パンデミック下で変わったテレビ番組制作、新しい手法・表現・ユーザー参加型などが台頭

Coronavirus&Meはユーザーが制作に参加するハイブリッド番組の一種であり、こうしたコンテンツは今後数か月でさらに増えていくと予測されています。

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<p>Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash</p>

本記事はThe Conversationに掲載された、オーストリアのUniversity of Wollongongでメディアアートを専門とするAaron Burton教授による記事「New shows tell our isolation stories on screen – making the most of what’s athandをCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

Coronavirus&Meはユーザーが制作に参加するハイブリッド番組の一種であり、こうしたコンテンツは今後数か月でさらに増えていくと予測されています。

オーストラリアでは映画産業とテレビ産業は大打撃を受けており、制作の作業場が家に移ったことでYouTubeのようなコンテンツは無料放送およびサブスクリプションビデオオンデマンド(SVOD)体験を活用するようになりました。

メディアコンテンツを制作するために手元にあるものを利用する流れは「ブリコラージュ」文化の出現を意味しています。

取捨選択

キュレーション体験は現在大流行しており、その中には例えばSpotifyプレイリストと高級レストランのテイクアウトから、チーズの盛り合わせと厳選された本といったものまであります。キュレーションとは高品質なプロダクトから選択した内容を特定のテーマに沿って編集しそこに新たな意味や価値を付与する作業を意味しています。一方でブリコラージュとはすでにあるものを活用することを意味しています。

フランス語の動詞bricolerと名詞bricoleurは、それぞれDIYとプロの便利屋といったように訳されます。美術界でブリコラージュとは、様々な非伝統的な素材から作られた芸術を指します。コラージュやモンタージュとは異なり、組み合わされた要素はランダムであり通常は一緒に配置されることのないものを使用します。

ブリコラージュの芸術性は、個々の要素が文化的および物質的起源を作品の中でどう維持するかといった部分にあるのですが、鑑賞者は作品から新たな意味とつながりを受け取ります。

自宅からのストーリー

新しいストリーミングプラットフォームであるiWonderは、COVID-19に迅速に対応し、3月にオーストラリアでのCOVID-19に関する体験についての短い動画をユーザーから募集しました。その中の5つの動画を用いた14分のCoronavirus&Meは、7plusにより4月末にテレビで放送されました。

放送局にとってユーザー生成コンテンツ(UGC)の魅力は、プロの手が入っていないビデオ日記、リモート制作可能、および低コストにあります。実はアマチュアが作成したコンテンツを放送する試みは今までにもありました。例えばオーストラリアで最も愉快なホームビデオであるAustralia’s Funniest Home Video Showはその一例です。また従来のUGCでは通常、スムーズな進行を行うためにカリスマ的な司会と音楽の演奏が登場していました。

Coronavirus&Meでは、様々な愉快で心温まるビデオ日記を見ることができます。ストックミュージックや映像などの小さな修正はありますが、司会が登場したりはしません。

シドニーを拠点とするプロデューサーディレクターであるHixon FilmsのAlexとCatherine Weinressは応募作品を編集し様々な作品を生み出しました。例えば、武漢からシドニーの家への脱出、遺体安置所で働く労働者の恐怖、パフォーマーのコピー戦略、映画Cast Awayのパロディ、そして、アルツハイマー病の祖母と家族の試練を記録したオーマと呼ばれる短編映画等があります。

プロとアマチュアにより作られたCoronavirus&Meにおける個々のストーリーは、本来オンラインの世界で各々独立して存在するだけです。しかし、Coronavirus&Meは一つの作品として、逆境とコミュニティへの理解に貢献しました。


《The Conversation》

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