エンゲージメントと信頼の醸成を、朝日新聞ジャーナリスト学校 浅居氏・・・メディア業界2021年の展望(11)

新型コロナウイルスによって平時と全く異なる一年となった2020年。みなさんにとってはいかがだったでしょうか? そして2021年に向けてどのような事を取り組んでいくのでしょうか? 今年もMedia Innovationで大変お世話になった皆様に今年の振り返りと来年への展望をお聞き…

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新型コロナウイルスによって平時と全く異なる一年となった2020年。みなさんにとってはいかがだったでしょうか? そして2021年に向けてどのような事を取り組んでいくのでしょうか? 今年もMedia Innovationで大変お世話になった皆様に今年の振り返りと来年への展望をお聞きました。「メディア業界2021年の展望」全ての記事を読む。

“ジャーナリスト”を冠した国内唯一の教育機関である朝日新聞ジャーナリスト学校のディレクターを務める浅居氏は、新聞社が培ってきたノウハウを企業向けに提供する研修事業や、メディアやジャーナリズムを考える雑誌「月刊Journalism」の発行を行っています。今年の振り返りと、2021年への展望を聞きました。

浅居武
株式会社朝日新聞社 朝日新聞ジャーナリスト学校ディレクター
早稲田大学商学部卒業後、第一生命保険を経て1996年朝日新聞社に入社。広告局・広報宣伝本部・社長室・広告会社役員(非常勤)などを経験し、現職。危機管理や広告審査、知的財産分野に精通している。趣味は海外旅行とサーフィン、古戦場巡り。パラレルキャリアとして、一般社団法人の代表理事を務めるなど、社会貢献活動にも取り組んでいる。

2020年はメディア業界にとってどのような年

新型コロナの感染被害に遭われた方々には謹んでお見舞い申し上げます。このコロナウイルスは世界に大きな災厄をもたらし、いまだに混乱と先を見通せない不安が社会全体を覆っています。

メディア業界でも取材から営業、生産現場までかつて経験したことのない激震に襲われ、広告やイベント関連の営業部門では、リーマンショックを超える減収になった社もありました。一方で、メディアの発信する情報の内容や信頼性がフォーカスされました。ニュースが読まれ、多くのサイトが高いPVを記録したことは、パンデミックに怯える人々が正しい情報を希求している証左と考えられます。ビジネス面では、これまで会場確保の点から開催の難易度が高かった数万人規模のリアルイベントが、オンラインやLIVE配信によって容易に開催できるようになり、5GとAR・VRの組み合わせは、LIVEイベントの臨場感を高めユーザーエクスペリエンスを向上させました。また、仕事の環境も大きく変容し、ビデオカンファレンスによるテレワークの一般化は、これまでの“メディアでの働き方”も再考させることになりました。

業界にとって、コロナという大きな災いから立ち直ることができるかはこれからですが、これまで旧態然としていた一部の業界にとっては、否が応でも構造改革を求められ、これまでの常識を考え直してみる契機の年になったと思います。

これからのメディアに求められること、直面する課題

メディアを取り巻く環境は年々複雑化し、競争は激化しています。これまで広告の“出し手”だった企業がオウンドメディアなどにより自ら情報を発信し、個人はSNSを活用することにより誰もが記者になり、動画投稿やサロンなどの課金や“投げ銭”でマネタイズできる時代になりました。今後は視聴率や部数、PVなど量的な指標による媒体評価だけでなく、メディアエンゲージメントを高めユーザーの信頼を醸成していくことが求められてくると考えています。

デジタルメディアの世界でも、検索エンジンのアルゴリズムをハックし低レベルのコンテンツを大量に製作して、トラフィックやリード増を狙う手法は終わりました。先行きが不透明な中、人々は正確で役に立つ情報を欲しています。またコンテンツ製作においても、従来の視座を変える必要があるでしょう。例えばテーマやプロジェクト先行ではなく、人を惹き付けるような独自の世界観を持ち、ユーザーインサイトの“文脈”を理解できる編集長やプロデューサー、またはインフルエンサーを最初にアサインすること、ローンチ段階のスケールは小さくても熱量の高いユーザーへのリーチが見込め、今後ファンを創出しグロースが期待できるようなテーマ(内容)であること、などが重要になるかもしれません。

コンテンツのクオリティーとコストというトレードオフの関係にあるものを、どう工夫し折り合いをつけていくか、それが大きな課題ではないでしょうか。

2021年に取り組みたいと考えていること

これまでがそうだったように、人類はいずれこのウイルスを収束させるでしょう。2021年は、緊急事態宣言などによる外出・消費控えの反動から、“ペントアップデマンド”が期待され、バーチャルからリアルへの回帰も顕著になると考えます。一方、withコロナ時代のデジタル化の流れが元に戻ることはなく、従来の枠組みも大きく変貌していくと思われます。

朝日新聞社は、2016年に「ともに考え、ともにつくる~皆様の豊かな暮らしに役立つ総合メディア企業へ」という企業理念を掲げました。これは、それぞれのライフステージやサイクルに合わせて、質の高い情報やサービスを様々な方法で、読者・広告主・関係者にお届けできる企業へ進化することを目指したものです。また、朝日新聞ジャーナリスト学校は、「ジャーナリスト」を冠した国内メディア唯一の研修・教育機関で2006年に発足しました。記者教育、「文章術」などの企業・団体向け研修の提供、「デジタルナイト」などの一般向けイベントの開催、講師派遣、月刊Journalismの発行をしています。

自身は、ウイルスが収まり自由に海外渡航できる状況が戻れば、ワールドワイドでワクワクするような取り組みをしてみたいと思っています。例えばロンドン在住のジャーナリストが登壇し全世界から参加者を集める、自分は南カリフォルニア・ハンティントンビーチでの早朝サーフィン後にコーディネート、ファシリテイトする、そんなオンラインラインイベントのプロデュースです。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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