ニュースパブリッシャーのおかれている市場環境は年々厳しくなるばかりです。日本新聞協会が発表した2023年10月時点の新聞発行部数は2859万部。前年から約226万部、7.3%減少しました。ピークである1990年代末に5300万部超あった新聞の発行部数は、ほぼ半減してしまっています。
世界ではニューヨーク・タイムズの総契約者数が1000万人を突破、日本では日本経済新聞が23年末にデジタル有料媒体の会員数が100万人を超えるなど、デジタルシフトの成功事例も聞こえてきますが、既存のニュースメディアの多くはデジタル媒体におけるマネタイズに苦戦しているというのが現状でしょう。
こと規模の小さなメディアほど大きな打撃を受けていて、地方紙の廃刊・休刊が後を絶ちません。この状況は世界的にも同じで、アメリカでは「ニュース砂漠」が広がっており、その砂漠化の速度は年々加速していると言われています。
一方で、ミクロな視点で見ていくと、過去5年ほどの間に、比較的安定的な収入源を確保しながらメディア規模を順調に拡大している新興ローカルニュースが少しずつ登場してきています。
本連載では、私が米国の南カリフォルニア大学ジャーナリズムスクールの修士研究の一環として行ったローカルニュースへのインタビューと調査をもとに、彼らのビジネスモデルについて掘り下げ、日本で応用できそうなことについて考えてみたいと思います。
第1回では、アメリカのローカルニュースにおける現状を概観し、創業3年で1万人の有料会員を獲得した『Lookout Santa Cruz』を紹介します。
急速に広がるニュース砂漠とポストコロナのポジティブなトレンド
アメリカにおける新聞市場環境を簡単に振り返ると、2022年時点の発行部数は2094万部。ピーク時であった1980年代の6300万部から、実に3分の1にまで減少しています(Pew Research Center)。