本記事はThe Conversationに掲載された、イギリスのCardiff Universityでコミュニケーション学を専門とするJustin Lewis教授による記事「Tim Davie appointed to run the BBC: he faces some toughchallenges」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。
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BBCの新局長としてティム・デイビー氏が、トニー・ホール氏の後任に任命されたことは驚くことではありません。BBCスタジオの最高経営責任者であったデイビー氏は、グローバルな競争が激化する中、BBCの幹部の1人として信頼され、また彼の知見や手腕をBBCに還元できるかテストされているのでしょう。
BBC理事会がこの役職に初の女性を任命しなかったことは残念なことです。新しい局長は、給与、リーダーシップ、才能に関するジェンダー平等に関する懸念に引き続き対処する必要があるでしょう。これは、デイビー氏が抱える多くの試練の内の1つと言えます。
おそらく彼の試練の中で最も困難なものは政治的な問題でしょう。公共放送局として、BBCは伝統的に政治的にも幅広い層から支持を得てきました。しかし、一方で公共放送局の存在に対し嫌悪感を抱いている保守党の右派のような勢力も存在します。現在彼らの多くは政府内で精力的に活動しています。ボリス・ジョンソン首相を囲んでいる勢力は、前回の選挙で当選した後から牙を研ぎ続けており、このことはBBCにとっては厳しい時代の到来を意味しているのかもしれません。
彼らは、現政権が抱えているBBCへの反感を共有している新聞社の勢力によって構成されています。彼らの行動原理は金銭的な自己利益でしょう。つまり、こうした勢力の動きの背景には、BBCが弱体化すればするほど、彼らの潜在的な市場が大きくなるという状況があるのです。
BBCに対する反対勢力の活動はコロナウイルス下で鎮静化しました。ロックダウン規制は大部分のメディア組織と同様に、BBCにも大きな打撃を与えているからです。しかし、感染爆発の初期段階から英国において、信頼できる公共放送局の重要性が叫ばれています。BBCは、NetflixやAmazonなどのグローバルプロバイダーがこれまで不可能だった方法でコロナウイルスに対応し、『I Have I Got News For You』や『Archers』といったロックダウンに対応した作品を作成しました。
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