株式会社インプレスホールディングス(東証スタンダード市場、以下「インプレスHD」)は5月13日、取締役会において株式合併による非公開化を決議したと発表しました。同社の支配株主である塚本慶一郎氏および有限会社T&Co.(合計で57.00%の株式を保有)のみを株主とする株式合併を実施し、7月28日をもって上場廃止となる予定です。
株式合併により、支配株主以外の株主が保有する株式は全て1株未満の端数となり、裁判所の許可を得た上で同社が買い取る。その買取価格は1株当たり210円を予定しており、5月12日の終値159円に対して32.08%のプレミアムが付いています。
インプレスHDは1992年に設立され、IT、音楽、デザイン、山岳・自然、航空・鉄道などの専門分野ごとの個性的なメディアブランドによる雑誌・書籍等の出版を中心に、電子出版、Webメディア、SNS、イベント・セミナー、受託開発等の事業を展開しています。
しかし、出版業界は市場規模の縮小傾向が続き、用紙調達コストや印刷等の原材料費の高騰、残業規制強化による物流価格の上昇、物価高騰を考慮した従業員の報酬水準の引上げ等のコスト上昇も見込まれ、厳しい事業環境が続いています。2025年3月期の連結業績は2期連続の損失計上となっています。
同社は2022年6月に中期経営計画を策定し「企業価値の向上」に向けて収益及び事業のポートフォリオを見直し、出版事業の構造改革と中長期の成長基盤の開発促進に継続的に取り組んでいますが、事業構造改革及び事業開発に伴う継続的な先行投資による業績悪化リスクを株主に負担させることにつながりかねないため、非公開化することで迅速かつ果敢に意思決定できる経営体制を構築することが有用と判断したと述べています。
非公開化後は、出版事業の抜本的なサプライチェーンの構造改革、コミュニティ戦略の推進と事業ポートフォリオの構造転換、パートナー企業との提携関係構築による事業インキュベーションと成長、機動的な人材配置及び専門人材の新規採用と最適な組織体制の構築などの施策を推進する予定。
具体的には、デジタル化推進及び印刷効率化に向けた抜本的な構造改革、音楽分野で推進しているコミュニティ戦略の山岳・自然や航空・鉄道分野への拡大、IT分野での教育事業への着手、EC事業モデルの開発などを進めるとしています。また、上場維持コスト削減等により、投資余力が見込めることから、これらの推進を強化するとともに、直販商材の拡大に向けて積極的な投資を検討していくとのこと。