NTT西日本と朝日放送グループHDの合弁会社である、株式会社NTTSportict(大阪市都島区、中村正敏)が「STADIUM TUBE」というAIソリューションで民放ローカル局への営業を強めています。
NTTSportictは、イスラエルのPixellot ltd.が開発した、撮影・編集・収録を無人で行えるAIカメラ「Pixellot」によってスポーツ映像の配信を行う企業で、同社設立前の2019年7月には、朝日放送グループHD、NTT西日本、朝日新聞社、電通および日宣によるAIカメラを活用したスポーツ映像配信事業実証実験が行われていました。

近年、国内スポーツ市場の拡大と5G技術の発展に伴い、スポーツ映像配信市場も大きな成長が見込まれています。しかし、人員や費用の問題から、プロスポーツや大規模な大会の配信にとどまり、アマチュアスポーツや地域スポーツでは映像配信があまり進んでいません。同社は、無人カメラにより配信コストを低下させることで、アマチュアスポーツ・地域スポーツ配信市場の拡大を目指しています。
地域スポーツ映像の配信を進めるうえで同社が目を付けたのが、民放ローカル局です。2021年6月1日に、愛媛県を放送地域とするNNN系列の放送局である南海放送と、「AIソリューションを活用したスポーツ映像配信に関する共同事業」の協定を締結すると、今日までに民放ローカル10局と同様の協定を締結しました。今年4月に入ってからは、二週間に一局ずつ協定を結んでいます。協定の内容としては、NTTSportictの提供するAI映像ソリューションを用いて地域スポーツ映像を撮影し、各テレビ局が自社のウェブサイトやアプリで配信やDVD映像の販売を行うということです。
テレビ局側の背景には、キー局の放送から配信への転換が透けています。テレビからネットへの視聴者のライフスタイルの変化に伴い、民放キー局は自社配信サービスの強化や、定額動画配信サービス(SVOD)へのコンテンツ供給を急いでおり、昨年10月には、TBSがSVOD最大手NetFlixへの独占配信を行いました。
こうした状況で苦境に立たされるのが、ローカル局です。ローカル局は、キー局製作番組の放送による配信料収入の割合が高く、独自番組の制作による広告費の割合が低い現状にあります。そのため、キー局が配信に力点を置き、地域を問わずキー局制作番組が視聴できるようになれば、ローカル局は収益構造の転換を進めざるを得ません。そうした事情から、これまで放送枠の都合上放送できなかった地域スポーツを配信することで、地域を取材し、地域情報を集めるローカル局の強みを活かし、新たな収益を得たい考えです。