本記事はThe Conversationに掲載された、アメリカのClarkson Universityでコンピューターサイエンスを専門とするJeanna Matthews教授による記事「How fake accounts constantly manipulate what you see on social media – and what you can do aboutit」をCreative Commonsのライセンスおよび執筆者の翻訳許諾の下、掲載するものです。
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Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSのプラットフォームは、友人や家族、興味のある人とつながるためのツールとして作られました。しかし、SNSを利用している人なら誰でも知っているように、最近のSNSは対立的な関係を生む場になってきています。
ハッカーや外国政府が人々の行動を操作し攻撃するためにSNSを利用しているという報告を聞いたことがあるでしょう。それがどのように可能であるか疑問に思うかもしれません。SNSとセキュリティを研究しているコンピュータサイエンスの教授としてその疑問に回答していこうと思います。そして、問題に対し何ができるかについてのいくつかのアイデアを提供しようと思います。
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ボットと靴下人形
SNSのプラットフォームは、単にあなたがフォローしているアカウントの投稿を表示するだけではありません。アルゴリズムを使って、「いいね!」や「投票」に基づいて、あなたが見ているものをキュレーションします。投稿は一部のユーザーに表示され、そこでポジティブにでもネガティブにでも多く反応される程、他のユーザーにも表示されることになります。悲しいことに、嘘や過激な内容の投稿は、より多くの反応を得ることができるため、すぐに拡散されてしまいます。
しかし、誰がこの「投票」をしているのでしょうか?多くの場合、それはボットと呼ばれる実際の人間とは対応していないアカウントの集団です。ボットは多くの場合、裏社会のハッカーにより管理されています。例えば、COVID-19について議論しているTwitterアカウントの半数以上がボットであると報告する研究者もいます。
SNSの研究者として私は、同じプロフィール写真に「いいね!」投稿を一斉に行っているアカウントを何千個も見てきました。また、一日に何百回も投稿しているアカウントも見たことがあります。フロリダ出身の「全米愛国軍の妻」を名乗るアカウントが移民について英語で執拗に投稿しているのを見たことがありますが、そのアカウントの履歴を見ると、以前はウクライナ語で投稿していたことが分かりました。
このような偽アカウントは「靴下人形」と呼ばれ、別のIDを介して隠れて投稿を行っています。多くの場合、このような詐欺行為はアカウントの履歴を見れば簡単に判明します。しかし、場合によっては、靴下人形のアカウントを本物のように見せるために大きな投資が行われていることもあります。
例えば、7万人のフォロワーを持つジェナ・エイブラムスというアカウントは、その外国人恐怖症や極右的な意見でニューヨーク・タイムズなどの主流メディアから引用されていましたが、実際にはロシア政府が出資しているトロールファームであるインターネットリサーチエージェンシーが管理している発明品であり実在している人物ではありませんでした。