日本経済新聞社傘下の英有力経済メディア「フィナンシャル・タイムズ(Financial Times、以下 FT)」は、英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に合わせ、期間限定で記事を無料で公開しました。「journalism.co.uk」が紹介するところによれば、この無料公開期間中、匿名でのトラフィックが28%、無料登録者が200%増加した一方で、新規サブスクリプション数は12%減少したとのことです。
FTの担当者は、今回の試みで得られたインサイトを報告し、示唆に富むサブスクリプション獲得戦略を紹介しています。
「気候」だけでなく、全ての記事を公開
FTは、11月に開催されたCOP26に合わせ、40時間(英国時間11月2日午後5時から4日午前9時)にわたって、全ての有料記事を無料公開しました。一部の記事のみを無料化することが難しいため、というのが理由の一つのようです。
報告によれば、記事を有料で公開している場合の平均データと比べ、サイト全体の匿名トラフィックは28%、無料登録者は200%増加しました。また、「気候」トピックの記事は通常の7倍も読まれた一方で、新規サブスクリプション数は12%減少しました。
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気候変動について関心が高まるなか、FTは今年1月に「気候」トピックを新設。COP26開催期間中には、COP26会場からのレポートに加え、独自のレポートやビジュアルコンテンツ、ポッドキャストなどを公開しました。
FTの「無料公開」戦略
一時的に新規サブスクリプションは減少したものの、FTの消費者収益担当マネージング・ディレクターであるフィオナ・スプーナー氏は、結果に満足しているといいます。
FTは、ページを訪れるユーザー全員に、ページ訪問の頻度や契約、解約などを示すエンゲージメント・スコアを割り当てています。これにより、ユーザーの趣向を把握し、より好まれるコンテンツを提供できるようにしているといいます。一時的であっても、ページ訪問者が増え、収集したデータを活用することで長期的には有料サブスクリプションを増やすことに繋がります。
また、FTはサイトを無料にすることで、購読者が今回の無料公開キャンペーンを知人に紹介する、という「ネットワーク効果」を得たといいます。実際、ソーシャルメディア経由のアクセスは期間中に39%増加。多くの企業や関連団体がキャンペーンを宣伝してくれたことも要因の一つのようです。
スプーナー氏は、「FTの読者は、自分たちのコンテンツに価値を見出し、時には他の人々の見方をも変えたいと思うものです」と述べています。
FTはこれまでにも、2016年の「Brexit」国民投票時や、「新しいアジェンダ」キャンペーンなど、特定のトピックを強調した1日限りの無料公開を実施してきました。こういったキャンペーンを頻繁に実施するのではなく、多くの人に関係する特定のトピックに基づいて、「1日だけ」のキャンペーンを行うことで、大きな効果が得られているというわ