動画を使った“リアル”な採用でミスマッチを減らせるか?…連載「多様化する動画配信の世界」#2

2020年、新型コロナウィルスによって世の中は瞬く間にオンラン化が進みました。そのような中で、採用活動もオンラインに移行しました。様々な企業が状況に戸惑う中、オンラインでの採用活動をサポートしようと奮闘するサービスがあります。採用動画メディア「moovy」で…

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2020年、新型コロナウィルスによって世の中は瞬く間にオンラン化が進みました。そのような中で、採用活動もオンラインに移行しました。様々な企業が状況に戸惑う中、オンラインでの採用活動をサポートしようと奮闘するサービスがあります。採用動画メディア「moovy」です。

「moovy」は2020年7月から開始された新しい動画配信プラットフォームです。30秒の動画の中で、働く社員や組織の雰囲気を伝えることを目的としています。

サービスを提供する株式会社moovy 代表取締役 三嶋弘哉氏に、採用動画を利用するメリットや、動画だからこそ可能になる新しい採用のあり方について伺いました。

株式会社moovy 代表取締役 三嶋弘哉氏
2020年4月より、株式会社moovyを創業。7月に採用動画メディア「moovy」をリリース。

―――サービスを始めた経緯を教えてください。

人材採用の過程で発生するミスマッチや機会損失を減らすサービスを作りたいと考えていました。

以前勤めていた転職エージェントでは、日々会社内の人間関係や企業風土に悩みを抱えていた方が数多くキャリアカウンセリングにいらっしゃいました。社会的な評判と社内の実態は異なる会社が多いため、求人企業と求職者のマッチングは非常に難しいものです。そこには入社後のミスマッチもあれば、本来出会っても良かった機会損失も存在しています。その差分を埋めるためには企業内の「リアル」な情報発信がポイントだと考えはじめました。

―――動画ならばリアルな情報が伝えられるから、動画サービスを提供しているのですか。

はい。その個人や組織の「生っぽさ」を伝えるには動画が有効的だと思います。処遇や求人条件のような定量的な情報だけでなく、一緒に働き長い時間を過ごす同僚や企業文化がどういったものかを把握することは仕事選びをする上で非常に大切です。

コロナ禍でのオンライン面接では、対面での面接よりも短時間に終わる傾向にあり、見極めや動機づけが難しくなっています。(立教大学経営学部 中原淳研究室 「オンライン面接の実態に関する調査」)結果的に、お互いの認識をすり合わせることが十分出来ずに、入社後のミスマッチに繋がる可能性があります。

そこで形式的な文章による情報発信ではなく、動画を通して、企業の飾らないリアルを発信することが重要だと考えました。

―――採用過程における動画利用の現状はいかがですか。

動画を活用した採用手法は数年前に比べて一般化しつつあります。

その背景として、通信技術が発達したことで動画利用自体が身近になってきたことが挙げられるでしょう。世界的にもTikTokが流行するなど、自分について動画で発信することが文化になり、それに伴って気軽に動画編集できるアプリケーションが増えています。採用においても、より簡単に動画が活用できる時代がきています。

現在、最も多いのはYouTubeの利用した採用PRです。企業サイトで動画へのリンクをシェアしたり、検索エンジンで調べると企業説明動画が出てきたりします。

しかしこれは企業を認知した上で、より深く理解するための視聴で、企業を認知させる段階では難しいのではないでしょうか。企業らしさを、周りに埋もれずに知ってもらう事はYouTubeのような全方位型の動画共有サイトではカバーできません。また、サイトの性質上、ユーザーからの応募機能や求人企業からのスカウト機能がありません。

ですから採用に特化した「moovy」では様々な企業の動画に出会え、眺めているうちに自分にマッチした企業を見つけられるプラットフォームを目指しています。また、登録ユーザーからの動画のいいねや企業フォロー機能、スカウトメールやチャット機能の活用により、双方向のコミュニケーションが可能です。

―――「moovy」はどのような企業に利用されているのでしょうか。

業界の区切りはありませんが、今後の日本を支える社会的インパクトの大きいスタートアップ企業の利用が多いです。そういった企業の多くは、優れたプロダクトや優秀なメンバーがいるけれどブランドがないという採用課題があり、現状では大企業と比べて採用がしづらい環境となっています。だからこそ、人や組織にフォーカスを当てた採用動画に価値があると考えています。

「働きがいのある会社」は、「経営・マネジメント」「仕事」「仲間」といった三つの要素から判断できます。会社や仕事はある程度文面でも伝わりますが、抽象的な「仲間」を求職者に情報発信することは難しいでしょう。

ここだから働きたい、という固有の動機づけを求職者に行ってもらうことが、スタートアップ企業にとって重要です。そのため、企業のカラーを出しやすい「moovy」は、スタートアップ企業に多く利用されています。

―――どういったコンテンツを配信しているのですか。

企業独自のカラーを見せられて、求職者の見方を多角的なものに変えるコンテンツを重視しています。そのため、会社の風土を伝えられるテーマで多く配信しています。

例えば、現時点のアクセスランキング1位の動画は、株式会社iCAREさんの「セールスマネージャー梅田の特技はブレイクダンス★」です。事業内容や仕事内容の説明とは異なりますが、会社の飾らない雰囲気が伝わってきます。他にも「社長の意外な一面」や「私の先輩自慢」といった、社員の人柄が分かるものが、ユーザーからの視聴数が多い動画です。

動画のテーマ自体は、基本的に企業にお任せしています。ただ、企業ごとのカルチャーが出る動画が、会社の良さを伝え、求職者に求められていると感じています。

アクセス回数の上位には、「特技のブレイクダンス」や「筋トレ好き」など、社員の人柄が表れているものがランクインしている。会社の雰囲気を飾らずに伝えているコンテンツが、人気の傾向にある。

―――実際に利用する企業の反応はいかがですか。

社内外で話題になるとのお言葉をいただいています。「moovy」では、掲載されている採用動画をそのまま企業サイトや各種SNS(Twitter、Facebook、LINE)に掲載することができます。そのため社外への共有・拡散だけでなく、社内のコミュニケーションツールとしても活用されているようです。コロナ禍でテレワーク化が進み、社員同士の交流も減っている状況ならではの利用方法ですね。

また、「moovy」で制作した動画は、グーグルなどの検索エンジンで「企業名 動画」で検索してもらえれば引っかかる事が多いようです。その点でも喜ばれています。さらに、一般的に採用動画はコストが高い中で、弊社サービスは安価なプランを用意しています。気軽に新しい企業の表現方法を始められて良かったとのお声もいただいています。

―――コロナによる影響はどんなものがありましたか。

良い影響としては、時世に動画という発信チャネルがマッチしていることです。総務省の統計でも、インターネットの可処分時間のうち「動画からの情報収集」が占める割合は増えておりますし、コロナ禍の採用過程では、対面の機会が減少したことも動画のニーズを後押ししています。直接会えないからこそ、企業を志望する動機付けや企業間の見極めがしにくいのです。このような状況下だからこそ、社内を多角的に見せている採用動画が、求職者側の採用過程に活用されているようです。

また、今後5Gの普及にとよって、高速大容量、低遅延通信が可能になりますので、動画サービスとしても追い風となります。

―――オンラインが世に広まり、一層、企業側からの積極的な発信が求められていますね。

企業と求職者を「moovy」というプラットフォームでつなげたいと考えています。

現代の情報収集が「『ググる』よりも『タグる』」と言われるように、特に若者は、文章よりもビジュアルといった感覚で物事を捉えるようになってきています。そういうユーザーにビジュアルで企業を知る一つの機会を提供していきたいと思っています。

ゆくゆくは、求職者側も動画を投稿できるようなサービスを展開することで、動画の更なる活用を考えています。

―――「moovy」は今後、どう展開されていきますか。

つい先日、「moovy」で投稿した動画を、簡単に自社ホームページに取り込めるAPI機能をリリースいたしました。今後も、企業が簡単に幅広いチャネルで採用ブランディングができるようなメディアの設計を行いたいと思っています。

またここ半年以内のアップデートでは、「アナリティクス機能」を実装したいと考えています。ユーザー側の利用動向の分析機能を実装し、採用ターゲットに最適な採用動画を掲載でき、PDCAが回しながら効果を最大化できる管理機能を実装したいと思っています。 それが、大企業に押されてしまう、スタートアップ企業の採用を活性化させることにつながるだろうと思っています。

今の採用は、採用の先の「定着」が意識されていません。採用後の活躍に繋がる、マッチした人材を採用するステップとして「動画」を活用してもらいたいと考えています。

連載: 多様化する動画配信の世界

1.Candeeの技術が多彩な動画配信ニーズを支える
2.動画を使った“リアル”な採用でミスマッチを減らせるか? 株式会社moovy
以下続く

《Akari Wakaizumi》

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