株式会社PR TIMESは2025年11月28日、運営するプレスリリース配信サービス「PR TIMES」において、2025年1月1日から10月31日に企業から発表された総数38万2296件のプレスリリースを対象に、データ分析と総括、業界分析と各種ランキングを発表しました。
AI関連ワードが急上昇ランキングを席巻
今年の企業発表は、「AI」と「万博」に関連するワードが急上昇しました。「AIエージェント」は昨年45件から57倍超の2580件となり、関連する新しいキーワードも次々登場しています。また、「外国人材」に関するキーワードが増えたりと、「人手不足」の傾向も引き続き色濃く出ており、「AI活用」に加え、「業務効率化」や「DX推進」が推し進められている様子が急上昇ランキングからもうかがえます。
急上昇ワードでは、前年比1.68倍の「AI」が1位となりました。急上昇ランキングでは、2位「生成AI」が前年比+3579件(1.63倍)、3位「AIエージェント」が前年比+2535件(57.3倍)と上半期と同じ並びであるものの、さらにその上昇傾向を増しています。
「業務効率化」が前年比+2021件で4位と、5位の「万博」を超えて上昇しており、13位の「AI活用」と15位の「DX推進」といったキーワードと併用されることも多く、企業の働き方の生産性向上に関連する商品やサービスが多く発表されています。
5位の「万博」、6位の「大阪・関西万博」も併用されるケースがほとんどで、パビリオンへの出展や協力などで今年を象徴するイベントへの関与を発表する企業が多くありました。これに加えて、7位に「大阪」が入っており、お土産や飲食店、宿泊施設など周辺の経済へポジティブに影響し、企業活動が活発化していることを発表の増加からも読み取れます。
新たなAI関連ワードが続々登場
AI関連のキーワードとして新たに使われはじめるキーワードも多く、AIを活用した開発手法である「AI開発」(2024年:154件→2025年:403件で2.61倍)、SEOとともに重要視されはじめる「AIO」(2024年:5件→2025年:165件で33倍)、AIトランスフォーメーションの略である「AX」(2024年:24件→2025年:191件で7.95倍)とこれまでのビジネスシーンで活用されてきたワードの派生系のようなキーワードの出現も目立っています。そのほかにも「AI面接」「医療AI」「AI創薬」といった多分野での活用を示すキーワードも増えています。
また、「生成AI」や「LLM」といった人間の要求を受けて回答する機能を活用するAIよりも、「AIエージェント」や「AI活用」のキーワードが前年比で大きく増加しています。対話による相談相手から、ビジネスパートナーとして業務を代わりに実行してくれる存在に変わってきていることをプレスリリース件数から考察できます。
月別ランキングで見る季節性
月別のランキングを見ると、総合1位の「イベント」2位の「AI」がどの月も1、2位を占める中で、2月の2位には「新商品」がランクインしました。SS(Spring Summer)、AW(Autumn Winter)と呼ばれるシーズン新商品の2月、8月9月は「新商品」が上位に来ています。
急上昇ランキングで4位の「業務効率化」は10月に17位で初のTOP20入りとなり、それ以前も1月:25位、2月:32位、3月:29位、4月:24位、5月:24位、6月:21位、7月:21位、8月:22位、9月:22位と着実に順位を上げていました。
一方で、2022年には総合1位となり企業発表の定番となったと思われた「SDGs」が、今年は総合TOP20内でも唯一の前年比で件数減となっており、月別順位も10位以内となったのは10カ月中5カ月のみでした。一方で安定して上位にランクインしており、大きなブームは去ったものの、引き続き企業発表での活用は続いています。
「プレゼント」と「ギフト」の使い分けに変化
例年から安定して上位にある「プレゼント」と「ギフト」は、いずれも新商品の利用シーンの一つに提案することを目的に、発売の発表に際して使用されてきました。順位では大きく変化がないように見えますが、件数を見ると変化が見られます。「プレゼント」が2022年:5091件、2023年:5707件、2024年:4945件、2025年:5452件と上下する中、「ギフト」が2022年:3568件、2023年:4047件、2024年:4066件、2025年:4773件とその差を徐々に縮めるように右肩上がりを続けています。
この2つのワードは、ほとんどのプレスリリースで共通して使われることが多いものの、企業から生活者に向けて商品提供を伴うキャンペーンなどの場合には「プレゼント」のみが使われることが多く(「キャンペーン」のキーワードと併用される件数「プレゼント」:1689件、「ギフト」:252件)、「プレゼント」の件数が多い理由と考えられます。一方で、「ギフト」は急上昇キーワードで12位になった「体験」消費商材でも使用されるケースが増えているほか、「クリスマス」や「ホリデーシーズン」、「バレンタイン」「母の日」といった季節イベントの贈り物に関する発表において単独で使用されるケースがあり、その件数の差を徐々に埋めています。今後、「ギフト」が「プレゼント」以上に一般的に使用されるようになることも考えられます。
また、こうした「バレンタイン」「母の日」「クリスマス」といった季節イベントが少ない夏場には、相対的に「プレゼント」「ギフト」に関連する発信件数が少ない傾向にありました。
推し活」関連ワードが拡大
「推し活」が流行語として広く知れるようになった2021年末以降、企業発表で使用されるシーンも年々増えています。2021年:46件、2022年:312件、2023年:618件、2024年:891件。その勢いはとどまるどころか、新たな行動様式としてより一般的になっています。2025年も前年比+446件で1.5倍に増加しています。その対象や形式とともに、関連するキーワードも広がっており、「フィギュア」や「ぬいぐるみ」に加え、推し活対象をイメージしたという「香水」なども多く発売され、件数を伸ばしました。関連して、「ぬい活」のキーワードも2024年17件から53件で3.12倍に増加しています。
外国人材受け入れ関連が急増
「特定技能」のキーワードは、在留資格制度が創設された2019年に徐々に登場し始め、2020年には前年比2.41倍の164件と増加したものの、以降は横ばいが続いていました。2019年:68件、2020年:164件、2021年:186件、2022年:199件、2023年:207件、2024年:287件。そんな中で2025年には前年比2.12倍の608件と増加した背景には、過去最高の在留外国人数(2025年6月時点、出入国管理庁より)で外国人労働者が増える中で、外国人材関連サービスが資金調達や、大企業による協業など、ビジネス界でも活発な動きが見られる影響と考えられます。多様な業界で、外国人材の働きやすさに着目した施策などの発信も見られています。こうした外国人材の受け入れをサポートする「登録支援機関」の発信も前年比5.63倍の135件と増えており、紹介事例や大手旅行会社が参画するといった発表もありました。
注目キーワード:「ウイスキー」と「ステーブルコイン」
世界的なウイスキーコンテストで日本のウイスキーが評価されたり、NHK連続テレビ小説の題材になったりと、ブームが続いていた「ウイスキー」ですが、企業発表自体は漸進的な増加が続いている状況でした。2025年には前年比1.68倍の686件となりました。需要の変化や代替わりに際してなどで国内の日本酒や焼酎の酒蔵が新事業としてウイスキー製造を始めるケースが生まれており、その新商品発売などでの発信が増えた影響です。家飲み需要に合わせた関連グッズの発売も見られました。
新たな決済方法を通じてブロックチェーンを身近にした「ステーブルコイン」は、2023年に121件の発信があった後、2024年には76件に減少していましたが、2025年に前年比2.45倍の186件となりました。関連する「ブロックチェーン」も、2019年:785件、2020年:716件、2021年:1147件、2022年:1855件、2023年:2225件、2024年:1688件、2025年:1385件と、2023年に最大の発信数となっています。今年を象徴する国際博覧会場のトークンを交換できるとして注目を集めました。10月には日本初の合法的な円建てステーブルコインの発行がはじまったことで、今後さらに発信が伸びていくことが予想されます。
対象期間は2025年1月1日から10月31日、集計対象はPR TIMESプレスリリース38万2296件です。キーワード登録総数は46万7010種に上り、企業が発表の際に最大10個まで登録できるキーワードから、2025年の企業活動の潮流や企業動向の変遷と流行の兆しを分析しています。









