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名刺管理アプリで成長したSansanが何故イベントテック事業に取り組むのか【バーチャルイベントの内幕】

MIの11月特集は「バーチャルイベントの内幕」。新型コロナウイルス感染拡大によって多くのイベントがリアルからオンラインに移行しました。そこにはどんな課題と可能性があるのか。イベントのプラットフォーム、イベント主催者の双方をインタビューします。11月27日には多数の登壇者が参加する「バーチャルイベント勉強会」も開催します。

クラウド名刺管理サービス「Sansan」や名刺アプリ「Eight」を展開し急成長中のSansan株式会社が、新規事業としてイベントテック事業に参入すると10月に発表しました。

同社グループでは既存プロダクトとして、イベント管理プラットフォーム「EventHub」、WEBアンケート作成システム「CREATIVE SURVEY」、イベントの書き起こしメディア「logmi」、イベント参加を円滑にする新世代エントリーフォーム「Smart Entry」、そして参加者管理ツールとしての「Sansan」がありましたが、ここに加えて「Sansan Seminar Manager」というB2Bのイベントを管理する統合ツールを発表しました。

名刺管理サービスからスタートした同社がいま何故、イベントテック事業に参入するのか、同社だからこそ実現できるイベントのアップデートとは何か、アフターコロナに向けてどのような未来を描いているのか。同社で本事業を統括する執行役員で新規事業開発室 室長の林佑樹氏にお話を聞きました。

林佑樹
Sansan株式会社 執行役員 新規事業開発室 室長
金融システム開発会社を経て、2011年にSansanに参画。入社後はビジネス開発に長く携わり、「Sansan」や「Eight」などのプロダクトの事業開発を推進。昨年から新規事業開発室で新規のプロダクト開発を統括。

―――名刺管理のSansanがイベントテック事業に乗り出したのはどういった背景があったのでしょうか?

Sansanはクラウド名刺管理サービスから始まりましたので、そういう印象が強いかもしれませんが、ミッションは「出会いからイノベーションを生み出す」という事を掲げていて、テクノロジーによって日本のビジネス課題を解決していこうという考えは2007年の創業から一貫してきました。

その意味でイベントというのはビジネスにおける出会いの一丁目一番地です。ただ、イベントは20年前から体験としてはほぼ変わっていません。自分たちでもイベントを開催する中で、非常に現場でのオペレーションに依存していて、そこを何とかテクノロジーでアプローチできないかというのは既に2年以上取り組んできました。

少しずつプロダクトが揃ってきて、そして中核になる「Sansan Seminar Manager」をローンチするというタイミングで、改めてイベントテック事業として全貌をお見せしたというのが先日になります。ですので、新型コロナウイルスによってオンラインイベントが注目されたので急造したプロダクトではなく、むしろコロナ以前から発表の準備が整っていたのが、状況が変わった事で、改めて機能的に拡充をしてから発表に挑んだというのが実情です。

Sansanが展開するイベントテックのポートフォリオは多岐に渡る

―――イベントでの出会いがビジネスの起点になる、というのは確かにそうですね。イベントといっても多岐に渡りますが、Sansanが狙うのはどういった種類のイベントなのでしょうか?

発表会でお伝えしたのは、イベント管理ソフトウェアだけで世界で5000億円の市場があるということでした。ただ、皆さんが思い浮かべるような、幕張メッセや東京ビックサイトで開催されるような大規模イベントばかりがイベントではありません。

むしろアプローチしたいと思っているのは、企業が単独で小規模に開催するようなB2Bのセミナーです。立派な会場を借りるというよりも、会社の会議室で行われているようなものです。こうしたセミナーはリアルにビジネスに直結していましたが、新型コロナウイルスの影響で開催が難しくなっていて、ビジネスに支障をきたしている会社も少なくありません。

先進的なIT企業であれば、すぐさまオンラインのウェビナーに切り替えた事だと思います。しかしそうした企業ばかりではありませんし、全国を見渡せば、そうならなかった会社の方が多いと思います。色々な技術的な、心理的なハードルがあります。「Sansan Seminar Manager」ではそこをサポートしていければと考えています。

―――具体的に「Sansan Seminar Manager」ではどんな機能が提供されるのでしょうか?

B2Bのウェビナーに費用な機能は全て取り揃えていて、それを使い易いUIでパッケージ化されているというのが最大の特徴だと思います。

セミナーは小規模なものでも社内の色々な部署の人が携わります。イベント募集ページの作成、応募データの収集、イベント当日の受付や来場管理、動画の配信、アンケートの配信と回収、集まったリードの管理や統合など多岐の業務が発生します。それぞれの機能を断片的に提供するのではなく一気通貫で提供する事で効率化すると同時に、色々な人が触っても簡単に使えるUIを目指しました。

僕らならではの機能は色々とあるのですが、例えば複数用意されているテンプレートを活用する事で美しい募集ページを短時間で立ち上げたり、応募フォームではフリードメインのメールを弾く機能や、メールアドレスから会社名を推定して入力をサポートする機能があったり、「Sansan」や「Eight」と連携する事で、QRコードを撮影するだけで登録が完了するエントリーフォーム「Smart Entry」の機能などがあります。

イベントを誰でも簡単に実施できるよう設計されたSansan Seminar ManagerのUI

―――B2Bを意識されているということで、来場者のデータ活用がより重要になると思いますが、その辺りの機能はいかがでしょうか?

もちろんです。イベントプラットフォームの中にはデータを抱え込むものもありますが、「Sansan Seminar Manager」はオープンな思想で作られており、取得した情報をMAツール(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援ツール)に連携できますので、すぐに営業活動に活かす事が出来ます。

データはクレンジングが大変だったりしますが、前述のように、フリーのメールを排除して会社メールを入れてもらうような仕組みがあったり、地味ですが社名から法人マイナンバーを付与する仕組みがあったり、手間暇を掛けてデータを綺麗にしなくてもすぐに活用できるようにしています。セミナーが終わったらすぐに来場してくれた人にアプローチしたいですよね。

あるいはウェビナーでは、例えばZoomなどの参加URLを渡してしまうと、イベントプラットフォームで登録した人が、実際に参加したかどうかをトラックすることが難しいですが、「Sansan Seminar Manager」ではウェビナーのための参加受付用のURLを別途発行する機能があり、そこで視聴者をトラッキングし、視聴してくれたので資料を送ろうとか、それとも申し込んでくれただけなので、後から録画データを送ろうとか、お客さんに合ったアプローチができます。

イベントで取得できるデータは柔軟性が高い。ここで集めたデータを様々に連携して活用する事ができる

―――発表後の反響はいかがでしょうか?

沢山の反響をいただいています。意外だったのはウェビナーに慣れているIT企業ばかりではなく、製造業などのこれまでウェビナーをやってみたいけど、方法が分からない、という企業も多かったということです。先程も話しましたが、イベントや展示会の市場規模に含まれない、小規模な企業セミナーは膨大にあり、それが日本のビジネスの根底を支えている面があると思います。そうしたビジネスが新型コロナウイルスによって危機的な状況にある中で、なんとか前に進もうとしている取り組みをサポートできるのはとても嬉しい事です。

―――市場規模は大きいとはいえ、競合も多いです。例えばZoomも機能を拡充していっていますし、Facebook Liveもオンラインイベントを一気通貫でサポートするようになります。どのようなアプローチを取っていかれるのでしょうか?

あまり他社を競合とは捉えてはいなくて、可能な限り協業していきたいと思っています。特にZoomやFacebook Liveのような動画の配信基盤については自分たちで作るつもりはないですし、非常に優れたソリューションだと思いますので、上手く連携していくというのが答えになるかと思います。

一方で、巨大なグローバルプラットフォームが提供するツールというのは、B2Bのビジネス効果のみを最大化する方向にはなり辛いですし、日本の商習慣をケアしきれるとも思えません。そこに対しては優位性もあると考えています。

今後の開発としてはやはりB2Bではデータが重要ですので、どこまでデータをリッチに、綺麗に出来るかというのが課題になると思います。Zoomなどとの連携をより強化する事で取得するデータを拡充する、あるいは、取得したデータをMAやSFAに綺麗に流し込む事でその後のアプローチを精緻化できるようにする、といった事を考えています。

―――まだ新型コロナウイルスの収束は見えませんが、今後のイベントはどのように発展していくと考えておられるでしょうか?

アフターコロナの時代にはオンラインとオフラインのイベントが共存するようになるはずです。ただし、この1年間でオンラインイベントの利便性を誰もが感じて、それは否定できないものだと思います。ですから、オフラインのイベントは強制的にアップデートが求められる事になると思います。そこにはテクノロジーが必要で、特にデータをどう取得し活用していくか、ここへの試行錯誤が行われると思います。

例えば何万人も訪れるような展示会はこれまではブースの面積で決まった金額が請求されてきました。でも来場者がきちんとデータで捕捉できるようになれば、誰がどのブースに来て、どれくらい滞在して、最終的にビジネスにどう結び付いたかまで測定できるようになるはずです。すると出展費用に対するROI(費用対効果)が分かるようになります。行動データとROIが分かれば、改善する為のアプローチにも繋がりますし、イベント主催者としては面積ではなく効果に対する請求という事も出来るようになるでしょう。こういうアップデートがオフラインでも起きていくのではないでしょうか。

Sansanとしてはオフラインで利用できる専用の受付端末なども開発して提供する予定で、オンライン、オフラインを問わず、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、ビジネスの出会いの起点であるイベントをテクノロジーでアップデートできるよう取り組んでいきたいと思います。

11月特集: バーチャルイベントの内幕

第1回 問い合わせは数百倍に!10年間のノウハウ蓄積が花開くアイティメディアのイベント事業
第2回 名刺管理アプリで成長したSansanが何故イベントテック事業に取り組むのか
・第3回 CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサー 鹿野清氏インタビュー
・第4回 日本コンベンションサービス株式会社 ニューノーマル推進室 副室長 藤泰隆氏インタビュー
・第5回 アジアクエスト株式会社 取締役 デジタルトランスフォーメーション事業部長 岩崎友樹氏インタビュー
・第6回 株式会社ストラーツ 代表取締役CEO 堀江和敬氏インタビュー
・第7回 Comexposium Japan 株式会社 Contents Manager 中澤圭介氏インタビュー
ほか

11月27日(金)開催、オンラインイベント

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■Media Innovation Meetup #21 バーチャルイベント勉強会
日時: 2020年11月27日(金) 17:00-19:00
会場: オンラインでの開催です
参加方法: 登録された方にZoomのURLをお送りします

■スケジュール(仮)
・17:00 開始
・17:05 登壇者様からプレゼンテーション
     アイティメディア株式会社 デジタルイベント事業部 事業部長 滝沢渚氏
     SanSan株式会社 新規事業開発室 室長 林祐樹氏
     CEATEC実施協議会 エグゼクティブプロデューサー 鹿野清氏
     日本コンベンションサービス株式会社 ニューノーマル推進室 副室長 藤泰隆氏
     Comexposium Japan株式会社 Contents Manager 中澤圭介氏
     アジアクエスト株式会社 取締役 デジタルトランスフォーメーション事業部長 岩崎友樹氏
     株式会社ストラーツ 代表取締役CEO 堀江和敬氏
・18:00 パネルディスカッション&質疑応答

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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