伝統あるスポーツメディアが揺れています。米国のスポーツ・イラストレイテッド(Sports Illustrated)が、偽記者による低品質なAI生成記事を公開していたと非難を浴びています。メディア業界のAI利用の倫理的な側面を感じさせる最新の例となりそうです。
スポーツ・イラストレイテッドは、偽物の記者のプロフィールや写真を使用し、実在しない人物による記事を掲載していたと、Futurismが詳細なレポートを公開しました。これらの「記者」は過去の経歴や、職歴が存在せず、プロフィール写真もAIで生成されたものでした。
偽記者によって掲載された記事の質は低く、言葉の使用が奇妙で、フォーマットも統一されていなかったということで、部分的にAIによって生成されたものと見られます。
スポーツ・イラストレイテッドの所有者であるアリーナ・グループは、これらの記事がAIによって生成されたという見方を否定し、協力企業であるAdVon Commerceの責任であると述べました。AdVon Commerceは全ての記事が人間によって書かれ、編集されたと主張しています(Fox News)。
同社の労働組合であるスポーツ・イラストレイテッド・ユニオンは「Futuristのレポートには恐怖を覚えました。報告が真実であれば、これらは私達がジャーナリズムに持つ信念の全てに反し、読者に対する敬意を欠いたもので、私達がそのようなものと関連付けられる事を非常に不快に思います」と声明を発表しました。
「私達はアリーナ・グループの経営陣が、何がスポーツ・イラストレイテッドの名前のもとで公開されたのか回答と透明性を求めます。私達は基本的なジャーナリスティック基準への同意、偽の人物によるコンピューターによって書かれた記事を公開しない事を会社に要求します」
スポーツ・イラストレイテッドは約70年の歴史あるスポーツメディアで、雑誌からスタートし現在はウェブが中心です。元々はタイムが保有していましたが、メレディスがタイムを買収、その後メレディスからオーセンティック・ブランズ・グループに売却され、同社からアリーナ・グループに10年間のライセンス契約が締結されています。アリーナ・グループは複数のスポーツメディアを運営するほか、The Streetという金融メディアの買収を行うなど、デジタルメディアを展開しています。
