【特集】成長を続けるYouTube経済圏、GDPへの貢献は160億ドル、34万人の雇用を創出

全世界で毎月20億人がログインし、日本でも月間のユーザー数が6500万人に達したというYouTube。視聴者数が拡大することによって、それがもたらす経済的なインパクトも巨大なものになっています。 グーグルの親会社であるアルファベットが発表している決算資料によれば、…

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<p>Photo by Sean Gallup/Getty Images</p>
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全世界で毎月20億人がログインし、日本でも月間のユーザー数が6500万人に達したというYouTube。視聴者数が拡大することによって、それがもたらす経済的なインパクトも巨大なものになっています。

グーグルの親会社であるアルファベットが発表している決算資料によれば、YouTubeの2020年度の売上高は197億7200万ドル(約2兆円)。四半期推移を見ると新型コロナウイルスの影響も見られましたが、急回復。第4四半期(10-12月)は過去最高を更新しています。

経済効果は160億ドル、34万人の雇用を創出

これだけでも巨大ですが、オックスフォード大学が2020年に発表した「From Opportunity to Impact: Assessing the Economic, Societal and Cultural Benefits of YouTube in the US」によれば、YouTubeが2019年に米国のGDPに与えたインパクトは160億ドル、34万5000人のフルタイムの雇用を生み出したと算出されています。同時期のYouTubeの売上高は151億4900万ドルで、同等以上のインパクトが社会にもたらされている事になります。

YouTubeによれば2019年に英国では14億ポンド(約2000億円)、3万人の雇用を生み出し、フランスでは5億1500万ユーロ(約650億円)、1万5000人の雇用を生み出したということです。世界にもその経済圏が広がっています。

オックスフォード大学の調査ではYouTubeの経済効果を、プラットフォーム内とプラットフォーム外に大別し、プラットフォーム内でもたらされる効果を「直接」「間接」「誘発」と分類しています。

直接効果としてはクリエイターやメディア企業、音楽業界に直接支払われる収益があります。YouTubeでは過去3年間に300億ドルを支払ってきたとしています。間接効果としてはYouTubeのマーケティングによって別のサプライチェーンで販売が促進される(音楽や映画が売れるといった)ものがあり、誘発効果としてはYouTubeに関連して飲食や外出がされたり、家庭用品が購入されたり、といった事があります。

プラットフォーム外ではパン屋さんがYouTubeの動画を見てより売れるパンを作れるようになったり、ミュージシャンがYouTubeの視聴者に対してより多くのチケットが販売できるようになる、といった効果が挙げられています。

2020年は新型コロナウイルスの影響がありましたが、チャンネルの収益化プログラムであるYouTubeパートナープログラムに新規参加したチャンネル数は前年の2倍に拡大。第1四半期(1-3月)の総再生時間は25%増加、上半期(1-6月)にはライブストリーミングが45%増加、1000万以上のチャンネルがライブストリーミングを初めて実施したそうです。

あらゆる活動がオンラインに移行した事はYouTubeのライブストリーミングに大きなインパクトを与えています。エコノミストインテリジェンスがYouTubeのスポンサードで公表した「Economics of Creativity」によれば、パンデミックの期間中に、英国で1000万人がオンラインでの史跡訪問に支払い、800万人がバーチャルイベントの参加に支払ったということです。こうした活動への参加は16~24歳が41%、45歳以上は18%だったそうです。

またこうしたオンライン活動への支払い意欲はパンデミック後にも継続する可能性が高く、97%が引き続きバーチャル体験にお金を払うと回答。ここも若者が主導していて、若者の57%がバーチャル体験にお金を支払うと答える一方、45歳以上では1/3に過ぎなかったということです。

Made with Flourish

クリエイターの支援に全力を注ぐYouTubeの戦略

こうした経済圏の拡大はますます多くのクリエイターをYouTubeに呼び込んでいて、そうしたクリエイターの成功がYouTubeにとっての最優先事項となっています。

核となるのは多様な収益化オプションの提供です。当初は動画に掲載される広告のシェアがメインでしたが、ライブストリーミングでは「スーパーチャット」(スパチャと呼ばれる)や「スーパーステッカー」といった投げ銭的な機能も提供されています。これは配信者に対してユーザーが直接的にお金を届けられるもので7割が配信者に渡ります。

最近導入された新機能では「拍手」もあります。これは拍手のアニメーションを送れるもので、これもユーザーが購入して配信者に届ける事ができます。

拍手画像

さらに拡大しているのがメンバーシップです。これは個別のチャンネルが月額のサブスクリプションで限定コンテンツを提供できるというもので、前回紹介したインフルエンサーの再生回数で第2位だった「東海オンエア」も月額490円のメンバーシップを提供しています。登録すると視聴時に特別なアイコンでメンバーである事が強調され、特別な絵文字が使用できるようになったり、メンバー限定のライブや動画にアクセスできます。

ユーチュラのチャンネル登録数ランキングを参考に、トップ100までをチェックしたところ、17のチャンネルがメンバーシップを提供している事が分かりました。主にYouTuberと呼ばれるチャンネルが大半で、登録数が多いだけでなく、再生回数も多く、熱心なファンが存在するチャンネルが多いと考えられます。値段設定は490円が大半で、これ以外の料金設定をしているチャンネルは極僅かでした。

順位チャンネル名称月額料金
6Fischer’s-フィッシャーズ-490円
7東海オンエア490円
13SUSHI RAMEN【Riku】790円
14JunsKitchen490円
19水溜りボンド490円
38スカイピース490円
41ポッキー490円
44兄者弟者490円
45A.I.Channel490円
48まふまふちゃんねる490円
71メンタリスト DaiGo490円
78ほんだのばいく490円
79Fumiya / FumiShun Base490円
89Pan Piano1190円
96赤髪のとものゲーム実況チャンネル!!190円
97Paolo fromTOKYO90円
99花江夏樹490円

YouTubeによれば、スーパーチャット、スーパーステッカー、メンバーシップというユーザーからの直接収益が大半を占めるチャンネルの数は2020年に前年の3倍に成長したそうです。パンデミックの前半にはYouTubeでも広告収益の低下があり、チャンネル運営者としても別の収益源を求める動きもあったかもしれません。

2021年はショッピングが本格化

さらなる収益化に向けてYouTubeが導入しようとしているのがショッピング機能です。これは動画に登場するアイテムに商品をタグ付けする事で、視聴者が動画を見ながら購買に遷移できるという仕組みです。

既に2020年後半から一部のクリエイターに対してβテストが行われているということですが、「2021年後半には拡大する」ということです。

ショッピングUI画像

新型コロナウイルスの影響で世界的にECの市場が伸びていて、クリエイターの中には商品紹介を得意とするクリエイターも多く存在します。そうしたクリエイターにとっては待望の機能と言えそうです。

◆ ◆ ◆

広告、投げ銭、サブスクリプション、そしてECでクリエイターの収益化をサポートするYouTube。グーグルにとってのビジネスと、経済効果を勘案すると3兆円を超える経済圏へと成長しています。まさにプラットフォームであり、あらゆるビジネスへの応用が世界中で模索されています。改めて考えてみてはいかがでしょうか?

特集: YouTube経済圏のいま

  1. 10のデータで知る巨大プラットフォームとなった「YouTube」のいま
  2. 成長を続けるYouTube経済圏、GDPへの貢献は160億ドル、34万人の雇用を創出

(順次公開予定です)

2月24日(水)にはイベントも開催します!

毎月恒例のMedia Innovation Meetup、第24回となる今回は「今さら聞けないYouTubeの始め方」として、広がり続けるYouTube経済圏について取り上げます。YouTubeのポテンシャル、どのように始めれば良いのか、将来性、その魅力などを語ります。

登壇いただくのは、YouTuberプロダクションのトップリーダーのBitStar(ビットスター)で執行役員を務める泊 大輔氏。同社でコンテンツ制作事業「BitStar Studio」を管掌し、最近刊行された書籍「動画マーケティングの新常識~最強のYouTube活用術~」の監修も行ったというYouTubeのプロ。もう1名はバンタンが4月に開校するVANTAN CREATOR ACADEMYの責任者を務める沼田伸一氏。長年クリエイターを育ててきたバンタンがUUUMと連携して展開するスクールですが、どんな狙いで、どんな教育で動画クリエイターを育てようとしているのか。これからYouTubeに取り組む皆さんにとってもヒントがあるのではないでしょうか。

■Media Innovation Meetup #24 今さら聞けないYouTubeの始め方
主催: Media Innovation(株式会社イード)
会場: オンラインでZoomを使ったウェビナーとなります
価格: 1000円 (Media Innovationのライト会員以上のステータスの方は無料ご招待)
備考: Clubhouseで音声のみ同時配信予定

■スケジュール
・17:00 主催者挨拶
・17:05 進化するYouTubeのいま(Media Innovationより解説)
・17:15 登壇者からプレゼンテーション(15~20分)×2
・18:00 パネルディスカッション
・18:30 終了

※参加登録にはMedia Innovationの会員登録が必須です。ログイン後に下記ボタンから参加登録をお願いします。

※本イベントは有料イベントですが、Media Innovation Guildのライト会員、プレミアム会員の皆様には無料で参加いただけます。月額980円からご利用いただけますのでこの機会にぜひご登録ください(詳細)。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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