ライフスタイル誌『Pen』が、2026年4月28日にYouTube番組『"B面"街歩き』を始動させました。毎月28日に新エピソードを公開するという定期配信モデルを採用し、雑誌メディアとしての編集力を動画フォーマットに移植しようとする試みです。
「B面」というコンセプトが示すもの
番組タイトルの「B面」は、レコードの裏面を指す言葉です。観光ガイドや名所案内にとどまらず、その街の知られざる歴史や文化的文脈を掘り起こすという編集方針を、一言で体現しています。毎回ひとつの街を取り上げ、歴史・エンタメ作品・現地の注目スポットという三つの軸を組み合わせながら、街の「いま」がどのように形成されたかを解き明かす構成です。
出演は、都市論やメディア史を専門とする編集者・速水健朗と、タレントの壇蜜。速水は「街歩きの案内人」として歴史的文脈を解説し、壇蜜は自称インドア志向として今回初めて渋谷の裏側をのぞく立場で登場します。知識と好奇心、解説と驚きという対比が、番組の推進力になっています。
第1回の舞台——渋谷・百軒店という選択
第1回の舞台は、渋谷・道玄坂の中腹に位置する百軒店(ひゃっけんだな)です。近年、ネオ居酒屋やクラフトビール専門店が続々とオープンし、渋谷の「裏側」として再び注目を集めているエリアです。
しかしこの地には、深い歴史があります。1960年代までは映画館や喫茶店が軒を連ね、若者たちが集まる渋谷の中心地でした。名画を上映する映画館やクラシック音楽を流す喫茶店が文化を形成する一方、隣接する花街・円山町の猥雑な雰囲気も流れ込み、独特のエリアへと変貌していきました。
さらに番組では、1950年代の百軒店がNetflixで配信中のドラマ『地獄に堕ちるわよ』の舞台でもあることに着目。占い師・細木数子が青春時代を過ごした地として、古地図やアーカイブ写真をもとに当時ゆかりのある場所を探訪します。エンタメ作品を「聖地巡礼」的な切り口で街歩きに組み込む手法は、従来の街歩きコンテンツと一線を画すものです。
番組内では「ミッケラー トウキョウ」が百軒店の新店ラッシュの契機になったと紹介されており、ビアスタンド「スタンドうみねこ SiB100」やネオ居酒屋「酒処ニュー 萬斎」といった現地の店舗も実際に訪問。店主から百軒店の変遷を直接聞き出すという取材スタイルは、雑誌的なリサーチ力を動画に持ち込んだものといえます。
定期配信モデルが問うもの
注目すべきは、毎月28日という定期公開のリズムです。雑誌の「号」に相当するサイクルを動画に持ち込むことで、視聴者に「次回を待つ」習慣を形成しようとしています。第2回は5月28日に公開予定で、引き続き渋谷を舞台に、近年再熱するレコードブームの裏側に迫りながら、宇田川町や公園通りを巡り、90年代の音楽シーンを支えた渋谷のキーパーソンたちに当時の話を聞く内容です。渋谷という街を複数回にわたって掘り下げるシリーズ構成も、単発の動画とは異なる「読者(視聴者)との関係構築」を意識した設計です。
参考文献として『渋谷音楽図鑑』(太田出版、2017年)や『細木数子 魔女の履歴書 新装版』(講談社、2026年)などが明示されており、動画でありながら雑誌的な取材・編集プロセスを経ていることが伝わります。衣装クレジットやスタッフロールが詳細に記載されている点も、雑誌メディアとしてのブランド意識の表れといえるでしょう。









