MIの10月特集は「4000万人の巨大市場、インバウンドメディアを知る」です。日本を訪れる外国人の数は今年も全ての月で前年を上回り、政府は2020年に4000万人の大台を目指すとしています。10年前の2009年は678万人だったことを考えると、隔世の感があります。インバウンドの盛り上がりと同時に、その膨大な日本を訪れる外国人をターゲットとしたメディアも成長を続けています。インタビューを中心にインバウンドメディアに迫ります。

日本には様々なインバウンドメディアが存在しますが、その最大手とも言える「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE(以下、LIVE JAPAN)」 は東急株式会社 、東京地下鉄株式会社、株式会社ぐるなびの3社が共同で運営するメディアです。そこにインバウンド対策に積極的に取り組む43社が参画した(掲載日時点)、巨大コンソーシアムとして運営されているというのが大きな特徴となっています。ぐるなびで本事業に取り組む、LIVE JAPAN事業部 部長の加藤 洋平氏にお話を伺いました。

―――簡単にご経歴を教えてください

元々は人材系の会社で営業をやっていたのですが、2009年にぐるなびに入社しました。実は「ぐるなび」本体には殆ど関わってなくて、宿泊予約サイトの「ぐるなびトラベル」(現在はサービス終了)に 携わった後はメディア系の事業が長く、「ぐるたび」の立ち上げや「レッツエンジョイ東京」を担当してきました。 「レッツエンジョイ東京」ではセールス企画で、東京メトロさんの担当でもありました。その後、東急、東京メトロ、ぐるなびの3社で「LIVE JAPAN」を立ち上げる事になり、そのままこちらの事業に入り、今は事業責任者をしています。

―――「LIVE JAPAN」の座組は非常に興味深いのですが、どうやって始まったのでしょうか?

話が始まったのは2014年くらいで、2015年6月18日に3社で共同事業の署名を行い、その翌年に事業を開始しました。元々、3社の経営層が会話できる間柄だったということと、それぞれがインバウンドで外国人訪日客が増加する中で課題を抱えていたというのが背景にあります。

―――どういった課題があったのでしょうか?

オリンピックが決まった2013年の時点で、2020年に向けてインバウンドが拡大していくという想定がありました。鉄道各社として困っていたのは観光案内所です。各社が鉄道駅に設けていますが、増え続ける外国人観光客に対してキャパシティが不足していました。その中で、一番多い質問が食だったんです。一方のぐるなびとしては、ぐるなび外国語版を運営していましたが、食だけでは集客は難しいという課題がありました。困っている3社で訪日外国人向けメディアを立ち上げたらどうだろう、というのが会話のスタートでした。

―――今では東京版で46社局が加盟するという大掛かりなコンソーシアムに発展しました

「LIVE JAPAN」は、東急、東京メトロ、ぐるなびの3社が資金を出して、構築したプラットフォームをベースとしたコンソーシアムです。その中に、地域別の「東京」「北海道」「関西」「東北」と地域別にガイドが存在して、それぞれにコンソーシアムが存在するという形です。

最初は3社でやっていたのですが、インバウンドを担っていくなら、空港路線を加えたい、都営交通も入ってもらわないと、という風に考えながら大きくなっていったのですが、今ではヤマト運輸さんや三菱地所さんなど、幅広いプレイヤーも入っていただけるようになりました。

中核となる3社は毎週定例会議を行いながら、全参画企業が集まる会議は3ヶ月に一度のペースで実施しています。実質的には各社のインバウンド担当者による情報交換の場となっていますが、例えば昨年は自然災害が頻発し、訪日中の外国人への情報提供が課題になりました。そこで何度か部会のように集中的に議論を行い、「LIVE JAPAN」の座組の中で、災害情報の一元化サイトの立ち上げを行いました。これまでは各社がそれぞれ取り組んできたものを、今後は観光案内所でもこの災害情報一元化サイトを案内すれば良くなりましたので、一つの成果と言えると思います。

参加社局の35箇所の観光案内所に12,000枚が設置されている、おまもりカードも制作した

―――各社はどういった理由で「LIVE JAPAN」に加わるのでしょうか?

各社がインバウンドに取り組んでいるのですが、それぞれの担当者は暗中模索の中で、増え続ける外国人観光客に対応しています。例えば最近参画いただいた御岳登山鉄道は京王グループで青梅市の御岳山に登るケーブルカーやリフトを運営している会社ですが、最近トリップアドバイザーで星が付いて、突如として大量の外国人が訪れるようになりました。嬉しい反面、とても困るわけですね。多言語化されたウェブサイトもないところに、突然たくさんの人がやってくる。こういう事が全国各地で起こっていて、それにどう対応すれば良いのか、というのを議論する場にもなっています。

各社のインバウンド担当者が一堂に介し、情報交換する貴重な場になっているという「LIVE JAPAN」の全体会合

―――メディアとしての「LIVE JAPAN」の特徴を教えてください

大きな特徴として挙げているのは「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」という分類で、「旅ナカ」に力を入れているという事です。日本滞在中に必要な情報を「LIVE」で得られるというのがメディアのコンセプトです。人口としては「旅マエ」「旅アト」が圧倒的なのですが、それでも約13%の閲覧者が実際に日本を訪れている最中、「旅ナカ」のユーザーというデータが取れています。2018年に東京都を訪れた外国人は1424万人 です。月に直すと118万人となります。「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」の「旅ナカ」ユーザーは33万人ですので、3割以上 の潜在ユーザーにリーチできていることになります。

言語では日本語のほか、英語、繁体字、韓国語、タイ語、インドネシア語、簡体字、マネーシア語に対応していて、日本語を除くと、英語、繁体字、韓国語という順位です。2016年4月の運営開始から徐々にユーザー数を増やしていっていて、2018年度の年間利用者数は3500万人にまで成長しました。当初は広告も強めにやっていましたが、現在は検索、ソーシャル、ダイレクト、リファラル(提携先のポータルなど)からの流入がメインとなっています。

LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYOのウェブサイト

―――メディアとして成功のきっかけを掴んだという場面はありましたか?

いま社内は35名程度のチームで運営しているのですが、当初は日本人が大半でした。それで最初の数ヶ月は伸び悩んでいたのですが、編集チームに外国人を増やしていったら、大きく伸びるようになりました。現在では過半数が外国人という編成です。今のコンテンツ作りは、(1)外国人目線で企画を立てる (2)日本人目線でブラッシュアップする (3)検索ボリューム調査で根拠を持って制作する というやり方をしています。やはり、言語や地域毎に傾向や好み、刺さるモノ・刺さらないモノは違いますので、企画ではその感覚を大事にしつつ、適切なスポットが選ばれているかなどローカルでの目線も入れるというやり方です。

これまでに1万本の記事を作ってきましたので、言語や地域での傾向や好み、刺さる・刺さらないはかなり明確に分かるようになってきました。例えば、外国人向けに紅葉をアピールしたいという観光地があったのですが、実は紅葉は台湾人にはウケますが、韓国人にはウケません。なぜなら韓国では紅葉があるからです。こういう知見はだいぶ溜まってきましたので、タイアップ企画などでも活用しています。直近ではラグビーワールドカップでオーストラリアやニュージーランドからの流入が増えたりと、データで見えてくるものは多いです 。

LIVE JAPANにおけるラグビーワールドカップ出場国の利用者数の推移。チケット販売開始から大きく跳ね上がっていることが分かる

―――ビジネスモデルについても教えてください

記事広告やタイアップメニューもあるのですが、「旅ナカ」のユーザーが多いという特徴を活かしてユーザーと店舗や施設とのマッチングのビジネスを拡大していきたいと考えています。現在LIVE JAPANでは約7500店舗の情報を掲載していますが、主力となっているのは、掲載料をいただき店舗が情報を発信できるプランです。基本的な店舗情報やメニュー、イベント情報はもちろん、日々のセールや企画情報を店舗自身が発信できます。セールや新商品など頻度の高い発信についてはテンプレート化されていて、自動的に5ヶ国語に翻訳がされる仕組みもあります。訪日外国人は増えているのですが、一部の店舗に人が殺到している状況で、そんな時に自ら発信していきたいというニーズに応えています。

―――頑張って発信していくとちゃんと集客するものでしょうか?

はい、そういう事例が作れています(笑)。実は当初は、特別な情報発信が必要なんだと私達も勘違いしていました。でも、外国から訪れているお客さんにとっては、そのお店に訪れること自体が特別なので、そこにプラスαはそこまで必要なくて、今日どんな物を売ってるのか、というだけでも響く事が分かりました。例えばアメ横でお菓子を売ってる「二木の菓子」というお店が、我々の「LIVE JAPAN Awards 2019」という最も閲覧数の多い施設を表彰するアワードでナンバーワンを取ったのですが、そこで発信しているのは今日入荷したお菓子です。いつもお店に行ける日本人にとっては特別ではないものが、今日しか足を運べない人にとっては特別なんだということではないかと思います。

ちなみに前述のアワードですが、当初は「浅草寺」のようなザ・定番のスポットが受賞していたのが、徐々に個店が目立つようになっていき、今年は「二木の菓子」でした。訪日外国人数が増えることで、リピーターとして何度も訪れる人が増えているように思います。そうすると、もっとローカルな情報が求められるようになります。参画企業には鉄道会社が多いのですが、駅員さんというのが実は重要な情報源で、彼らが外国人に聞かれるスポットも「LIVE JAPAN」のコンテンツに活かしています。例えば京成立石で「キャプテン翼」のスポットを尋ねられたり、新宿ではスクウェア・エニックスの本社を尋ねられたり、日本人にはなかなか思い付かない情報を求めているという事が分かりました。

―――今後「LIVE JAPAN」としてはどういったことに力を入れていくつもりでしょうか?

地域別のガイドは充実させていく予定です。今は東京を含めて4地域ですが、九州などでは既に話をしていて、地元企業の皆さんとタッグを組んでコンテンツを作っていきたいと考えています。また、ビジネスモデルとしては「LIVE」でのマッチング、特にアフィリエイトのようなモデルを拡充していく予定です。

もう来年が2020年で、政府は4000万人の訪日外国人数を目標としています。それを支える情報インフラとして、コンソーシアムに参画する企業・団体とタッグを組んで、日本のインバウンドを盛り上げていければと思います。

加藤氏の脇にあるのは、2015年に3社で署名をした際の寄せ書き。2020年を前に、訪日外国人向けのワンストップガイドサービスという当初の目的に近づいている

10月特集: 4000万人の巨大市場、インバウンドメディアを知る

1. 46社局が日本の観光ガイドを作る取り組み、「LIVE JAPAN」ぐるなび加藤氏に聞く
2. DMOが主体となって世界に情報発信、「せとうちFinder」などを手掛けるネイティブ倉重社長に聞く
3. キャンピングカー株式会社 頼定社長インタビュー
4. 株式会社ランドリーム 原田社長インタビュー
5. 株式会社mov インバウンド研究所 所長 田熊氏インタビュー
6. ADARA 日本カントリーマネージャー 森下氏インタビュー

LIVE JAPANの話も聞けるイベントは10月30日(水)開催

今月も「Media Innovation Meetup」を開催。特集に参加いただいた各社が一堂に介し、2時間でインバウンドメディアやマーケティングを理解できるイベントとなります。ぜひご参加いただければと思います。

■概要
日時 2019年10月30日(水) 19:00~22:00
会場 TIME SHARING秋葉原 〒101-0021 東京都千代田区外神田1丁目15−18 奥山ビル 8階
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社ぐるなび  LIVEJAPAN事業企画S S長 安藤京介氏
    株式会社mov インバウンド研究室 室長 田熊力也氏
    アダラ・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー 森下順子氏
    ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重宜弘氏
    キャンピングカー株式会社 代表取締役社長 頼定誠氏
20:25 パネルディスカッション
20:50 懇親会
21:45 終了

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