表現すれば「グルメ版のインスタグラム」で、熱量あるレビュアーが集まった、信頼性あるコミュニティが形成されています。特に既存のメディアでは文字中心、長文レビューで投稿ハードルが非常に高く、報酬制度がなくボランティアの貢献に依存しています。シンクロライフは誰もが気軽に食の体験を投稿できるレビュー投稿の民主化をテーマとした世界を作ろうとしています。そのために画像中心のSNS形式を採用し、インタラクティブに反応のある設計や、ブロックチェーンを使ったトークンエコノミーによる報酬によって実現しようとしています。そしてブロガーやYouTuberが職業になったように、グルメレビュアーも職業になる世界を作りたいと思っています。仮想通貨には毀誉褒貶ありますが、現在の時価総額は20兆円以上。大いに可能性があると思っています。

―――トークンの配布はどのような仕組みでしょうか?

約1年前からシンクロコイン(SYC)というトークンがレビュー投稿によって得られるようになりました。付与されるトークン数はレビュアーのランク(信用スコア)と実際に投稿されたレビューの評価によって決まっていきます。トークンは現状ではアプリから持ち出すことは出来ませんが、海外のLATOKENという取引所に上場していて、時価総額は約1.5年で5倍になりました。アプリ内ではギフト券との交換をできるようにするつもりです。また、飲食代金の一部として支払いに使えるようにもしたいですね。

―――レビュー投稿でトークンを付与するようになって、ユーザーの行動は変わりましたか?

やはり投稿の質が上がったり、継続率が上がったりという事はありました。どうせ投稿するなら、良質なものにしてトークンを貰いたいという心理でしょうか。

上場しているトークンの値段が徐々に上がっていますので、初期からシンクロコインを持っているということはベンチャー企業のストックオプションを持っているのと同様に、将来メリットを受けられる可能性を秘めていると言えます。まだまだユーザーの中でも「トークンって何?」という人も多そうですが、徐々に活用方法を広げていくと認知も広がっていくと思います。

フィード画面。トークンで良質なレビューが集まる仕組みを構築

―――「シンクロライフ」と連携した飲食店で食事をすると飲食代金の1~5%相当のトークンが付与されるサービスも開始されましたね

「シンクロライフ」で見つけた加盟店で食事をしてもらうと、それだけで飲食代金の1~5%のシンクロコインが付与されるという仕組みです。また、来店してくれたユーザーに対してはその後もアプリを通じて 優待券(クーポン) 配布などのCRM施策を打てるのでリピーターに育成していくことができます。加盟店になる店舗は初期費用も月額費用も必要なく、成果報酬の5%負担だけで集客施策を行えることになります。 全くリスクのない施策ということでどんどん加盟店が増えています。現在リリースから2ヶ月経過し、導入予定で175店舗、年内には1000店舗まで広がる見込みです。

―――かなりのスピードですね

ただ課題もあって、シンクロコインの付与は店頭でQRコードを表示して「シンクロライフ」のアプリで読み込むことによって実現しています。これは面倒だと思っていて、決済と一体化したいと思っています。そのために、三菱UFJニコスさんとクレジットカードの決済情報と紐付けて自動的にシンクロコインを付与する実証実験を進めています。これにより、QRコードを介する必要がなく、飲食代金をクレジットカードで支払うだけでシンクロコインを付与できるようになります。株主であるオリエントコーポレーションさんとも同様の取り組みを進めていく予定です。ユーザーにとってもカードのポイントと、シンクロコインが両方貰えるというメリットがあります。

アプリ内で「シンクロコイン」が貯まる飲食店を探すことができる
加盟店を表すポップ

―――新しい株主とも店舗での展開を推進していくのでしょうか?

先日、kawara CAFE&DINING等を運営するエスエルディー、ダイヤモンドダイニング、バグースなどをグループに持つDDホールディングスのCVCから資金調達しました。両社と深く連携を行いながら「シンクロライフ」と店舗の結び付きを強めていきたいと思っています。また、私もこの業界が長いので飲食店の事情を理解しているつもりではあるのですが、株主と投資先という立場でぶっちゃけ話を聞かせてもらうのも狙いの一つです(笑)。どういう施策が店舗にとって良くて、どこが課題になって、導入準備が進まないのか・・・なかなか普段の営業活動で聞けない裏側も聞ければと思っています。

―――アプリにはAIを大胆に取り入れているそうですね

店舗を探す際に検索するのって面倒ですよね。思いついたキーワードを入力するだけでは、偶然の出会いもありませんし。「シンクロライフ」ではデフォルトでAIによるレコメンドで店舗を紹介するようにしています。最初はデータがないのでエリアやリピート率で表示しますが、何度か利用してもらえると好みに応じてお店を表示するようになります。

とても簡単に言うと、全ユーザーの中から、好みの飲食店の価値観が似ている人を探して、その人が高評価を付ける店舗は自分にとっても良い店ではないかという探し方をしています。例えば「ラグジュアリーなお店」と「安くても良いお店」という軸があったとして、この軸の好みが一致すれば、お店のジャンルは違っても似たようなお店が好きなのではないかという事です。

「シンクロライフ」ではAIでのレコメンドを全面に押している

―――グローバル展開狙いだということでしたが、現状はいかがでしょうか?

現在4言語、155カ国で対応していて、47カ国で口コミが投稿されています。海外旅行に行っても、意外に現地の美味しいお店を探すのには苦労したりします。そういう時に使われるアプリになりたいと思っています。現状はアジアから日本に訪れる訪日外国人にもよく使われています。インバウンドで日本に訪れる人にとっても、シンクロコインというグローバルで取引できる仮想通貨が手に入るのはドメスティックなポイントと比べて将来的には使い勝手が良いものになると思います。

―――最後に今後目指すものを教えてください

GINKANが目指すのは「シンクロライフ」というユーザーにとって価値のあるグルメSNSを成長させながら、飲食店が新規顧客を開拓する際のパートナーになることです。月額広告費に依存させるような既存のグルメメディアのビジネスモデルは問題があり、早急に壊したいと思っています。

また、日本の食文化は世界一と言われます。実際に食選びはとてもワガママだと思います(笑)。これは世界に発信できる日本の豊かさの一つで、「シンクロライフ」を通じて世界のユーザーが日本の食文化に触れるきっかけを提供できればと思います。また、世界のグルメSNSという領域はまだ勝者が決まっていない領域だと思いますので、日本発のグローバルサービスとして成功を目指したいと思います。

9月特集: 食とメディアの未来

  1. メディアとテクノロジーの進化で変化を続ける「食」のカオスマップを公開!
  2. 店舗を持たずにUber Eatsで躍進するゴーストレストラン「筋肉飲料」安原代表インタビュー
  3. 日経新聞とバカンがタッグを組んだ異色の弁当取り置きサービス「QUIPPA」インタビュー
  4. トークンエコノミーで良質な”食のSNS”を構築し世界へ・・・「シンクロライフ」神谷代表インタビュー
  5. 地図が人間の行動を変える、世界中の店舗をデータ化する「yext」インタビュー
  6. 食から暮らしを豊かにする日本最大級のグルメメディア「macaroni」インタビュー
  7. 実名の信頼できる口コミでグルメをもっと楽しくする「Retty」インタビュー

豪華メンバーが登壇の今月のイベントは9月25日(水)に開催

毎月開催の「Media Innovation Meetup」も 「メディアと食の未来」として、特集に参加いただいた3社をお招きして、開催します。メディアやテクノロジーの進化によって変わりつつある、人間の根幹の欲求の一つである「食」と人間との関係について、ヒントを得られる場となりますので、ぜひご参加ください。

また今回は「Media Innovation #8 食とメディアの未来 ゴーストレストラン、トークン✕食SNS、日経が作った弁当サービス!? Sponsored by pasture」として、 エン・ジャパン株式会社の展開するフリーランスマネジメントツール「pasture」のスポンサードで、いつもよりチケット価格を抑えて開催させていただきます。 メディア運営でも活用できるサービスですので、こちらもぜひチェックしてみてください。

■概要
Media Innovation #8 食とメディアの未来 ゴーストレストラン、トークン✕食SNS、日経が作った弁当サービス!? Sponsored by pasture
日時 2019年9月25日(水) 19:00~22:00
会場 TIME SHARING秋葉原 〒101-0021 東京都千代田区外神田1丁目15−18 奥山ビル 8階
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    筋肉飲料 安原莞太 代表
    株式会社GINKAN 神谷知愛 代表取締役
    日本経済新聞社 ID・事業企画グループ 瀧島伸篤氏、株式会社バカン Program Manager 鈴木慎介氏
    株式会社デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘 代表取締役
20:15 パネルディスカッション
20:50 懇親会
21:45 終了

チケットはPeatixで販売中です。

サロン会員の皆様には1000円引きのクーポンコードを配布しています。下記からぜひ入会ください。