ユーザー視点のビジネス展開を、Piano塩谷氏・・・メディア業界2022年への展望(5)

今年もメディア業界は様々な事がありました。Media Innovationではいつもお世話になっている業界関係者の皆様に「2021年の振り返りと、2022年のメディア業界」というテーマで寄稿をお願いしました。年始にかけて順次掲載して参ります。いろいろな振り返りから、皆さんが…

特集 その他
ユーザー視点のビジネス展開を、Piano塩谷氏・・・メディア業界2022年への展望(5)
  • ユーザー視点のビジネス展開を、Piano塩谷氏・・・メディア業界2022年への展望(5)
  • ユーザー視点のビジネス展開を、Piano塩谷氏・・・メディア業界2022年への展望(5)
  • ユーザー視点のビジネス展開を、Piano塩谷氏・・・メディア業界2022年への展望(5)

今年もメディア業界は様々な事がありました。Media Innovationではいつもお世話になっている業界関係者の皆様に「2021年の振り返りと、2022年のメディア業界」というテーマで寄稿をお願いしました。年始にかけて順次掲載して参ります。いろいろな振り返りから、皆さんが2022年を考えるきっかけにしてもらえればと思います。

Pianoは、サブスクリプションやDMPなどのプラットフォームを開発し、パブリッシャーに提供している米国の企業。日本法人も精力的に活動していて、日本のパブリッシャーでの採用実績も多くあります。PIANO Japan株式会社 代表取締役社長 塩谷氏に2022年への展望を伺いました。

塩谷亮
PIANO Japan株式会社 代表取締役社長
日本オラクル, 日本IBMなどの外資系IT企業にてコンサルティング並びに営業活動に従事。2015年よりスマートフォン診断等のモバイルソリューションを扱う米国スタートアップ企業の日本代表に就任。製品を日本市場向けに改善し大手通信会社を中心に導入を完了させ、成功裡に立ち上げ後進に譲る。その後、CRMプラットフォームを提供するPega Japanにて、金融業界のセールスを担当し、デジタル化を推し進める。2020年3月PIANO Japan にSales Vice Presidentとして入社、1月1日から現職。コンサルティングのバックグランドを活かして、カスタマーサクセスに向けた営業活動に従事している。週末は趣味の草野球とフットサルに加え、15 年ぶりに再会したゴルフの練習、ラウンドとアクティブに過ごす。

今年のご自身の仕事を振り返っていかがだったでしょうか?

先ず、Withコロナ渦でのワークスタイルに完全に対応できました。以前では考えられなかった、営業活動においてお客様と一度もリアルにお会いする事なく契約締結に至る事が普通になりました。東京近郊以外のお客様とも時間の制約を気にせずに商談する事が可能となりビジネスのチャンスが一気に増えたのは、コロナ渦がもたらした怪我の功名の一つでしょうか。

また、当社ではサブスクリプションのプラットフォームを提供していますが、全てのお客様において有料会員数およびサブスクリプション収益が増加しており、お客様によっては2.7倍の有料会員数の成長がありました。メディア業界において「サブスクリプションモデルの成功は一部の企業を除いて難しい」と悲観的な意見を耳にしますが、「魅力的なコンテンツと施策さえ正しければそんな事はない、成功する」という事を確信した1年でした。

今年一番注目した出来事は何だったでしょうか?

2021年6月のGoogleからの「Chromeのサードパーティークッキーのサポートを2023年後半に延期する」という発表です。

弊社では昨年来、様々なイベントやお客様との会話の中でCookieレスの世界は待った無しの状況で、早急に準備に取り掛かる必要があるとお伝えしてきました。元々は2022年に廃止される予定でしたが、どこか「そうはいっても使い続けられるだろう」という思い込みのあるメディア様もあり、検討を先送りされるお客様や、そもそもお問い合わせの絶対数も発表前と比べると少なかったと感じます。

発表後は、逆にこれが本当に最後だというメッセージを真摯に受け止めたのか、Cookieレスの世界で運用広告の売上減少が避けられない中、どのような対応をすべき かというお問い合わせが増えました。

メディア様からの問い合わせに加えて、広告代理店様からも純広告・タイアップの販売促進戦略についての相談・お問い合わせが増えた事もこの発表が世間に与えた影響度の高さが伺えます。

2021年の出来事で、今後の焦点となりそうな事は何だと思いますか?

メディアの新しい収益モデルという観点において幾つか印象的な出来事がありました。New York Times から、「クッキング」や「ゲーム」の有料会員が100万人を超えたことが先月公開されましたが、それぞれを入口としてニュース会員にもなる、もしくは「クッキング」と「ゲーム」を組み合わせたバンドルプランが提供されている事も有料会員ビジネスが劇的に成長した要因とも言われています。

また、とある北海道の地方新聞社のサブスクリプションビジネスにも注目しています。紙面購読者には無料で電子版を提供するというモデルが多い中、紙面購読者にも追加で1,000円の対価を求める代わりにそのエリアに特化した情報を電子版のみで提供する事で、電子版の有料会員数がここ1年間で15%ほど増加し、1万人に届く勢いとの事です。

両社に共通している点はユーザへ提供する有料サービスの価値を熟考し、さらにいままでの当たり前となっていたやり方を変化させ、ユーザ視点でのサービス提供を考え抜いてビジネス展開している点かと思います。

2022年への意気込みを聞かせてください

当社ではサイトを初めて訪れる一見さんを捉え、エンゲージメントを高めさせ最終的に囲い込む(有料会員化)までカスタマージャーニーのEnd2Endをサポートするプラットフォームを提供していますが、併せてストラテジックサービスによる、数多くのお客様のサブスクリプションビジネスのご支援から得たノウハウや弊社独自の収益向上メソッドを基にしたビジネスコンサルテーションサービスを提供しています。

これまでもオプティマイゼーションサービスにより、当社プラットフォーム導入後の、施策実施を行っていくことによるサブスクリプションビジネスの最適化をご支援するサービスは提供してまいりました。

一方でサブスクリプションを開始したいもののコンセプトが固まらず、一歩を踏み出せないお客様へ十分なご支援が出来ておりませんでした。来年は、プロダクトストラテジーをご提供することで、「どのようなユーザ層に」「何が求められていて」「幾らであれば購入するのか」という点について徹底的にリサーチを行い、お客様と議論しながらビジネスを並走し、勝ち続ける有料コンテンツサイトを立ち上げていくことで、真の意味で「メディア企業にとってのサブスク元年とする」事が私の2022年の目標です。

《Manabu Tsuchimoto》

関連タグ

Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

特集