帝国データバンクは、印刷業の倒産・休廃業解散の発生状況について調査結果を公表しました。
2025年度の印刷業の休廃業・解散(廃業)は230件で、前年度比18.6%増(36件増)となり、年間で過去最多を更新しました。倒産(法的整理、負債1000万円以上)の91件と合わせると、年間300件超の印刷業者が市場から退出したことになります。
その背景には、デジタル化による「ペーパーレス化」の進展があります。インボイス制度の導入で紙の伝票・帳簿印刷の需要が減少したほか、アプリやSNSの台頭によりチラシ・DMの需要も縮小しました。「新聞の折り込みチラシがスマホでのデジタル広告に取って代わられた」との声もあり、紙需要の消失が経営体力をむしばんでいます。
コスト面でも厳しい状況が続いています。印刷用紙やインクなどの資材高騰に加え、電気代、物流費、人件費といったあらゆるコストが上昇しています。しかし需要減のなかで失注を恐れ、コスト上昇分を販売価格に転嫁できず、利益の出ない受注が常態化しているケースが多いとされます。
「巨額の設備投資による大量印刷・低コスト化」を前提としたビジネスモデルも、需要減と稼働率低下により投資負担が重荷になっています。食品メーカーやファストフード店向け食品包装材の印刷を手がけていた中堅印刷業では、大型設備投資に伴う減価償却負担と原材料高騰で自力再建を断念した事例がありました。本業の需要減を補うため健康食品販売や飲食店経営に参入したものの失敗し、経営体力を損耗したケースも報告されています。
一方、WEBサイト構築やAR技術の活用、動画制作など「デジタルソリューション営業」への事業転換を図る動きも出ています。廃業・撤退の相次ぐ状況を好機ととらえ「残存者利益」の獲得を狙う事業者や、インバウンド需要で伸びる土産菓子のパッケージ印刷など局地的なニーズを取り込んで売上を伸ばす印刷業も見られます。
ただし、印刷業全体の売上高はピークの2007年度(8.3兆円)に比べて約7割の水準にとどまっており、20年で3割減少しました。人材確保の困難や代表者の高齢化も深刻で、業界環境の好転材料が乏しいなか、事業を諦める印刷業は今後も増加する可能性が高いと帝国データバンクは分析しています。

