十代のTikTokユーザーたちはいかにトランプ陣営を妨害したか、ソーシャルメディアが選挙に与える影響

本記事はThe Conversationに掲載された、アメリカのMichigan State Universityで情報システムを専門とするAnjana Susarla教授による記事「TikTok teens and the Trump campaign: How social media amplifies political activism and threatens election integrity」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。

6月20日にタルサで行われたトランプ大統領の集会の出席者数が予想を下回ったのは、ソーシャルネットワーク「TikTok」を利用して集会のチケットを予約したK-POPファン集団が悪ふざけとして集会を企画したためです。

同様に、ジョージ・フロイド氏の抗議行動が歴史的に前例のない規模であったことも、ソーシャルメディアに起因するところがあります。いくつかの調査では、2500万人ものアメリカ人が抗議運動に参加したとのことです。

ソーシャルメディアは、オンラインでのボイコットからオフラインでの集会まで、政治活動のためのツールとしても利用可能であることを証明してきました。ソーシャルメディアはまた、政治活動の運営方法にも影響を与えています。ソーシャルメディアは、政治活動をサポートすることができる一方で、選挙プロセスを外国からの干渉を含む誤った情報の拡散や操作に対して脆弱なものにすることもできます。

ハッシュタグの乗っ取り

ソーシャルメディアは世間の注目を集めることで抗議活動や有意義な政治活動を行うことを可能にし、またその分散化された性質により、活動家が検閲を回避して行動を調整することが容易になりました。TikTokを通じたK-POPファンの行動は1週間以上に渡ったものでしたが、当初主要メディアの注目の対象からは外れていました。

TikTokユーザーの十代の若者たちとK-POPファンたちは、#WhiteLivesMatterなどの反Black Lives Matterのハッシュタグを利用し、GIFやミームで反Black Lives Matterのメッセージをかき消しました。ソーシャルメディアのプラットフォームでこれらのハッシュタグを検索すると、TwiceやEXOなどの人気K-POPグループの画像やファンビデオが延々と流れてきます。

そのため、ソーシャルメディアのアルゴリズムは、このようなトレンドのハッシュタグを政治的なトレンドではなくK-POPのトレンドとして分類し、ハッシュタグを使ってメッセージを宣伝しようとする反Black Lives Matterの活動家たちを妨害しています。

また、K-POPファンは、ソーシャルメディアからBlack Lives Matterの抗議者に関する情報を収集しようとしていたダラス警察の動きに反応し、お気に入りのK-POPスターの画像や動画を大量に送り続けるという活動を行いました。

インフルエンサーとフォロワーのつながり

私の研究によると、デジタル・アクティビズムにおいてソーシャルメディアが影響力を持つようになるメカニズムが2つあることが分かっています。

第一に、ソーシャルメディアが、少数のインフルエンサー、つまりソーシャルメディア上でネットワークを広範に持つ人々に意見形成の役割を与えるためです。Uberやユナイテッド航空のような企業がソーシャルメディア上で不始末をしたことで喚起された騒動は、少数の個人によって引き起こされたものです。

第二に、ソーシャルメディア上で人々は同じような考えを持つ人々と関わるというホモフィリーと呼ばれる現象によるものです。

これらのメカニズムにより、インフルエンサーとそのフォロワーは、密に接続されたオンラインネットワークに巻き込まれています。私の研究が示すように、ミームやハッシュタグ、ビデオが流行すると、受動的な共有が流行のアイデアの能動的な放送に変わることがあるのです。

例えば、有名人のジェーンが#BlackOutTuesdayのようなバイラルなハッシュタグを支持してツイートした場合、ファンのアリッサがこれをリツイートすると、アリッサのような人にリツイートされる可能性が高くなります。ジェーンの影響力は、アリッサの社会的なコネクションに影響を与えることで拡大していきます。その結果、一つの投稿が無視できない大規模なオンライン運動へと拡大していくのです。

ソーシャルメディアと政治運動

ソーシャルメディアの大規模に人々の意見を形成する性質や同じような考えを持つ人々を集める性質は、オンラインフィルターバブル、つまり、自分が見たい情報は表示される一方で、逆に見たくない情報は排除され表示されないという現象にもつながっています。例えば、最近の米国の選挙や英国のBrexit投票は、フィルターバブルの影響を受けている可能性があります。

また、ソーシャルメディアは、有権者のクラスを絞り込むことを容易にしています。2016年大統領選挙でヒラリー・クリントン氏の大統領選挙運動の費用はドナルド・トランプ氏の選挙運動の費用を大きく上回るものでしたが、トランプ氏はクリントン派の有権者の特定のグループに向けたネガティブな広告を打ち出すことで効果的に票を獲得しました。

一般的なオンライン広告と、詳細な人口統計データに基づくマイクロターゲティング機能を持つソーシャルメディアは、政治運動の影響をより効果的なものにしたり、妨げたりすることができます。

また、政治運動は投票する可能性の高い有権者のモデルを作成するための良質なデータを求めています。それを使ってより効果的に有権者の投票を促すことができます。今回TikTokのユーザーは、トランプ陣営にとって悪質なデータを大量に作り出しました。このような活動は、活動対象に時間とお金をかけてデータを見直すことを強制します。

ソーシャルメディアと選挙の公平性

ソーシャルメディアの力は、選挙の公平性にも課題を投げかけている。2016年選挙に影響を与えた可能性の高い大規模な干渉運動の責任はロシア政府と関係のある組織にあると報じられました。上院の委員会は、「これらの工作員は、何百万人ものアメリカ人の認識を意図的に操作するために、ターゲットを絞った広告、意図的に捏造されたニュース記事、自己生成コンテンツ、ソーシャルメディアのプラットフォームツールを使用した」と結論づけました。

同様に、10代の若者のグループが選挙集会の投票率にこれほど簡単に影響を与えることができるならば、他国が選挙プロセスに干渉することはどれほど簡単なことなのか、ということを今回タルサで起きたTikTokユーザーにより引き起こされた事件は示唆しています。選挙プロセスは、ソーシャルメディアによる誤った情報の拡散や妨害行為に対して脆弱なのです。

ソーシャルメディアは、十分に組織化され、ネットワーク化された政治的行為者の意図が何であれ、彼らのリーチ範囲と行動の幅の両方を増幅させます。パンデミックにより、社会のインターネットへの依存度が大幅に高まっていることから、このような懸念がより重大なものになる可能性は高いでしょう。問題は、アルゴリズムによるフィルターや偽情報が組み合わさった時、ソーシャルメディアは今後数年間で抗議と民主的行動の政治にどれだけの影響を与えるのかということです。

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