現地時間12月1日、米国の大手教科書出版社5社(マクミラン・ラーニング、センゲージ・ラーニング、エルゼビア、マグロウヒル、ピアソン・エデュケーション)は、ECプラットフォーム「Shopify」を提供するカナダのショッピファイ社を提訴しました。Shopify上でデジタル教科書の海賊版を販売する事業者に対して同社が対策を行っていない、と主張しています。
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3万2千件もの著作権侵害を指摘
訴状では、「ショッピファイ社は、デジタル教科書の海賊版をホストし、助け、保護する役割を果たしている。」と指摘。2017年から2021年の間、著作権侵害を指摘する3万2千件以上ものURLを弁護士を通じて送ったにもかからわず、ショッピファイ社はこれに対処せず、野放しにしてきた、と主張しています。出版社5社は、著作権侵害や商標の偽造についての損害賠償や、今後の著作権侵害行為の禁止などを求めています。
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ショッピファイ社は、「当社は著作権や商標権の侵害を含む、潜在的な利用規約違反に対処する複数のチームを持っており、違反が見つかった場合は躊躇なく販売者を処分する」という声明を出しています。
米メディア「インサイド・ハイヤー・エド」の取材に対し、コーネル大学ロースクールの教授であるジェームズ・グリメルマン氏は「苦情を受けて閉鎖されたShopify上のショップのいくつかが、名称を変更して営業を再開した、という証拠がある」「ショッピファイ社が著作権侵害を助長しているというよりは、侵害の排除と抑制に多くのリソースを割いていないという方が正確」と述べています。
米国では教科書価格が高騰
この問題の背景には、米国における教科書価格の高騰があると思われます。米国の教育出版市場は、およそ80%をピアソンやマグロウヒルなど5つの主要出版社が占めているという寡占状態にあり、価格は2008年から2018年までの10年間で67%も上昇したといいます。
グリメルマン氏は、「教科書出版社が、教科書の価格が非常に高いことと、インターネットに精通した若者たちの『支払いを回避したい』というニーズの両方に悩まされている」と述べています。教科書の海賊版が流通していることが原因で教科書が値上げされ、さらに学生が教科書を買わなくなる、という悪循環に陥っているようです。