イードは2026年6月期の連結決算を発表し、売上高は5,952百万円と前期比2.2%減、営業利益は226百万円と前期比50.8%減となりました。一方で親会社株主に帰属する当期純利益は311百万円と前期比1.1%増と堅調を保ち、詳細は決算短信と決算補足説明資料に示されています。同社は同日、連結子会社である株式会社エンファクトリーの保有株式全てをパソナグループへ譲渡することも決議しており、事業ポートフォリオの再構築を本格化させています。
減収減益の背景とセグメント別動向
売上高減少の主因は、前期末に実施したパズル雑誌事業からの撤退で、出版ビジネス売上が前期比44.1%減の255百万円まで落ち込んだことです。主力のクリエイタープラットフォーム(CP)事業では、ネット広告売上が前期比10.5%増の1,676百万円と回復傾向を示した一方、高利益率商材の売上減少やEC物販の一時的な落ち込みが響き、セグメント利益は前期比37.3%減の275百万円にとどまりました。クリエイターソリューション(CS)事業は、自動車業界を中心とした大型リサーチ案件の受注が回復せず、売上高は前期比10.5%減の461百万円、営業損失49百万円と前期の黒字から赤字に転じています。

会社側は、インターネット広告市場全体は電通の調査でインターネット広告媒体費が前年比111.8%と二桁成長を維持し堅調に推移していると説明する一方、生成AIやAI検索の普及によってユーザーの情報収集行動が変化し、従来型の検索流入に依存したビジネスモデルの見直しが業界全体で進んでいると分析しています。同時に独自コンテンツや専門性の高い一次情報への需要は高まっており、信頼性の高い情報発信を行うメディアの重要性が一層増しているとの認識を示しています。

AIメディアカンパニーへの転換と収益源の多様化
イードは中長期の成長戦略として「AIメディアカンパニー」への転換を掲げ、PV依存型のメディア運営から会員・コミュニティ基盤型ビジネスへの移行を進めています。会員ID基盤「iid Smart id」を軸に、サブスクリプションやイベント、ECなど収益源を多様化する取り組みを継続しており、CP事業ではデータ・コンテンツ提供売上が前期比0.2%増の2,506百万円と、EC物販を除く各サービスで拡大が見られました。生成AIについては業務効率化にとどまらず新規事業創出への活用も視野に入れており、市況変動を受けやすいネット広告収益への依存度を下げる収益ポートフォリオの構築を進めている段階です。

エンファクトリー株式譲渡と今期業績予想の考え方
同日決議したエンファクトリーの全株式譲渡により、同社は2026年9月1日付でイードの連結範囲から除外される予定です。この株式譲渡に伴い連結決算では特別利益の計上を見込んでいますが、連結範囲の変更や今後の事業ポートフォリオ再構築による影響額は精査中としており、2027年6月期の連結業績予想については合理的な算定が可能となった時点で公表するとしています。株主還元については、当期末配当を23円とし、来期は連結株主資本配当率(DOE)2.5%を目安とする方針のもと24円へ1円増配する予定です。

財務面では株主資本が前期末比245百万円増加して4,561百万円となるなど、利益剰余金の積み上げにより自己資本比率は77.4%まで上昇しました。広告市況の変化とAI普及による情報流通構造の転換という二つの環境変化に直面するなか、既存メディア事業の収益構造を見直しつつ、会員基盤やデータ・コンテンツ領域への軸足移動を進める姿勢が、今回の決算と事業再編の両面から読み取れます。






