【解説】コロナ以降、世界は急速にオンラインになった

MIの3月特集は「コロナウイルス以降、メディアはどうなる?」。感染拡大が止まらない新型コロナウイルス(Covid-19)に対して、メディア各種がどう動いたのか、そしてこれからどうなっていくか、考えたいと思います。31日(火)には会員限定のオンラインセミナーも開催予定で…

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MIの3月特集は「コロナウイルス以降、メディアはどうなる?」。感染拡大が止まらない新型コロナウイルス(Covid-19)に対して、メディア各種がどう動いたのか、そしてこれからどうなっていくか、考えたいと思います。31日(火)には会員限定のオンラインセミナーも開催予定です。

中国・武漢で最初に確認された新型コロナウイルス(Covid-19)が瞬く間に世界中に広がり、国内の感染者1139名、死者42名、世界では感染者35万人以上、死者1万5000名以上(3月23日時点)となり、その拡大の勢いは加速しています。

各国政府は政策を総動員して封じ込めに躍起です。武漢のような大都市の封鎖は他国では困難と考えられてきましたが、13日に米国が欧州からの入国を禁止したのに続いて、16日にはEUも加盟国に対して域外からの入国を禁止する提案を行いました。

さらにフランス、イタリア、スペインでは外出禁止令も出て、不要不急の外出が制限されました。同様の措置はテック企業の中心地、サンフランシスコでも取られています。日本でも東京都の小池知事が首都をロックダウンする可能性について言及しています。

外出禁止が取られているイタリア・ローマ。繁華街でも人通りはまばらで、ほとんどの商店が店を閉めている(Photo by Getty Images)

人の移動が制限されると同時に、各国の生産拠点が維持できなくなり、物流も滞ることで世界的なサプライチェーンの寸断も起きています。第二次世界大戦後、70年に渡って脈々と続いてきた、特に冷戦崩壊後は加速した、人と物そして資本の自由な移動、それを最大限にレバレッジしてきた現代的なビジネスが急速に停止に向かっています。

既に各国がワクチンの開発に着手していて、米国では臨床試験を開始したというニュースもありました。多大な犠牲を払いながら、移動を制限して感染を防ごうという努力、献身的な医療関係者の努力によっていずれかのタイミングでこの新型コロナウイルスに勝利する日はやってきます。

しかしこの未曾有の非常事態を経験したことは不可逆的に私達の生活を変えていくはずです。世界は9.11以前にも、3.11以前にも戻れません。そのニューノーマル(新常態)とは果たして何か、考えてみたいと思います。

世界は急速にオンラインに変わった

最初に見て欲しいのは2つのグラフです。上はJPIXが公開しているインターネットトラフィックの推移です。継続的に増加を続けていますが、直近その伸びが顕著になっていることが分かります。

下はIIJが公開した曜日、時間帯別のインターネットトラフィックのグラフです。これまで平日の昼間はトラフィックが落ちていましたが、3月に入ってから平日の昼間のトラフィックが大きく伸びていることが分かります。

インターネットの接合点を司るJPIXが公開している首都圏のトラフィックの推移
IIJが13日に公開した「 新型コロナウイルスのフレッツトラフィックへの影響」より一週間の時間帯別トラフィックの推移

その大きな要因と考えられるのが、リモートワークの拡大と、公立学校の閉鎖の影響です。MIが実施した新型コロナウイルスに関するアンケートでも、回答者の大半がリモートワークの実施が行われたと回答。オフィスに出社せず、自宅などで業務を行うビジネスマンが増えたためトラフィックに影響を与えた事が考えられます。

一方で学校の閉鎖によって利用が伸びたサービスとして動画を挙げる割合も高く、この影響も一定ありそうです。

そのリモートワークですが、概ね受け入れられているようです。いち早く前者でリモートワークに切り替えたことで注目されたGMOインターネットは従業員アンケートの結果を公開していますが、そこでは「良かった点」「悪かった点」それぞれ以下のような回答になったそうです。

リモート勤務で良かった点( 自由回答 n=353 )
悪かった点 ( 自由回答 n=353 )

突然のリモートワーク移行だったためか、通信環境や設備面から作業環境の問題を挙げる回答が多く見られましたが、一方で通勤負担の軽減や、在宅勤務になって良かったというコメントも多く寄せられました。

筆者も積極的にリモートワークを活用するようにしていますが、通勤が無くなるだけで大きな時間の節約、精神・肉体的な負担軽減になることを実感しています。また、「作業」という点だけ考えれば一人で集中する空間を確保できればリモートワークでも何の問題もなさそうです。

一方で「チーム」を考えると、対面以上のコミュニケーションを実現するためには工夫が必要そうです。GMOのアンケートでも実践して良かったツールとして「Zoom」「Microsoft Teams」「Chatwork」「Slack」「Hangouts Meet」といったコミュニケーションツールが挙げられていて、こうしたツールを使いこなしてチームプレーを成立させている事が分かります。これらを普段から活用してきたのか、今回新しく導入したのかという部分でリモートワーク移行の円滑さも変わりそうです。

リモートワークで遠隔でも仕事が円滑に回るということが分かれば、地域的な格差を埋めることにも繋がりそうです。地方創生の課題の一つは東京と比べて仕事の幅が限られる事です。直近で多数開催されているオンラインセミナーも、今までは参加が難しかった地方からも参加できるという大きなメリットがあります。

オンライン経済活動の存在感はさらに大きく

厚生労働省は、感染拡大抑止の観点から「密閉空間」「密集場所」「密接場面」の3つの条件が揃う場所がクラスター(集団)感染のリスクが高いとして避けるよう呼びかけています。

日本では自粛という強度ですが様々な企業、機関、団体が自主的にこれらに抵触する環境を減らす動きに出ています。これによって、飲食店大型レジャー施設などは客足が大幅に鈍り、公共交通では航空だけでなく新幹線などの鉄道も需要減が見られます。

unerry社が公開した人流ビッグデータによるディスティネーション別の推移

オフライン活動が制約される一方で、活況を呈しているのがオンライン活動です。これは米国の調査ですが、大手通信会社ベライゾンはインターネットトラフィックが20%程度増加していて、中でもゲームが75%増加、VPN接続(リモートワークで活用される)が34%増加、動画が12%増加したと報告しています(いずれもピーク時間での変化)。ただ、ソーシャルメディアは変化が無かったそうです。

国内では3月2日から公立の小中高校が臨時休校となり、大学や私立もほぼ追随していますが、C Channelが保護者向けに実施したアンケートでこの期間で利用が増えたサービスについて、特にないが半数を占めましたが、教育教材・サービスが18.9%、有料動画配信サービスが16.5%、食材の宅配サービスが8.4%、食事のデリバリーサービスが7.2%などという結果が出ています。

学習の機会が失われた事で、オンライン学習の存在感が増しているようです。また出版社によれば、学習書、児童書などの販売が大幅に増加しているそうです。

これは世界的な傾向のようで、Digidayが伝えたニールセンの調査データによれば、16,17日の両日でアニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」の視聴率が前週に比べて58%も増加したそうです。また、「ディズニーチャンネル」は43%、「ブーメラン」は31%、「ニコロデオン」は25%だったそうです。SambaTVによれば、OTTのこれらの番組も視聴者を増やしているようです。

日本でも電子書籍やコミックの販売が伸びているようです。特に「コロコロコミック」「週刊少年ジャンプ」「週刊少年サンデー」を筆頭に数多くのコミックが期間限定で、無料で公開されていることがこれを加速させています。Hon.jpが素晴らしいまとめを公開していますので紹介します。

ECも外出自粛の追い風を受けています。Amazonは需要の急増を受けているとして、フルフィルメントセンター(倉庫)や配送サービスで10万人以上を新たに雇用すると発表。さらに既存の従業員に対しても時間単価を上げる事を明らかにしています。特に日用品の需要が高くなっていて、アスクルが運営する「LOHACO」や楽天の運営する「楽天24」では商品在庫が逼迫していて、配送能力を超えていて、遅延が発生しているとお詫びを出しています。

LOHACOがウェブサイトに掲載しているお詫び

このように現在は「巣ごもり消費」に需要が集中している状況です(3/23時点)。

突然のSocial Distanceの衝撃

このように、あらゆる活動がオンラインになってく一方で、改めて再認識させられるのは、人は社会的な動物だということです。政府が呼びかけたからといって「Social Distance」(本来は社会的な距離の意、今は物理的な距離を取る、スキンシップを避ける、混雑を避けるなどの意味で使われている)ことが実現できるかは国によって差があるようです。

欧米諸国では外出禁止となってからも、違反が相次いでいると報告されていて、フランスのマクロン大統領は「自分や家族を守る措置だと多くの人が理解していない」と怒りを表明する事態に

アメリカ連邦議会でのブリーフィングも距離を取ることを実践(Photo by Getty Images)

しかし日本でもこの3連休は観光地に多くの人が集まり、長期化する新型コロナウイルス対策への緩みが見られます。弊社が運営する観光情報サイトでも、3月中順まで例年の半分程度で推移していたPVが、この3連休には95%程度まで回復していました。多くの活動がオンラインになりつつも、やはり人間の根源的な欲求は変わらないとも言えそうです。

新型コロナウイルスの収束はまだ見通せず、日本でも本格的な爆発的な流行が依然として懸念されている状況です。ただ、強制的に導入が進んだリモートワークをはじめとして、オンラインを活用した取り組みが大きく生産性を向上することが見えてきました。これは流行後にも逆流することなく、「失われた30年」と言われてきた日本において成長の大きな鍵になるように思います。

その一方で、人間の繋がりたいという欲求はオンラインだけでは解消されないのかもしれません。ベライゾンの報告で、ソーシャルメディアの利用が増えていないというのは、リアルな関係の代替とは異なる消費であることを示唆しています。あらゆるものがデジタル化する中で、リアルの価値が見直されているのがここ数年の流れでしたが、コロナウイルス後には更に強化されるかもしれません。オンラインで生産性を高めつつ、リアルの良さを活かしていく、この流れは変わらないと言えそうです。

この特集では新型コロナウイルスでメディアはどうなったのか、これからどうなっていくのか、リモート編集部の実体験も踏まえながら考えていきたいと思います。

3月31日にはMIとして初のオンラインセミナー「コロナウイルス以降、メディアはどうなる?」を5名の登壇者を招いて実施します。Media Innovation Guildの会員様には無料で参加できますので、ぜひこの機会に登録して、ご参加いただけますと幸いです。

コロナウイルス以降、メディアはどうなる?

  1. 【解説】コロナ以降、世界は急速にオンラインになった
  2. 【解説】メディア、プラットフォーム、コロナウイルスとの戦い
  3. 【レポート】日本のメディアはコロナウイルスでどうなった?
  4. 【レポート】リモート編集部の実践レポート
  5. 【レポート】オンラインセミナーの実践レポート
  6. 【取材】リモートワーク実践企業にリモート取材を敢行

順次公開していきます。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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