【メディア企業徹底考察 #83】前社長逮捕のADK、早期再上場のベインの目論見は外れて長期戦に突入か?

広告代理店国内第3位の株式会社ADKホールディングス(旧アサツーディ・ケイ)の元代表取締役社長・植野伸一容疑者及び元役員計3名が、東京オリンピック・パラリンピックを巡る贈収賄事件で逮捕されました。植野容疑者は2022年10月19位置付で退任、新社長に執行役員で社…

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広告代理店国内第3位の株式会社ADKホールディングス(旧アサツーディ・ケイ)の元代表取締役社長・植野伸一容疑者及び元役員計3名が、東京オリンピック・パラリンピックを巡る贈収賄事件で逮捕されました。植野容疑者は2022年10月19位置付で退任、新社長に執行役員で社長補佐だった大山俊哉氏が就任しました。

2017年12月にアメリカの投資ファンド・ベインキャピタルが、TOBでADKの株式87.05%を取得していました。買収直後は3年程度で再上場するとの観測もありましたが、社長逮捕という不祥事でベインの目論見は外れたことになります。

ファンド傘下にあるADKはどこへ向かうのでしょうか?

ADKの甘い汁を吸い続けたWPP

アサツーディ・ケイは1999年1月に旭通信社と第一企画が合併して誕生した会社。合併前の1998年8月にイギリスの大手広告代理店WPPグループとの間で資本業務提携に係る契約を締結。ジョイントベンチャーの設立、広告主の共同開拓などを行ってきました。

この資本提携はアサツーディ・ケイに暗い影を落とします。WPPが本性を現したのが赤字となった2010年12月期の決算。そこからWPPは高配当を要求します。20円だった配当は2011年12月期に特別配当89円を含めて109円、2014年12月期も特別配当を実施して571円となりました。

植野伸一前社長は資本関係の解消に向けて協議を開始。WPPは頑なにそれを拒み、2017年3月の定時株主総会では植野伸一前社長の再任に反対票を投じて退任に追い込もうとしました。

WPPとの提携において、アサツーディ・ケイは本業での成果を見出すことができませんでした。いわばWPPの金づるになっていた状態です。

ホワイトナイトとなったのが、ベインキャピタルでした。2017年10月にベインは1株3,660円で公開買付を実施。25%の株式を保有するWPPはTOBに反対しましたが、最終的にベインは87%の株式を取得しました。WPPとの業務提携は解消されます。

買収成立後の2018年3月に上場廃止となり、ベインの傘下に入りました。この年の11月に組織再編を実施。ADKホールディングスを純粋持株会社とし、ADKマーケティング・ソリューションズ、ADKクリエイティブ・ワン、ADKエモーションズの3つの事業会社をその下に収めました。

決算が発表できず混乱が続くADK

主力となるADKマーケティング・ソリューションズは2021年12月期の決算を発表していません。前社長の贈収賄の影響があり、決算を公開できないものと考えられます。

2020年12月期は3社の売上高の合計が前期比13.2%減の2,734億500万円、営業利益が同16.4%減の55億7,300万円でした。電通や博報堂と同様に新型コロナウイルス感染拡大の影響で収益性が悪化しています。


《不破聡》

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