【解説】メディア、プラットフォーム各社の新型コロナウイルスとの闘い

MIの3月特集は「コロナウイルス以降、メディアはどうなる?」。感染拡大が止まらない新型コロナウイルス(Covid-19)に対して、メディア各種がどう動いたのか、そしてこれからどうなっていくか、考えたいと思います。31日(火)には会員限定のオンラインセミナーも開催予定で…

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MIの3月特集は「コロナウイルス以降、メディアはどうなる?」。感染拡大が止まらない新型コロナウイルス(Covid-19)に対して、メディア各種がどう動いたのか、そしてこれからどうなっていくか、考えたいと思います。31日(火)には会員限定のオンラインセミナーも開催予定です。

世界的なPR会社のエデルマンは「トラスト・バロメーター」の特別版を公開し、世界10カ国1万人を対象にした調査で、世界の70%が毎日1度以上、新型コロナウイルス(Covid-19)のニュースをチェックし、日本ではその割合が90%にも達することを明らかにしました。

新型コロナウイルスに関する情報に接する頻度(黒は1日数回、灰色は1日に少なくとも1度)

その一方で、実に74%がフェイクニュースや誤った情報に悩まされていて、45%は信頼できる情報を見つけるのが難しいと回答。さらに、85%は医師や科学者などの専門家による情報がもっと必要だと感じていることが分かりました。

報道機関への期待は高いようです。特に日本では73%が最も頼っている情報ソースと回答。世界的にも最も頼られているプレイヤーであり、政府(40%)、ソーシャルメディア(38%)、WHOのような国際機関(34%)、CDCのような国の機関(29%)、友達や家族(27%)などを大きく上回りました。

報道機関を頼る割合が最も大きい。対応が一貫しない様子が度々報道されたWHOを頼りにする割合が低いのが分かる。

ジャーナリズム研究で著名なPew Research Centerが成人アメリカ人向けに実施した調査でも、約7割がメディアは新型コロナウイルスについて十分にカバーしていると評価しています。一方でアメリカらしく、民主党支持者は報道への評価が高く(80%)、共和党支持者では相対的に低い(59%)という結果も出ています。党派性が強いアメリカを象徴する数字と言えそうです。

Pew Research Centerの調査。「ニュースを追っているか」「メディアは上手くやっているか」「独自のソースでカバーしているか」の項目を民主党支持者(青)、共和党支持者(赤)で表現

このように概ね評価の高い報道機関が新型コロナウイルスに対してどのように立ち向かっているのか、そして若干評価の低いソーシャルメディアで大手プラットフォーム各社がどのような取り組みを進めているのか、レポートしたいと思います。

相次いで特設サイトを解説して詳報する報道機関

まずは日本の主要な報道機関から。NHKは早くも1月22日から特設サイトをオープン。最新ニュースと共に、1日毎の感染者数の推移を独自集計でまとめています。専門家会議や政府からの発表内容も分かりやすく噛み砕いて紹介されているため1つ1つのニュースを追う余裕がないという方にも最適です。

朝日新聞も特設サイトを設けて報道。トップページでも一番目立つ枠を「新型肺炎の情報」コーナーとして、最新ニュースと、国内の感染数、死者数、退院数を表示しています。

ニュースプラットフォームも情報提供を強化。「SmartNews」や「NewsDigest」はダイヤモンド・プリンセス号で感染者数が拡大していた2月20日までに特設タブを設置。NewsDigestを提供するJX通信社では豊富なデータを使って開設。企業向けには「FASTALERT」でリアルタイム感染者数データの提供も開始しています。

グローバル展開を進めているSmartNewsですが、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、ダウンロード数を大きく伸ばしているという報告もありました。

欧米のメディアでは、新型コロナウイルスに関連する記事のペイウォールを取り外すという選択が目立ちました。各社は有料サブスクリプションモデルに邁進する中で、ペイウォールは重要な武器でしたが、広く必要な情報提供を行う事を選択した形です。

ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズなど。地方紙でもシカゴ・トリビューンやシアトル・タイムズなど、十数誌が同様の施策をスタートしています。

ニューヨーク・タイムズは「読者がパンデミックにおいて新型コロナウイルスについて重要なニュースや有用なガイダンスに触れられるよう、自由にアクセスを提供します。」とコメント。

更に興味深いのは多様なフォーマットを活用して報道しようというスタイルです。CNNは「Coronavirus: Fact vs Fiction」というポッドキャストを2月末から開始。同社のチーフメディカル特派員のサンジェイ・グプタ博士を起用して専門家からの情報を届けています。

ユーザーベース傘下のQuartz Mediaは3月3日に「Need to Know: Coronavirus」というニューからレターを創刊。週に数回、単に健康の観点だけでなく、経済、市場、産業、政治、生活の観点からも、この感染者が影響を与えていくか伝えていくとしています。

また、BuzzFeedは「Subtext」という企画をスタート。登録をしておくと、テキストメッセージで新型コロナウイルスに関する疑問を投げることができ、それに対する回答や解説の記事を受け取ることができるというもの。ユーザーとの繋がりを大事にしてきたBuzzFeedらしい取り組みと言えそうです。

このように報道機関各社は世界中に張り巡らされたネットワークを活用しながら、独自の視点も交えながら、新型コロナウイルスに関する情報を適切に届けようとしています。これが冒頭の64%から頼られるという結果に繋がっていると言えるのではないでしょうか。

対するソーシャルメディアはどうか? 大手プラットフォームの挑戦

一方で、頼りにする情報ソースとして38%が支持したソーシャルメディアはどうでしょうか? ソーシャルメディアの拡散力が強化されるなかで、こうした非常事態には誤った情報が流布される危険性を孕んでいます。

プラットフォーム各社は共同で声明を発表。

「私達はCovid-19に対して緊密に連携しながら対応を進めています。私達は数百万人の人々が繋がるのを支援しながら、ウイルスに関する詐欺や誤った情報が流通するのを防ぎ、世界中の保険当局からの重要なアップデートや情報を適切に届けようとしています。私達はもっと多くの企業と連携しながら、健全で安全なコミュニティを築くために協力していきたいと思います」

普段はライバル同士であるグーグル、フェイスブック、ツイッター、Linkedin、マイクロソフト、Reddit、YouTubeの共同声明は注目を集めました。具体的に各社の取り組みも見ていきます。

Twitterは攻撃的な内容や情報操作の可能性がある投稿に対して、機械学習や自動化を核出して対処に当たるほか、対処の範囲を拡大し、政府などに推奨されるガイダンスに反するもの、治療法や予防法で誤った情報、科学的事実を否定するもの、煽って行動を喚起させるもの、なりすましなど広範囲に渡る投稿に強制的な対応を取るとしました。

対するFacebookもサードパーティのファクトチェッカーや、世界の主要な保健機関、地元の保健当局にも協力を仰ぎ、新型コロナウイルスに関する虚偽の主張を止めようとしています。ファクトチェッカーに100万ドル(約1億円)を資金援助するという発表もありました。正確な情報を伝えるという観点では、ニュースフィードの上部にWHOのガイダンスを表示しながら、正確な情報を検索できる仕組みも導入しています。

さらに広告プラットフォームとしても存在感があるFacebookでは、パニックを誘発したり、治療に効果があると謳ったり、マスクの在庫があると偽ったりする広告を禁止。掲載ができないように対応を取っているということです。

Facebook傘下のInstagramでも、誤った情報の流通に使われているハッシュタグを無効化するような取り組みが行われているそうです。また、外出禁止を少しでも楽しむため「Stay Home」というステッカーを追加したというユニークな取り組みもありました。

プラットフォーム企業では、検索大手のGoogleは新型コロナウイルス関連の検索が急上昇していると指摘。適切な情報を返すために、WHOや地元の保健当局からの情報などを表示するパネルを追加しています。さらに自宅学習を支援する「Tech From Home」という取り組みで様々なツールの提供や、Chromebookの無償提供などを展開しています。

天気やニュースというような一般名詞を遥かに上回る検索回数となっている「コロナウイルス」(Coronavirus)

インターネットトラフィックは無限ではない、EU要請の衝撃

このようにインターネットにおける情報流通が新型コロナウイルスの大流行という非常事態にあって重要さを増していますが、このライフラインとも言えるインフラは無限ではありません。

EUの欧州委員会でインターネット市場を担当するThierry Breton氏が相次いでプラットフォーム企業の代表らと電話で会談。特に帯域を消費する動画配信プラットフォームで対応を取るように依頼したことは衝撃を持って受け止められました。

すぐに各社は対応策を発表し、Netflix、YouTube、Amazon、Appleなど主要な動画配信プラットフォームが最高画質の提供を取りやめ、帯域の使用を削減するとしました。テレワークなどでインターネットトラフィックが急増していることを受けた措置で、欧州委員会は真に必要な用途のために節約するように呼びかけています。

新型コロナウイルスの影響が社会のあらゆる側面に影響を及ぼしていく中で、平時には批判的な目で見られがちな報道機関やプラットフォーム各社が奮闘する様子は、改めて支持を受ける契機にもなるかもしれません。

3月31日にはMIとして初のオンラインセミナー「コロナウイルス以降、メディアはどうなる?」を5名の登壇者を招いて実施します。Media Innovation Guildの会員様には無料で参加できますので、ぜひこの機会に登録して、ご参加いただけますと幸いです。

コロナウイルス以降、メディアはどうなる?

  1. 【解説】コロナ以降、世界は急速にオンラインになった
  2. 【解説】メディア、プラットフォーム、コロナウイルスとの戦い
  3. 【レポート】日本のメディアはコロナウイルスでどうなった?
  4. 【レポート】リモート編集部の実践レポート
  5. 【レポート】オンラインセミナーの実践レポート
  6. 【取材】リモートワーク実践企業にリモート取材を敢行

順次公開していきます。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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