「ライフメディアプラットフォームを創出し、『生活機会』の最大化を目指す。」というビジョンを掲げ、人材、不動産、自動車、旅行などの領域でメディアを展開し急成長を続ける株式会社じげん。同社はM&Aも積極的に行っていて、これまでに12件、約100億円(株式取得価額)のM&Aを実行してきました。

それを取り仕切るのが、取締役執行役員CFOを務める寺田修輔氏。投資銀行出身で、コーポレート部門を管掌しながら、株式取得した一社である三光アドの代表取締役社長も兼任しています。寺田氏に同社のM&A戦略や今後の狙いについて聞きました。

―――まず自己紹介をお願いします

新卒でシティグループ証券という外資系の投資銀行に入社して、主に日本の株式のアナリストとして不動産セクターをカバーしていました。運が良いことに早いうちから責任あるポジションに就くことができ、様々な企業と対話をしながら分析をするということに取り組んでいたのですが、「自分が事業会社の立場だったらもっと上手くやれる」「やったこともないのに偉そうに話すのはどうか」という2つの相反する思いの中で、事業会社でのキャリアにチャレンジしたいと考えるようになりました。

その中で、じげんを選んだのは、上場企業こそがアナリストとして培ってきたファイナンスの知見が活かせるのではないかという点と、当時のじげんは、ビジネス側が強い一方で、コーポレート側の陣容が薄かったので、自分が入ることによってインパクトある仕事ができて更に成長を加速できるのではないかという2つの点で考えました。

―――急成長しているじげんの強さはどこにあるのでしょうか?

ビジネスに対するコミットメントの強さです。事業家、ビジネスオーナーとしてのマインドが高く、事業部に限らず目の前の業務を、当事者意識を持ってやりきることができるメンバーが多いと感じます。また、「ライフメディアプラットフォームを創出し、『生活機会』の最大化を目指す。」というビジョンの下、経営戦略を立案していますが、全てのコーポレートアクションがこの戦略に沿って運営されているというのも、他の多くの企業ではなかなか実現されていないことではないでしょうか。クリアな戦略に基づいて、やるべきことを確実に実行していく。これが強みです。

―――じげんにとってM&Aはどのように位置付けられているのでしょうか?

M&Aはビジョンを実現するための手段の一つという位置付けです。「生活機会を最大化するプラットフォームを作る」という目標に向かって、それを早めることが出来るのであればM&Aも積極的に活用します。ですので、既存事業への投資と並列に考えていて、投資対効果が得られるものに資金は振り分けています。

―――開示資料では、膨大な数のソーシングを行っていると拝見しました。M&Aはどのような体制で取り組まれているのでしょうか?

案件発掘はあらゆるソースを活用しています。投資銀行、商業銀行、PEファンド、ベンチャーキャピタル、M&A仲介会社、経営陣への持ち込みなど様々です。適時開示などでM&Aが成立したニュースを毎日必ずチェックしていますが、インターネット系の案件であれば7~8割は見たことのある案件です。年間100件以上は案件を見ていて、仲介プレイヤーとも10社程度と定例会を設けて情報交換をしています。

年間のソーシング件数 (2019年3月期 第4四半期決算説明会資料 39pより)

体制ですが、ディールの全体進行は私が部長を兼任している経営戦略部でディレクションしています。計4名のチームです。私を除く3名は全員新卒で入ってきたメンバーで、1年目、2年目、3年目です。外部の方からは驚かれることもありますが、ディールの進行自体は型化されているのでM&Aに経験がない若いメンバーでも十分やっていけますし、数年経てばM&Aの領域では恥ずかしくない人材レベルに育っています。

じげんでは案件を検討するに当たって、成立した場合にPMI担当者となる事業責任者クラスが初期から全面的にM&Aの実行に関与します。株式取得後にどう経営して、シナジーを生み出し、成長させるか、というのがM&Aでは非常に重要ですので、PMI責任者が勝算を持てないと言った案件は、社長やCFOが気に入っていてもやらないと決めています。事業責任者には毎週の経営会議でソーシングに引っかかった案件を見てもらい、進める案件を定めています。

―――経営戦略部がディレクションしながら、事業部も全面的に関与していると

その通りです。

じげんは売上収益約128億円、営業利益約40億円規模の企業の割には、事業の数が多く、複数のサービス、複数のプラットフォームを立ち上げながら会社全体を伸ばしています。各事業部長は、一般的なスタートアップの社長くらいの守備範囲が求められ、一部権限も与えられています。事業部長は、事業部を伸ばすために既存事業の成長だけでなく、例えばM&Aのようなコーポレートアクションも含めて考えながら事業を推進しています。

―――PMI責任者に求める資質はどのようなものがあるでしょうか?

PMI責任者を選ぶ基準としては、事業をしっかり伸ばせるのかという点と、守備範囲の広さを見ています。特段幅広い職種を経験している必要はありませんが、経験してこなかった領域に対しても、自分ごととして、正しい意思決定ができるかどうかを見ています。経営会議には事業部長のみが出席していますが、中期経営計画では幅広いメンバーと会話をしながら策定していきますので、それぞれがどのくらいの視座で意思決定できているのかを見ています。

―――PMIではどのようなことを心がけていますか?

最初の100日計画は必ず作ります。短期的に成果を出すのは非常に大事です。多くの場合、株式取得した企業の従業員を引き継ぎます。外からハンズオンで入ってくる我々に対して、斜に構える方は必ずいます。じげんに対する懐疑的な見方も必ずあります。そこに圧倒的なリーダーシップで成果を見せないと成功は難しいでしょう。

売り主も、実は単純にお金というよりも、引き継いで成長させてくれることを期待しているケースが多いよう思います。我々は上場企業ということもあって、割高な買収金額は提示できませんが、徹底的に成長戦略を考えて、既存の経営陣が築き上げた会社を更に成長させることができる、という点を評価して貰えればと思っています。

―――グループとしての一体感はどの程度まで意識されているのでしょうか?

カルチャーに関しては「カルチャーコングロマリット」という言葉を使っていて、大前提としてじげんの経営戦略に沿っていて、じげん流の事業や仕事のスタイルに適応してもらえれば、企業文化を縛る必要はないと思っています。無理に文化を一緒にしてもデメリットが大きいですし当社より社歴の長いグループ会社も多いので、事業や組織の成り立ちに沿った各社の既存のカルチャーを尊重しています。

―――M&Aではどういった事業を獲得しようとしているのでしょうか?

経営戦略にある「ライフメディアプラットフォーム」の構築に資するもの、という大前提はありますが、あとは資産性の高いものを持っているか? という観点は大事にしています。ベンチャー企業でよくある観点は、タレント(人材)、テクノロジー、ユーザー数ですが、例外はあるものの、タレントは辞める可能性があり、テクノロジーは陳腐化し、ユーザーは移ろいやすいものです。

資産性が比較的高いのは法人顧客の商流、特にSMB(Small and Medium Business)との取引です。その意味で、リジョブやアップルワールド、三光アドは数千社の法人顧客との取引があります。法人の商流はスイッチングコストが高いので、M&Aでの獲得には合理性があると思っています。

M&Aを通じて顧客基盤の拡大を図ってきた(2019年3月期 第4四半期決算説明会資料 24pより)

―――M&A市場は活況が続いていますが、これからどのような取り組みを考えられていますか?

じげんは過去12件で約100億円を投じていて、1件あたりにすると8~9億円です。一方でPLもBSも厚くなってきましたので、今後は機会があれば大型のM&Aも検討していきたいと思います。

PEファンドなども我々が注視しているような数十億円規模の案件にも乗り出してきています。M&Aを経営戦略に組み込む企業が増えていて、競争は激しくなり、金額も高くなりがちです。今後は、持ち込みを待っているのではなく、上場企業に対してカーヴアウトの提案を行うなど、自ら積極的に案件開拓に動くのと、先にお話したように、過去のM&Aの成功事例をお見せしながら、じげんと手を携えることが売り手にとってのサクセスストーリーになることを理解してもらえるよう努力していければと思います。

特集: メディアとM&Aのリアル

ベクトル戸崎部長、じげん寺田CFO参加のイベントは6月19日開催

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Media Innovationのオフラインイベント、6月は「メディアとM&A」というテーマで、特集に参加していただいた、ベクトル経営戦略部 部長の戸崎康之氏と、じげん取締役執行役員CFOの寺田修輔氏を招いたイベントを6月19日(水)に開催します。ぜひお誘い合わせの上、ご参加いただければ幸いです。

■概要
日時 2019年6月19日(水) 19:00~22:00
会場 TIME SPACE 秋葉原 東京都千代田区外神田1-15-18 奥山ビル8階(JR秋葉原駅から徒歩2分)
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社じげん 取締役執行役員CFO 寺田修輔氏
    株式会社ベクトル 経営戦略部 部長 戸崎康之氏
    株式会社イード 執行役員 メディア事業本部長 土本学
20:15 パネルディスカッション
20:45 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
21:45 終了

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