【序章】メディアを支える大黒柱、進化するCMSについて考える

久しぶりの特集企画となってしまいましたが、Media Innovationの2022年8月企画は「メディアを支える大黒柱、進化するCMSについて考える」と題して、メディアを運営するためのプラットフォームであるCMSについて取り上げます。8月31日にはオンラインイベントも開催。ぜひご参加ください。

コンテンツ管理から、メディア運営のための統合プラットフォームに

CMSとはContents Management Systemの略で、その名の通り、コンテンツを管理し公開するためのソフトウェアです。デジタルメディアのCMSは大まかに言えば、コンテンツを投入する先であり、コンテンツに様々な設定を加えて、一定の形に整えてインターネットに発信していくという、コンテンツ発信の中核を担います。

CMSのような基盤がない時代、インターネットでコンテンツを発信する際には「HTML」と呼ばれるプログラミング言語で1つ1つのページを作成し、更新していった時代もありました。CMSが誕生したお陰で、1つ1つのページを作成する手間は過去のものとなり、大量のコンテンツを、一定の品質・フォーマットで提供できるようになりました。

インターネットが進化して様々な表現手法が生まれ、ユーザーが接するプラットフォームも多様化しました。そうした中で当然CMSも進化していき、単にコンテンツの出し入れをするだけでなく、読者との関係性構築、広告ビジネス、業務ワークフローの管理など、メディアの業務を包含する基盤のプラットフォームへと進化してきています

米ワシントン・ポストが開発し、日本ではDACが提供しているArcXPの機能。中心にWebskedというワークフローのシステムが存在。単にコンテンツを管理するだけでなく働き方まで規定するものとなってきている(公式サイトより)

つまりどんなCMSを使うかが、提供できるメディアの形をある程度規定し、編集部の働き方を大きく左右する存在となっています。これまでは目立たない「縁の下の力持ち」でしたが、今やしっかりしていないと家が崩れる「大黒柱」になったということです。「ウチのCMSって使いづらいんだよね」という声はあちらこちらで聞かれますが、その嘆きを放置する事は致命傷になるかもしれません。

自分たちにあったCMSを選定するために

既にメディアを運営している方で乗り換えを検討している場合も、これから新しいメディアを立ち上げようとしている場合も、選択肢は大きく分けて3つあります。

  1. 既成のCMSを利用する
  2. オープンソースのCMSを活用して開発する
  3. ゼロから自分たちで開発する

(1)既成のCMSを利用する

世の中には主にSaaSで提供されている様々なCMSが存在します。下図で日本で提供されている主なメディア向けのCMSを挙げてみました(ArcXPは米ワシントン・ポストの開発ですが日本ではDACで展開)。軸はシンプル←→多機能としましたが、左側は主にオウンドメディアやコンテンツマーケティングの文脈で活用される事が多く、右に行くと出版社やデジタルメディア企業で活用される事が多いものになっています。

当然多機能であればあるほど価格が高い傾向にありますが、その分、メディアに必要な機能をオールインワンでカバーしていたり、サポートが充実しているというようなメリットが存在します。CMSは一度導入すると、乗り換えるのは様々なハードルがありますので、自分たちのやりたい事を見極めて、それをカバーできるCMSを慎重に検討する必要があるでしょう。

(2) オープンソースのCMSを活用して開発する

無料のオープンソースソフトウェアとして提供されているCMSも多数あります。代表格がWordpressです。W3TechsによればWordPressはウェブサイトの43.0%で採用されていて圧倒的なシェアを誇ります。Wordpressは膨大なテンプレート(デザイン)とプラグイン(拡張機能)が提供されていて、「望むことは何でもできる」と言っても過言ではありません。そのまま利用することもできますが、当然、オープンソースですのでソースが公開されていて、自由に誰でも拡張可能ですので、これをベースに拡張していく事もできます。

近年ではヘッドレスCMSと言われるソフトウェアも増加しています。ヘッドレスCMSはフロントエンド(読者がアクセスする部分)が存在せず、記事入力やコンテンツ管理などバックエンドのみをカバーしているものです。こうしたCMSをベースにすれば爆発的に広がるプラットフォームやフォーマットに対して、より自由度高く、拡張していくことができ、自分たちが望むようなメディアを作る事ができるでしょう。

(3) ゼロから自分たちで開発する

CMSを自分たちでゼロから開発するという選択肢も当然あります。上記のArcXPのようにCMSがカバーする領域は広がっていて、自前で開発するのは困難になりつつありますが、ニューヨーク・タイムズの「Scoop」、ハーストの「MediaOS」、コンデナストの「Compass」など、巨大パブリッシャーは自前で開発する傾向にあります。ワシントン・ポストの「ArcXP」、Vox Mediaの「Chorus」など、自社で利用するだけでなく外販して収益を上げようとする企業もあります。Media Innovationを運営するイードも自前の「イードCMS」を開発・運用しています。

一方で自前で開発するということは、優秀なエンジニアを雇用するか、適切な開発パートナーを探す必要があります。パートナーを見つけるにしても、そのマネジメントは自分たちで行う必要があります。エンジニアは貴重なリソースで市場価値も高まっています。理想を目指して自前で開発するにしても相応のコストとリソースを投下する必要がある事は理解しておく必要があります。

CMSのトレンドを見ればメディアの未来が分かる

どんなCMSを利用するかによってメディアの形が規定され、働き方も規定されていきます。CMSをどうするかは、単に事業戦略ではなく、経営戦略となってきています。

CMSによってメディアの形が決まるということは、CMSの動きを見ればメディアの未来が見えてくるということでもあります。表にどんなコンテンツが出てきているのか、というのと同じくらい、「Super Poster」(BuzzFeed)や「Composer」(The Guardian)がどう変化していくのかを見ていくべきなのです。きっと様々な気付きがあるはずです。

というわけで8月特集企画は「メディアを支える大黒柱、進化するCMSについて考える」として複数の記事をお伝えしていきます。さらに31日にはイベントも開催しますので是非チェックしてみてください。

2022年8月特集 メディアを支える大黒柱、進化するCMSについて考える

1. 【序章】メディアを支える大黒柱、進化するCMSについて考える
2. 【解説】2022年のCMSトレンドを知る
3. 【解説】米国メディアを支えるCMSの動向(続)
4. 【インタビュー】note株式会社「note pro」について
5. 【インタビュー】株式会社日本ビジネスプレス「MediaWeaver」について
6. 【インタビュー】HOUSEI株式会社 CMSについて
7. 【インタビュー】株式会社スマートメディア「Clipkit」について
8. 【インタビュー】デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社「ArcXP」について

【8月31日(水)開催】Media Innovation Meetup #34 メディアを支える大黒柱、進化するCMSについて考える

・日時 2022年8月31日(水) 17:00~18:30
・会場 Zoomによるオンライン開催
・価格 1000円(Media Innovationライト会員、プレミアム会員は無料)

登壇されるのは、出版社やデジタルメディア企業など幅広い顧客を持つ国産CMSの雄「Media Weaver」を展開する日本ビジネスプレスの執行役員・長島章夫氏、クリエイターが自ら発信するプラットフォームでビジネス向けの「note pro」をCMSとして展開するnoteのマーケティングチームリーダーの津隈和樹氏、多くの新聞社のDXを支援するHOUSEIの執行役員・川田京三氏、それからSEOに最適化したメディアを簡単に立ち上げられる「ClipKit」を展開するスマートメディアです。

※本イベントは有料イベントですが、Media Innovation Guildのライト会員、プレミアム会員の皆様には無料で参加いただけます。月額980円からご利用いただけますのでこの機会にぜひご登録ください(詳細)。

イベントの詳細はこちらから

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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